INTERVIEW2021.08.18

舞台

アニメ映画に出演!声優の夢に向かって駆け抜ける ― 舞台芸術学科3年生・本村玲奈さん:在学生からのメッセージ

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  • 京都芸術大学 広報課

この夏に公開された、明石家さんま企画・プロデュースの劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』に声優として出演するなど、在学中から活躍の場を広げている舞台芸術学科3年生の本村玲奈さん。学生生活においても、声優に限らず自主企画の芝居に参加するなど学内外の幅広い分野で挑戦を続けている本村さんに、日々の学生生活や映画出演、そして今後の目標についてインタビューを行いました。


声優・俳優活動の原点

― まずは声優になりたいと思ったきっかけを聞かせてください。

わたし、幼稚園のときから「滑り台になりたい」って言っちゃうような少し変わった子どもだったんです。一匹狼で、目つきもちょっと悪くて、友達にも顔が怖いと言われちゃったり(笑)。それでなかなかクラスに馴染めない時期もあったんですけど…。

その反動で、中学進学と同時にころっと変わって明るい性格になりました。そのおかげで人から好いてもらえるようにはなったんですが、自分の思いを言えない窮屈さを感じて思い悩んでいました。

そんな時期に、『東京喰種トーキョーグール』というアニメ作品に出会いました。主人公に勇気をもらって、一言でいうと感動したんです。この作品がきっかけで、キャラクターに命を吹き込む声優という職業に衝撃を受けました。そこからアニメにのめりこみ、たくさんの作品を⾒るうちに、「私も人を感動させられるような声優になりたい」と思うようになりました。

― なぜ大学で演技を学ぼうと思ったのですか?

小さいころからお芝居が好きだったことに加えて、声優になりたかったので、高校では演劇部に所属していました。進路を決めなくちゃいけないギリギリのタイミングまで、がむしゃらに部活ばかりやっていて。そんな時に信頼できる顧問の先生から「本気でやりたいなら大学で勉強しなさい」とアドバイスをいただきました。

高校では演劇部に所属。
演劇部のみんなと、思い出の一枚。


それをきっかけに本格的に進路を考えようと、声優になる方法を洗い出しました。上京するのか、養成所に入所するのか、専門学校に通うのか。声優になるための選択肢はあふれていましたが、自分にとって一番いい選択だと思えたのが、顧問の先生から言われた通り、やっぱり大学でした。

例えばアニメに関連する学科だけを見ても、舞台芸術をはじめ、マンガやキャラクターデザインなど大学には本当にいろいろな学科があって。先生や学生の専門や目指す夢もさまざまです。「自分にできることならば、声優に限らずいろんなことに挑戦したい!」という気持ちがあったので、刺激的な環境に身を置いて、多様な視点から得た学びを声優になるための肥しにしたいと思いました。

― そのパワーは一体どこから?

もともと好きなことが多いんですよね(笑)。両親の影響かもしれません。多趣味なところは父親から、真面目な性格は母親から譲り受けたと思います。でも実は両親は声優になることには大反対だったんです。中学3年生の時に初めて両親に打ち明けたのですが、もう、どえらい反対されて相手にもしてもらえませんでした(笑)。

だからこそ高校では、演劇部で結果を出して説得しようと思って奮闘の日々。その結果、高校2年生の時に脚本・演出・役者を同時に務めた舞台が大阪府の演劇研究大会で脚本賞を受賞し、高校3年生では大阪府代表校として近畿総合芸術文化祭に出場しました。そこであらためて「声優になりたい!」と宣言しました。でも結局賛成はしてもらえず、悲しい気持ちになったこともありました。

ちょうどその時にご縁があって、現在所属している事務所から声をかけていただき、契約の相談をするうちに気持ちが伝わったのか、両親も応援してくれるようになりました。


舞台芸術学科での学生生活

― 学生生活で特に印象に残っていることはありますか?

たくさんあります。選ぶのが大変なんですけど…2年生の時に自主企画で参加した『葵上』という舞台が特に印象的でした。楽心荘の野外舞台での上演でした。

私は声優になりたいという夢があるので、学外の時間は基本的に声優の勉強や活動に充てていて。大学のプロジェクト科目や自主企画にはあまり参加できていませんでした。そんな中、同じコースで勉強している、自主企画主催・演出の藤枝くんから直接声をかけてもらい、挑戦することにしました。

― どんな役柄でしたか?

舞台『葵上』は三島由紀夫が原作です。私が演じたのは、六条康⼦(六条御息所)という、⾼貴で美しく、かつての恋⼈、若林光の正妻、葵を嫉妬⼼から⽣き霊となって呪い殺す役柄でした。

まず最初に思ったのは…「できるかー!」って(笑)。こんなに⾃分とかけ離れた時代、⼈⽣を⽣きている⼥性を演じるのは初めてで、正直不安がありました。でも、藤枝くんが「六条康子を演じる玲奈ちゃんが見たいんだ!」と言ってくれたので、「やるかー!」と(笑)。私単純なんです。やると決めてからは座組のみんなを信じて⾃分のやれることを⼀⽣懸命頑張りました。

 

『葵上』フライヤー。

 
座組で一致団結し、練習に励みました。

― 反響はありましたか?

上演後に、見に来てくれた友達から「誰かと思った」「びっくりした」と言われました。自分としては、とにかく演じることに一生懸命で、どんな舞台になっているかわからなかったのですが、実際に観劇してくれた人からそんな言葉をかけてもらってとても嬉しかったです。難しい役柄で苦労もしましたが、結果的にこの舞台が自分の殻を破るきっかけになった作品になったと思っています。

オーディションで稽古に出られないときもあって、座組には迷惑をかけることが多かったのですが、メンバーが協力してくれて、座組の包容力があったからこそ参加できた企画でした。すごく思い入れのある舞台です。

上演の様子。
座組のみんなと記念撮影。

 

― 普段学外でも活動する本村さん。学内での自主企画のやりがいは?

学外で仕事をするときは、とにかく必死についていく感じで、その分沢⼭刺激を受けるのですが、本当にあっという間で。それに対して、学内で行う自主企画は、みんな同い年で、同じ志を持っている同士たちです。照明、音響、美術など違う進路を目指す学生と相談を重ねながら、ひとつの作品をつくっていくことが醍醐味だと思います。

大学に入ってよかったと思うのは、役職の垣根を越えて作品づくりができるところです。特に声優の場合は、その場で会ったメンバーとその場で作品をつくりあげていくことが多いので、大学でさまざまな役職の人と関わりながら、一つの作品をつくりあげる経験のできる舞台芸術学科がすごくいいなと思います。


映画に出演!学外で声優として活躍

― 『漁港の肉子ちゃん』に出演することになったきっかけは?

所属事務所からオーディションの紹介していただきました。主人公の娘・キクコの友達であるマリアちゃんを決めるオーディションで、最終選考の4人に残りました。残念ながら、マリアちゃんの選考からは外れてしまったのですが、クラスメイト・金本さん役で参加させていただきました。

劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』

《原作》直木賞作家・西加奈子×《アニメーション制作》STUDIO4℃。漁船の船に住むちょっと訳あり親娘が紡ぐ感動のハートフルコメディ。

企画・プロデュース 明石家さんま
監督 渡辺歩
原作 西加奈子
脚本 大島里美

https://29kochanmovie.com/

― オーディションから合格したのは3名のみ。選ばれたときの感想を伺いたいです。

めっちゃ嬉しかったです!オーディションで受かったのが初めてだったんです。1年生の頃からオーディションをいくつも受けていたのですが、なかなか受からなかったのでその分喜びは倍でした!!
スカウトしてくれたマネージャーさんから電話をもらって、「金本さんという役で決まったよ」って。まさか受かると思ってなかったので、嬉しくて泣きましたね(笑)。マネージャーさんもすごく喜んでくれて嬉しかったです。


 

― 映画撮影中の印象的なエピソードを教えてください。

あるセリフで少し意地悪な表現をしてしまっていた時があって、「もう少し明るく素直に言ってみて」とリクエストをいただきました。でも、自分の考える金本さんのキャラクターを思い浮かべると、そのリクエストをうまく解釈できず、なかなか表現できない場面がありました。

そんな時に、渡辺歩監督が「金本さんのキャラクターをよく考えてくれていることはわかるよ。でも、こういう言い方をしてほしいな」とわざわざ声をかけてくださいました。演者がやりたいことに理解を示し、尊重してくれた上でアドバイスを投げかけてくださり、なんて優しくて素敵な方なんだろう、と思いました。新人は収録現場にいるだけで緊張しますし、現場の雰囲気に呑まれることがしょっちゅうなのですが、監督が声をかけてくださったおかげで、安心して自分の表現を考え直すことができました。

企画・プロデュースの明石家さんまさんが、収録中もアドバイスをくださったり、たくさん笑わせてくださいました。そこに居合わせた全員が、素敵な作品にしようという気持ちにあふれた温かい現場でした。

『漁港の肉子ちゃん』アフレコ台本

 

― プロの現場で得た学びはありましたか?

役をいただいた、という緊張感がありました。原作の西加奈子さんが小説のあとがきで「この物語をいちばん愛しているのは、私です。」と書かれていて。西さんはもちろん、原作のファンの皆さんにとっても、登場人物一人ひとりが大切なキャラクターだと思うので、その役を演じさせていただくのは重みがあって、背筋が伸びる思いでした。

プロの現場では、選ばれた人たちと作品に関わらせていただくことになります。私自身も選ばれて役をいただいているので中途半端なことは絶対にできません。自分がその作品にどれだけ力を出せるか、限られた時間の中で作品にどれだけ向き合えるか、あらためて厳しい世界だなと思いました。

― 今後の目標を聞かせてください。

「今日は天気がいいな」「桜がきれいだな」。そんな日々の小さな感情や感覚を大切にして、芝居に役立てたいと思います。大学での4年間は限られた時間ですが、今教えてもらったこと、与えてもらったものが宝物だと思うので、一つひとつを取りこぼさないように、いろんな人に出会っていろんなことを吸収していきたいです。

…それからちょっと恥ずかしいんですけど、野望を言うとですね(笑)。自分がそうだったように、誰かが感動したり、夢を持てたりする作品に役者として携わって、心からのお芝居ができる役者になりたいと思っています。
 

 

一見芝居には関係のないように思える授業でも、なんでもない日常生活の風景でも、日々の発見はすべて芝居に繋がっていると話す本村さん。
全く関係のないことに思えても、思いもよらないところで点と点がつながってくることがあります。本村さんから伺うお話は、そうした点と点を結ぶチカラを感じるものがありました。

将来的には声優に限らず、枠を超えて活躍したいと語ります。「自分にできることがあれば、映像でも、舞台でも、全力投球で頑張りたい!」とニコニコ話す本村さん。10月には自主企画の舞台出演も予定しているとか。これからも全力で駆け抜けていってください!


本村玲奈さん公式プロフィール(https://across-ent.com/talent/women/rena_motomura.html

 

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