京都で脈々と受け継がれてきた伝統芸能「京舞」と「狂言」を鑑賞し、それぞれの魅力を感じることができる公演が5月25日(土)14時から、京都造形芸術大学瓜生山キャンパス内にある京都芸術劇場 春秋座で開かれます。今回のテーマは「女」。京舞は井上安寿子さんが「三国一(さんごくいち)」と「鉄輪(かなわ)」の二番を、狂言は茂山忠三郎さんが「因幡堂(いなばどう)」を上演します。
伝統芸能の奥深さや魅力を特に若い世代に知ってもらおうと、京都造形芸術大学卒業生である2人が初めてタッグを組みました。今回上演する3演目は京都を舞台としており、一切せりふがない京舞、せりふを用いる狂言といった、伝統芸能ごとの表現方法の違いなどを知ることができます。
「三国一」は、壬生寺に古くから伝承されるおおらかで滑稽味あふれる無言劇<壬生狂言>の「桶取(おけとり)」から取材した曲。壬生寺に参詣する美しい娘を男が見初め口説いて結ばれますが、そこに醜女の妻が駆けつけます。娘は逃げ去り、夫は不実をなじる妻を振り払い娘の後を追っていくーという内容です。井上さんは前半で男に見初められた娘を、後半で醜女の妻を演じます。
「鉄輪」は、夫に捨てられた妻が貴船神社に鬼になりたいと祈願して鬼と化し、夫と後妻に復讐をしにいくが恨みを晴らせずに去る姿を描いています。振り付けは能に造詣が深かったと伝えられる二世八千代で、「葵上(あおいのうえ)」「珠取海女(たまとりあま)」と並び、井上流の本行舞を代表する一曲です。
「因幡堂」は、夫から離縁状を送り付けられた妻が、新しい妻を授かろうと因幡堂の薬師如来に祈願していた夫の元に行き、姿を隠したまま西門に立つ女を妻にするよう告げる。妻は自ら衣を被って西門に立ち、偽のお告げを信じ込んだ夫が連れて帰るーといったストーリーです。茂山さんは夫を演じ、妻役を和泉流・野村又三郎さんが担当します。
記者発表会が4月4日にあり、井上さんと茂山さん、公演を企画した京都造形芸術大学の田口章子教授がそれぞれ思いを語りました。
井上さんは「女」をテーマにした2演目について、「どちらも庶民の女性が主人公で、入り込みやすい物語。現代に通じるようなしっとりとした感情を感じ取ってもらえたら」と語りました。祇園甲部所属の地方(唄・三味線)との久しぶりの舞台共演も楽しみにしているそうです。
茂山さんは「美しさを表現することは京舞にはかなわないので、女性の『強さ』『怖さ』を狂言師ならではの女形で野村又三郎さんが表現してくれる。シテ(主役)として女形を引き立てたい」。井上さんとの共演に関して「京舞と狂言でどのような方程式ができるのか未知数だが、それを探すのが楽しみでわくわくしています」と意気込みました。
田口教授は「伝統芸能で女性がどのように描かれているかは現代にも通じるものがある。若い人やこれまで関心がなかった人が若手の2人の演技を見て、伝統芸能って案外面白いということを感じてもらいたい」と呼び掛けました。
公演後にはトークショーも行われる予定です。時代を切りひらく若手2人の活躍をぜひご覧ください。
〈京舞〉井上安寿子(いのうえ・やすこ)
京舞井上流五世家元井上八千代の長女として京都に生まれる。平成3年、四世及び五世井上八千代に師事。平成4年「四世井上八千代米寿の会」にて初舞台(上方唄「七福神」)。平成18年井上流名取となる。平成23年京都造形芸術大学卒業。平成25年 井上安寿子主催の京舞公演 葉々(ようよう)の会を発足。第50回なにわ芸術祭 新進舞踊家競演会において新人賞受賞。平成27年より学校法人八坂女紅場学園の舞踊科教師に就任。平成27年度京都市芸術新人賞受賞。平成28年伝統文化ポーラ賞奨励賞受賞。平成30年東京新聞第1回日本舞踊新鋭賞・文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
〈狂言〉茂山忠三郎(しげやま・ちゅうざぶろう)
昭和57年京都に生まれる。能楽師 大蔵流狂言方。茂山忠三郎家、四世忠三郎の長男。父に師事。四歳にて「伊呂波」のシテで初舞台を踏む。その後「釣狐」、「三番三」、「花子」など秘曲、重曲を異例の若さで上演。海外への芸術文化交流にも力を入れアメリカやヨーロッパなど海外公演も多数。平成17年京都造形芸術大学卒業。平成21年度文化庁文化交流使。能楽協会京都支部所属、京都能楽会会員。京都造形芸術大学非常勤講師。《忠三郎狂言会》代表、猿楽曾主宰。平成29年、五世茂山忠三郎襲名。平成25年文化庁芸術祭賞新人賞、平成28年京都府文化賞奨励賞、平成30年度京都市芸術新人賞受賞。
京舞と狂言
京都造形芸術大学出身の2人が出演する伝統芸能の公演
日時 | 5月25日(土)14時開演(開場は13時半) |
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場所 | 瓜生山キャンパス 京都芸術劇場 春秋座 |
入場料 | 一般4,000円/学生&ユース(25歳以下・要証明書提示)2,000円 |
定員 | 約700席(全席指定) |
問い合わせ | 京都芸術劇場チケットセンター(075-791-8240) |
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