NEWS2021.07.02

京都舞台

「京舞と狂言 vol.2」命がけの舞台です。― 卒業生2人が挑む、京舞と狂言の合作。新作『たぬき』

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  • 京都芸術大学 広報課

京都の地で伝承され、独自の文化を育んでいる「京舞」と「狂言」。異種芸能でありながら両者が共通に持っているテーマを取り上げ、比較上演する三年連続企画の第二弾「京舞と狂言 vol.2」が、7月18日(日)14時から京都芸術劇場 春秋座で開催されます。京都芸術大学の開学30周年記念・劇場20周年記念公演として催されるこの公演のテーマは、なんと「メルヘン」! 本学卒業生である能楽大蔵流狂言方の茂山忠三郎さんと京舞井上流の井上安寿子さんのお二人がこのテーマに挑みます。「メルヘン」というお題に対し、それぞれ古典の演目を、京舞は『浦島(うらしま)』、狂言は『神鳴(かみなり)』を上演するほか、初の試みとなる京舞と狂言の合作による新作『たぬき』を披露します。
 

「京舞と狂言 vol.2」

京都芸術大学出身の2人が出演する伝統芸能の公演。

日時 7月18日(日)14:00開演(会場は13:15)
会場 京都芸術劇場 春秋座(京都芸術大学 瓜生山キャンパス内)
入場料 一般4,500円/友の会4,000円/学生&ユース(25歳以下・要証明書提示)2,000円
問合せ先 京都芸術劇場チケットセンター(075-791-8240)

http://k-pac.org/?p=12988


【京舞】上方唄『浦島』(うらしま)
おとぎばなしの「浦島太郎」を舞台化した作品。歌詞の冒頭部分〽龍の都の出汐の…のとおり龍宮城をでて乙姫に別れを告げて、故郷への路をたどるところから始まり、乙姫との楽しかった日々を回想、そして玉手箱を開けてからの嘆きと続きます。上方唄の「浦島」の起源は諸説あります。井上流では二世八千代の振付と伝えられています。
出演:井上安寿子

【狂言】『神鳴』(かみなり)
気分良く雷鳴を轟かせていたかみなりさまがうっかり雲を踏み外して空から真っ逆さまに落ちてきます。そこに旅の途中の医師(狂言ではクスシと読む)が居合わせ、かみなりは腰を打って痛くて動けず、治すよう医師に強引に頼みます。医師の荒い針治療によって治った神鳴はそのまま天界に昇ろうとすると・・・狂言の解釈ならではのおめでたい演目です。
出演:神鳴 茂山忠三郎、医者 山口耕道

【京舞+狂言合作】新作『たぬき』
狂言『狸腹鼓』(たぬきのはらつづみ)と地唄『たぬき』をベースにした、京舞と狂言による初の合作。
東山の麓にすむ猟師が、狸にだまされた大内山の猟師に自慢するため、狸を射止めに夜の瓜生山に入ったところ、尼に化けた雌狸に出くわす。猟師はすぐにその正体を見破り、射貫こうとするや狸に命乞いをされる。狐より<化かし上手>であることを狸が証明できたら助けてやると言ったところ・・・
作:茂山忠三郎 作詞:植木朝子
出演:茂山忠三郎、井上安寿子


長唄 唄:稀音家六加乃、東音松浦麻矢 三味線:稀音家温子、稀音家三穂一、稀音家温季 囃子:望月晴美、藤舎呂裕、藤舎朱音、藤舎理生

 


6月14日に行われた記者発表会では、この「京舞と狂言」を企画した田口章子教授が、「若手による舞台芸能を観てもらうことによって伝統芸能の魅力を発信したい」と想いを語りました。
 

テーマに「メルヘン」を与えられた茂山忠三郎さんは、「狂言でメルヘンって…と思ったが、よくよく考えたら180ある狂言の演目のなかで、メルヘンといえばメルヘンかな、と思う演目はたくさんあるんですよね。なかでも『神鳴』という演目は人が神を助けるという究極のメルヘンではないかと感じ、この『神鳴』を選びました」。また『神鳴』を選んだもう一つの理由は、能楽師や狂言師にとってはかなり広い空間である、京都芸術劇場 春秋座で演じることだと言います。「普通の能舞台ではないところで演じることによって、“空の広さ”であるとか、空間を逆に利用できるのではないか、と考えました。『神鳴』を演じるには春秋座は広すぎたよね、とならないようにしたい。自分への挑戦ですね」と、茂山忠三郎さんは意気込みを見せました。

 

狂言『神鳴』について語る茂山忠三郎さん

 

新作『たぬき』について井上安寿子さんは、「2019年度に初めて『京舞と狂言』の公演を行ったところ、アンケートで京舞と狂言が一緒に同じ舞台に立っているところを観たい、という感想がとても多かったんです。不安はあったんですが、春秋座の運営方針である“実験と冒険”に応えるためにも、『たぬき』の合作と共演に挑戦しました。まだまだ稽古中でどうなるかと悩むところもあるけど、古典的な技法を使ったシンプルな舞台のなかで、みなさんに情景を想像していただけるよう頑張りたいと思っています」。

 

新作『たぬき』について説明をする井上安寿子さん

 

新作『たぬき』は狂言の名作『狸腹鼓(たぬきのはらつみ)』と地唄『たぬき』に着想を得て、おおよその台本を茂山忠三郎さんが創作。狂言の『狸腹鼓』は京都の西のほうの山での出来事を物語にしたものですが、それに対して新作『たぬき』は物語の舞台を京都の東にある春秋座が位置する瓜生山を舞台にしたそうです。

猟師に正体を見破られた狸は、「狐よりも化けるのが上手いということを証明せよ」という猟師の言葉を受けて美しい女に化けます。その美しい女を井上安寿子さんが、化ける前の狸を茂山忠三郎さんが演じます。実はもうひと変化、もうひと工夫あるようなのですが、そこは舞台を見てのお楽しみに是非観に来ていただきたい、と呼びかけました。

 

茂山忠三郎さんの狸は毛むくじゃらの着ぐるみ姿で登場するようですが、春秋座は能舞台と違いライトも強いので、「ただでさえ汗だくになる演目がどうなることか」と忠三郎さんが恐怖を語ると、田口章子教授が「命がけの舞台ですね」と笑いを誘い、和やかな雰囲気で記者発表会は終わりました。

 

井上安寿子(いのうえ やすこ)

京舞井上流五世家元井上八千代の長女として京都に生まれる。平成3年、四世及び五世井上八千代に師事。平成4年「四世井上八千代米寿の会」にて初舞台(上方唄「七福神」)。平成18年井上流名取となる。平成23年京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)卒業。平成25年井上安寿子主催の京舞公演 〈葉々(ようよう)〉の会を発足。平成30年文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞、他受賞歴多数。

 

撮影:桂秀也

茂山忠三郎(しげやま ちゅうざぶろう)

昭和57年京都に生まれる。能楽師大蔵流狂言方。茂山忠三郎家、四世忠三郎の長男。父に師事。四歳にて「伊呂波」のシテで初舞台。平成17年京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)卒業。《忠三郎狂言会》代表、猿楽曾主宰。平成29年、五世茂山忠三郎襲名。平成30年度京都市芸術新人賞受賞、他受賞歴多数。

 

撮影:桂秀也

 

「京舞と狂言」の第1回目は2019年度に上演。2020年度は新型コロナウィルスの影響で中止され、今年の上演が2回目となります。2020年度は上演を楽しみにお待ちいただいていた人々のために、2019年度「京舞と狂言 vol.1」のダイジェスト映像や井上安寿子さん、茂山忠三郎さんの対談、稽古動画を公開しました。
 

安寿子さんは大学時代に忠三郎さんの授業を受けていたそうで、「忠三郎先生」と話しかけます。ところが「安寿子さんに先生と呼ばれるなんて恐れ多い」と忠三郎さん。当時を思い出す忠三郎さんの脳裏に蘇る記憶とは? また別の動画で忠三郎さんと安寿子さんがそれぞれお互いに稽古をつける体験では、忠三郎さんが「こんなに汗かいたん久しぶりです」。“おいどをおろす”という京舞の所作と“腰を入れる”という狂言の所作が真逆な感覚、なのだそうです。どれも貴重な映像となっておりますので是非ご覧ください。

 

①「京舞と狂言とは?」〜「娘をよろしく」〜「大学での発見!」〜「次回は・・・」

 

②2019年度の舞台より~狂言『因幡堂(いなばどう)』みどころ&ダイジェスト映像

 

③2019年度の舞台より~京舞 地唄『鉄輪(かなわ)』みどころ&ダイジェスト映像

 

④(前半)茂山忠三郎の狂言体験レッスン〜山伏の名乗り、構え、運び〜 生徒:井上安寿子

 

④(後半)茂山忠三郎の狂言体験レッスン〜山伏の名乗り、構え、運び〜 生徒:井上安寿子

 

⑤井上安寿子の京舞体験レッスン〜上方唄「七福神」 生徒:茂山忠三郎

 

⑥五世井上八千代、四世茂山忠三郎について

 

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