芸術教育のあり方を問い直し、未来の可能性を芸術的視点から提案する京都芸術大学の学生選抜展KUAD ANNUAL。2017年度より片岡真実(森美術館館長)のもと、東京都美術館で3度開催されてきた企画展「KUAD ANNUAL」は、2021年度より「KUA ANNUAL」と名称を変え、テーマも新たにスタートを切りました。
キュレーターは、服部浩之(インディペンデント・キュレーター、秋田公立美術大学准教授)。「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」日本館展示を担当するなど、気鋭の若手キュレーターです。
昨年、服部氏から示されたテーマは「irregular reports いびつな報告群と希望の兆し」。このコロナ禍において「いま、ここ」という状況下で若い芸術家が制作した作品を発表する場であり、16組の作家たちがそれぞれの作品を通じて、この数奇な一年を表現する、時代を映す鏡となる「報告」の集合として作品を発表しました。
2021年が明けてすぐに、再び緊急事態宣言が発出され、東京展は入念な感染防止対策を行いながら実施されることになりました。華やかなレセプションは中止となりましたが、関係者を招待した内覧会が開かれ、片岡真実(森美術館館長)を招いた講評会が行われました。
非常時の日常の中で、共に成長する展覧会 ― KUA ANNUAL 2021「irregular reports:いびつな報告群と希望の兆し」東京展
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/795
そして2022年度へ向けて、2021年4月16日(金)、KUA ANNUAL 2022 の募集説明会が開催されました。
会場に集ったのは、オンライン参加を含め、約100名ほどの学生。2022年度も引き続きキュレーターを務める服部浩之氏や制作指導にあたるヤノベケンジ(美術工芸学科)、家成俊勝(空間演出デザイン学科)、見増勇介(情報デザイン学科)、林田新(アートプロデュース学科、山城大督(アートプロデュース学科)、高橋耕平(美術工芸学科)、江南亜美子(文芸表現学科)らが参加するなか、テーマの発表と出展を希望する学生に対する募集説明が行われました。
発表された募集テーマは、「C | 接触と選択」。
Contact(接触)、Choice(選択)に加え、発音 siː(見る、分かる、会う)を意味し、AかBではない、別の道や場所としての「C」の可能性を模索します。
「C | 接触と選択」
昨年の今頃は緊急事態宣言が発出され、自宅で多くの時間を過ごしていたでしょう。一年経って、それなりに外出はできるようになったけれど、ほとんどすべての人がマスクをする風景が当たり前になりました。異様な風景ですが、私たちはすっかりこの状況にも慣れてしまいましたし、まだしばらく続きそうです。
ところで、コロナ禍によって私たちは「触れる」ことや「選ぶ」ことに対して大変過敏になったのではないでしょうか。何かに触れることを躊躇し、ただ集まることにさえ慎重な選択を迫られます。接触は避けられ、選択を求められる。英語で、接触は「Contact」、選択は「Choice」。どちらも頭文字は「C」。「C」の発音は「siː」で、「見る、分かる、会う」などを意味する「see」とも重なります。「see」は、美術にとって欠くことできない行為です。
本年度の KUA ANNUAL 2022 は、現在の世相において意識的にならざ るを得ない「接触と選択」について改めて思考を巡らせ、 AかBかではない別の道や場所としての「C」の可能性を模索したいと思います 。どのような表現形式でも構いません。本テーマに応答する作品の応募をお待ちしています。
服部浩之(インディペンデント・キュレーター、秋田公立美術大学准教授)
「どのような表現形式でも構わない」とはいえ、美術館に展示するとなると、さまざまな制限・制約があります。火や水などは使用できませんし、植物は密閉しないとダメ、食物なども不可ですし、安全面にも気をつけねばなりません。さらには感染症対策についても十二分に考慮する必要があります。
ただしヤノベケンジ先生は「現段階では、あまりそこまで自分の中で制限をかけず、自分の表現したい最大限のところをぶつけてほしい」と言います。
「やってほしくないのは、自分をねじまげて、なんとかこの枠組で、あるいはなにか現代美術の様式のようなものに自分の作品を押し込めて提示するということ。今、自分ができる生のものをぜんぶ服部さんにぶつけるべきだと思います。そうでないと、歪んだ形でパッケージ化されてしまうことで、服部さんには見えなくなってしまうから。
それよりも自分自身の持っている“生のもの”をぶつけることが、選考に通過する唯一のチャンスであって、通過した後も、自分を伸び伸びと活かせる方法論になると思います」。
最終的にどう展示するかはその後のことであって、選考に際しては、できるだけ表現に制限をせず、むしろ広げてほしいと語りました。選考通過後、実際に展示をするまでの過程には、さまざまな困難があろうかと思います。その厳しさも含め、ひとつの表現の戦い方として学んでいくということ。KUA ANNUAL の趣旨にある通り、それこそ「芸術教育のあり方を問い直し、未来の可能性を芸術的視点から提案する」に他なりません。
真のアーティストとしての戦いに身を投じたい学生の皆さんの挑戦を楽しみにしています。
KUA ANNUAL 2022 京都芸術大学 学生選抜展 募集要項
選考方法 | 応募書類選考(1次)とプレゼンテーション選考(2次) |
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対象学科 | 芸術学部(通学部)全学生、大学院全学生 |
応募条件 | 表現方法やジャンルは問わない。指定の会場で指定の期間にこのプログラムを通じて制作したものを公開すること。2021年12月1日(水)~12月20日(月)の期間に、本学ギャルリ・オーブにておこなうプレ展にも参加できること。 |
募集形態 | 出展者(個人/グループ)、アシスタント・キュレーターのいずれか(いずれも自薦とする) |
提出締切 | 5月24日(月)24:00締切 |
1次選考結果発表 | 6月14日(月)在校生専用サイトにて発表、およびメール通知 |
2次選考 | 6月18日(金)・19日(作品、ポートフォリオ等を持参して対面でのプレゼンテーションを予定) |
2次選考結果発表 | 6月25日(金) |
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