2021年8月14日から15日にかけての2日間、平安神宮の横にあるロームシアター京都にて「プレイ!シアター in Summer 2021 オープンデイ」が行われました。今年のテーマは、「夏休みは思いっきり劇場で遊ぼう!」です。オーケストラコンサートやこども市民寄席をはじめ、公演やワークショップなど子ども向けのプログラムが盛りだくさんのイベントです。
京都METROで活躍するドラァグクイーンによる絵本読み聞かせ「ダイアモンドの館 HOUSE OF DIAMOND」や、舞台の裏方を体験できる「舞台スタッフワークショップ」など、普段では経験できないような特別なプログラムに目を引きます。
劇場内を歩く子どもたちの多くが首から下げているのは、山城大督先生が企画アドバイザーを務める、ドレミをさがす劇場探検『ナイス・カメラ・ミッション!』のスペシャルパス。「楽譜を飛び出した音符のドレミたちを劇場の裏側や隠れたスポットまで探しにいこう!」という企画で、普段は入ることのできない劇場の裏側や楽屋に入ることができ、そこにいる音符のドレミたちと写真を撮ることで、劇場と子どもたちが繋がることができます。ホールだけでなく、劇場という施設について知ってもらうことで、親しみを持つきっかけになり、興味深い企画です。実際に足を動かすことで「未知」に出会えるという仕組みに、山城大督先生らしさが感じられます。
京都芸術大学からは、こども向けのワークショップやマルシェのブース出店「わくわくワークショップ&マルシェ」に、アートプロデュース学科とこども芸術学科が出展しました。その様子を中心にレポートします。
子どもたちと一緒に劇場で生まれる物語を楽しむ
アートプロデュース学科の社会実装科目であるARTZONEでは、ワークショップや展覧会の企画・運営を学んでいます。今年度は、「ズバッ!とチェンジ☆とびだせカラフル隊」と題し、子どもたちがおもちゃになりきって劇場内をパレードするというワークショップを行いました。
プリキュアになりたい子やロボットになりたい子、お人形さんみたいなお洋服をつくってみたい子など、ひとりひとりそれぞれ、おもちゃについて異なるイメージを持っています。学生がサポートしながら、子どもたちの持つおもちゃへのイメージを膨らませていきます。そして、画用紙や毛糸、モールやストローなどの身近な材料を使い、おもちゃになるための服をつくります。初めは少し緊張していた子どもたちも、学生スタッフのお兄ちゃんやお姉ちゃんとお話しながら、一緒につくることで、徐々に笑顔が増え、楽しんでいる様子が伝わってきました。
参加した子どもたちの中には、数年前に開催された「プレイ!シアター」のプログラムに参加したことをきっかけに、毎年、アートプロデュース学科が企画するワークショップを楽しみにしているという子も。小学3年生の女の子は、「初めてお洋服を作った。ボタンをつけるのが難しかったけれど、(学生スタッフの)お兄ちゃんと一緒に作れて楽しかった」とつくった服を嬉しそうに見せてくれました。女の子の保護者の方は、「コロナ禍であらゆるイベントが延期や中止されている中で、今回、このようにしっかり対策をしたうえで開催してくれて、嬉しかったです。子どもたちの元気に楽しむ姿をみることができて元気をもらいました。来年の夏もぜひ参加したいです」と話してくれました。
普段、子どもと接する機会がほとんどないメンバーも多く、子どもたちへの話し方や接し方、言葉選びなど、どのような工夫をしたら伝わるだろうという不安があったと言います。そこで、ほぼ毎日のようにミーティングを行い、これらの不安をメンバーで共有することから始めたと言います。子どもと接する機会の多いメンバーがどのように子どもに対応すればよいのかをレクチャーしたり、本番に向けてのリハーサルを何度も重ねることで、ワークショップに向けて、チームの結束が強まっていきました。また、「いかに子どもたちを物語の世界に引き込むか」に重点を置いて取り組み、当日参加してくれた子どもたちの反応をみながら、毎回少しずつ演出やセリフを変えていったそうです。
ワークショップに参加した学生は、「私たちは “モノ” ではなく、“コト” を作る学科です。今回のワークショップでも “物語” というコトを通して、子どもたちとの関係性やメンバー同志の関係性をいかに良いものにできるかチャレンジしました」と語ります。日頃、大学で学んでいる「コトをつくる」を社会で実践し、子どもたちに届けるワークショップとなりました。
夏らしさを子どもたちに味わってもらいたい
こども芸術学科の有志による「あんふぁんずー」は「\\夏の豪華3点盛りワークショップ//」を行いました。コロナ禍により、夏祭りの中止が余儀なくされている状況の中で、夏らしさを体験してもらおうと1か月半以上前から計画し、「お宝つり」「なんちゃってかき氷」「花火を描く」の3つのコーナーを作り上げました。受付開始後、数日で予約が満員になるなど、開催前からその注目度が窺えます。
子どもたちを飽きさせない工夫が至る所に見受けられます。「お宝つり」コーナーでは、磁石がついた竿、柄杓のような竿、二人で協力して釣りをする竿の3種類の釣竿が用意され、お宝釣りコーナーに来た子どもたちに渡します。段ボールで作った船や紙粘土で作ったお寿司、画用紙で作ったお花や車など、学生たちが心を込めて作ったお宝たちは子どもたちに大人気で、どれを釣ろうか真剣な眼差しで取り組んでいました。釣り上げるたびに「すごい!」「いいね!」「いっぱい釣れたね!」など子どもたちへ声を掛ける学生の姿があり、子どもたちの楽しさを最大限に引き出しているようでした。
「なんちゃってかき氷」コーナーでは、色水をかき氷のシロップと見立てて、キッチンペーパーに吸わせ、世界に一つだけのかき氷を作り、「花火を描く」コーナーでは、画用紙に好きな模様を削ってオリジナルの花火を打ち上げます。作った作品は持って帰るか、飾るかを参加した子どもたち自身が選ぶことができます。
絵の具やクレパスなど、おうちにあるもので花火やかき氷を再現しており、おうちに帰ってからも子どもたちが自分で製作できるのも魅力の一つです。参加した5歳の男の子は、「もっと製作したい!」と目を輝かせます。男の子のお母さんも「製作をする人とお話したり、一緒に作ったりするのは初めてで良い経験になったと思います」と笑顔で話してくれました。
準備期間からあんふぁんずーの学生を指導する教員は、「何に使うん?それいるん?と大人たちが思うようなものでも、学生たちは楽しそうに頑張って作っていました。釣竿を作るために木の枝を拾ってきて削りはじめた時は驚きました」と振り返ります。
ワークショップを運営したこども芸術学科の学生は、「夏といえば、お祭り。でも、コロナ禍でお祭りができない状況なので、ワークショップでやりたいと思いました。子どもたちの笑顔や楽しんでくれているのを見ると、やってよかったと思います」と話してくれました。
子どもたちにとって初めての体験、劇場との出会いの場
新型コロナウイルス感染症の影響で昨年の「プレイ!シアター」はオンラインでの開催となったため、今年は2年ぶりにロームシアター京都での開催となりました。今年の「プレイ!シアター in Summer 2021 オープンデイ」では、これからの劇場とともに成長していく世代へのアプローチになるプログラムが多く、劇場を知ってもらいたい、親しみを持ってもらいたいという思いが込められていたと感じます。プログラムを通して、来場者に、鑑賞者としてだけでなく、演者として、運営スタッフとして、劇場とさまざまな関わり方があることを知ってもらうことができたのではないかと思います。
劇場へ足を運ぶことで素敵な出会いがあること、楽しい思い出ができることを幼稚園や小学生のうちに知ることができたら、劇場をもっと好きになるはず。学生たちは、10歳以上の年の離れた小学生や幼稚園の子どもたちに向けて、ワークショップを企画し、どうしたら楽しんでもらえるか、劇場の魅力を伝えることができるのかを試行錯誤し、夏休み前から取り組んできました。「プレイ!シアター in Summer 2021」の2日間にこの夏を捧げてきた学生たちの姿は、参加した子どもたちと同じくらい輝いてみえました。
取材:高田果鈴(アートプロデュース学科2年生)
取材協力:アートプロデュース学科ARTZONE、こども芸術学科あんふぁんずー
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