INTERVIEW2021.10.15

映像

もっと映画館を身近に。 ― ミニシアター × 大学生「UPLINK × LSS Project」短編映画作品集を劇場公開!

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  • 京都芸術大学 広報課

「特に若い世代の方たちに、もっと映画館を身近に感じてほしい」。映画館からのそんな想いを受けて企画された「UPLINK × LSS Project(アップリンク エル エス エス プロジェクト)」。昨年オープンした京都・烏丸御池の「新風館」地下1階にあるミニシアター「アップリンク京都」と、京都の3つの大学(京都芸術大学・京都精華大学・立命館大学)の学生たちによる共同プロジェクトです。「LSS」とは、「Little Signal Station = 小さな発信基地」という意味で、アップリンク京都を新たな京都の文化芸術の場として、学生をはじめとする様々な世代の方に足を運んでもらうきっかけになることを目標に掲げています。

製作した短編映画作品3本が、2021年9月24日(金)~30日(木)に公開され、盛況のうちに上映期間を終えました。


このようにミニシアター側が提唱し、学生と共同で映画の製作と公開までを実現する企画は、今までにない試みだそう。そしてその道のりは、良い意味でも、悪い意味でも「コロナ禍」という未曾有のパンデミックが大きな影響を与えてきたと言います。

3本の映画のひとつ、本学の映画学科が製作したのは『WATCH OVER!!』という短編コメディ映画。冒頭、淡々と始まるかと思いきや、色とりどり、めくるめくファンタジーの世界がそこに広がります。美術の仕事ぶりも素晴らしく、アップリンク京都の独特な色調にフィットしていました。独りよがりのコメディーではなく、くすっと笑えて、幸せな気持ちになる作品です。

プロデューサーを務めたのは映画学科3年生の岡田尚樹さん、そしてなんと、監督・脚本・主演を務めたのは、同じく3年生の時岡怜美さん。上演期間を終えた2人に話を伺いました。

京都芸術大学 『WATCH OVER !!』(17分)

有休をとって、初めて「アップリンク京都」に映画を観に来た会社員のレミコ。仕事や日常生活の気晴らしに訪れたはずだったが、劇場に着く直前、仕事関係の電話がかかってきてしまう。レミコはそれでも、今日だけは……と気を取り直し、新風館の廊下を歩む。いざ劇場を目の前にすると、なんだか世界が変わったような感覚をいだく。そこにいる者たちは、観客もスタッフもみんながすこし不思議な人(?)たちばかりだったのだ。そしていつの間にか、自分も。私も、あなたも。それはスクリーン2の座席のように、とてもカラフルでリズミカルな時間だった――。

<スタッフ・キャスト>
出演:時岡怜美、紙屋陽子、松本薫、騎馬穂乃佳、雪乃、安岡由希、本田朝希子、細井春平、大原輝明、寺田智彦、濱田俊輔
監督・脚本:時岡怜美
プロデューサー・監督補:岡田尚樹
助監督:柏原音生
撮影:伊澤萌音、安本未玖
録音:佐伯いずみ、大道亜里紗、冨山侑起
照明:浅川周
照明応援:岩橋優花、謝梓賢
美術・装飾:新庄凛々子、中川美里
衣装・メイク:長堀葵
編集:瀬戸邑佳
製作:岡田尚樹、紙屋陽子、長堀葵
整音:佐伯いずみ、大道亜里紗
グレーディング:伊澤萌音
VFX:瀬戸邑佳、柏原音生
スチール:岩橋優花

― なぜ、この企画が始まったのでしょう?

岡田さん:
昨年の11月頃、アップリンクから映画学科の椎井友紀子先生に相談があったことがきっかけです。工事のため、翌1月頃に一時閉館することになったのですが、その工事期間を使って何かできないかということでした。京都は大学も多く、映画や映像を学ぶ学生がたくさんいますし、その学生たちが共同で映画作品を作ることで、もっと若い世代にも映画館、特にミニシアターに足を運んでもらうきっかけになれば、という趣旨です。先生からその話を聞いて、僕はもう2つ返事で「やります!」と伝えました。

ただ、話をいただいた一週間後には企画書を提出しなくてはならず、まったく時間がないですし、同学年の時岡怜美さんに「一緒に企画を考えてくれませんか?」と相談を持ちかけたんです。2年生のとき、時岡さんが主演を努めた短編映画『浮かぶかたつむり』の製作でご一緒したのですが、その時に、シリアスな演技もできるけれど、時岡さん自体の面白さは「コメディー」でこそ、生かせるんじゃないかなと心の中でずっと思っていて、それで声をかけたという部分もあります。すると時岡さんは、相談したその翌日には、自身を主演に据えた脚本を書いてきてくれたんです。その速さに驚きました。


時岡さん:
翌日でしたっけ、覚えていなかった(笑)


岡田さん:
そう、翌日でしたよ。そこで、僕が監督というよりはプロデューサーに徹して、時岡さんが監督も主演もやった方がいいんじゃないかなっていうことになりました。

大変だったのは、もう1月の撮影期間が間近に迫っていたこと。そこからスタッフやキャストを集め、機材の申請をしたり、諸々の準備を爆速で進めたので、ちょっとその時期の記憶があまりありません…


― 3大学ともに「映画や映画館への愛情」を感じる作品になっていましたね。

岡田さん:
アップリンク京都から当初いただいたテーマが「春が来る、今日は映画を観に行く」というもので、「アップリンク京都内で撮影する」ことがルールの一つでした。やっぱり、特に若い世代、学生の人たちに劇場に来てもらおうというプロモーション的な部分もあったので、「映画館の良さ」を広めることを趣旨にそのようなテーマやルールになっていたんです。

僕らは「映画館の楽しさとか、映画の面白さ」を伝えることができればいいなと思って企画を考えたのですが、不思議だったのが、プロジェクトに参加した3大学ともに「映画館に対する愛情」みたいなものが感じられる作品になっていたことです。それは特に申し合わせたわけでもなくて、偶然そうなったんです。

立命館大学 『窓口からみた世界』(18分)
映画大好きな彼女を持つタケオ。タケオ自身は映画にあまり興味がない。ある日、彼女と一緒に映画館で映画を観るうちに寝てしまう。起きるとシアターには誰もいなくなっていた。扉も開かず、シアターから出る手段がない。その時、少女の姿で自称「映画館の怪人」の妖精が現れ、タケオに映画の魅力をアピールする。タケオは妖精の話を聞いてもあまり反応がないため、妖精は自分の心の片隅に置いていた映画館との思い出をタケオに語り始める。

 

京都精華大学 『そばにいてよ、僕のプシュケー』(19分)
漫画家を目指す少年、高垣 翔。ある日翔は、様々な次元を行き来することができる不思議な女性、心音と出会う。翔の漫画をきっかけに仲を深める2人。しかし一方で、翔は自身の才能に限界を感じていた。将来について思い悩む翔に心音は突然、「映画館に行こう」と提案する。誰もいない映画館で心音が翔に見せた映画とは…。 スクリーン越しに夢をみる、奇跡のような2人の物語。

 

― お客さんが来てくれるか、不安はありませんでしたか?

時岡さん:
公開まではすごく不安で、家族に「2回観に来てほしい」と頼んでいたほど(笑)。地元の友だちを呼ぶにも京都からは遠いですし、緊急事態宣言がまだ出ていたので呼びにくかったですし、お客さんがまったく来なかったらどうしようって、不安でした。


岡田さん:
僕も不安という気持ちもありましたけど、正直に言えば、それよりも「早く終わりたい」という気持ちが強かったです。もともと1月に撮影して4月に2日間ほどの期間で上映する予定だったんです。それが緊急事態宣言などもあってどんどんスケジュールが後ろ倒しになってしまって、何度も引き伸ばさざるを得なかったので、気苦労と言うか、やっとひとつの重荷が減るなと。

ようやく上映にこぎつけて、しかも当初予定していた2日間ではなく、一週間もの期間ですよ。ありがたいことに上映2日目から最終日まではほとんど満員で、各回20席のキャパなのですが、15席以上は入っている状況で、ほんとに嬉しかったですね。学生の人たちも多かったですし、SNSなどでこの企画を知ってくれた映画好きの方たちなど、若い世代を中心にして幅広い層の方々に来ていただけました。今回は「特に若い世代の方たちに、もっと映画館を身近に感じてほしい」という趣旨で始まった企画ですし、その点はうまくいった形ですね。

 

― アンケートで、とくに心に残ったものは?

時岡さん:
とにかく不安だったので「楽しかったです」「面白かったです」というような意見をたくさんいただけて、うれしいけれど「安心」みたいな(笑)。また、私たちの意図がすごく伝わっているなと感じる方もいらっしゃって、うれしかったですね。

特に印象に残っているのは、SNSで映画のことを知って観に来てくださった方。同年代くらいの方なのですが、ご覧になったあとも Twitter で感想をつぶやいてくれていたのですが、私たちの想いがとても伝わったように感じて、綺麗事に聞こえてしまうかもしれないのですが、この人に届いただけでも映画を作って良かったなって感じるほどでした。


岡田さん:
3大学のうちほかの2作品が僕らに比べるとシリアスなものだったこともあって、アンケートでは「ポップで色鮮やかな、可愛らしい映画でした」という声をたくさんいただきました。色調やテンポが、アップリンク京都の劇場にすごく合っていて、引き込まれたという感想もいただけて、うれしかったですね。

 

― 製作から上映を通じて感じたことや今後の展望は?

岡田さん:
今回はプロデューサーでしたけど、何か特定の役職になりたいっていうことはあんまり考えてなくて、僕が思うこととか、僕が抱いてるものを映画として表現して、それをお客さんに観ていただきたい。その点では、監督になりたいのかもしれないですけど、いまは「自分の映画作品」を作りたいという気持ちが強いです。


時岡さん:
私も岡田さんと考え方は、一緒かなと思います。もともとお芝居の勉強がしたくて、この大学に入ったんですけど。映画について大学に入ってからたくさん知るようになって、映画も見るようになって、心境が変わりつつあります。
私は「我が強いな」ってすごく思うんですけど、自分の考えを映画を使って表現したい。将来どうなっていくかはまだわからないけれど、役者だけをやりたいわけじゃないんだなっていうことを、今回、監督・脚本・主演をする中で再認識しました。

今回のプロジェクトでは、友人や先輩後輩に協力していただき、自由に楽しく撮影することができました。無理な要望を聞いてくれたスタッフ・キャストの皆さんには、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

映画を愛していて、映画製作を志している私たちにとって、映画館は大事な場所です。大きな劇場だけでなく、もちろんミニシアターも大切に残していきたいです。 どの映画館も人に愛される映画館であってほしいと思います。 小さな力かもしれませんが、私たちの作品を含めた「LSS Project」が映画館に足を運んでいただけるきっかけになってくれたら幸いです。

UPLINK × LSS Project

上映期間 2021年9月24日(金)~30日(木)
料金 一律500円
劇場 アップリンク京都
場所 〒604-8172 京都府京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2 新風館 地下1階)

 

アップリンク京都

https://kyoto.uplink.co.jp/

 

UPLINK × LSS Project オフィシャルサイト
https://uplinklss2021.wixsite.com/mysite

 

Twitter
https://twitter.com/LSSproject2021

 

Instagram
https://www.instagram.com/uplink_lssproject/

  • 京都芸術大学 広報課Office of Public Relations, Kyoto University of the Arts

    所在地: 京都芸術大学 瓜生山キャンパス
    連絡先: 075-791-9112
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

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