REPORT2021.02.03

建築

美しい椅子、ほっこりした椅子、ぼーっとできる椅子、くつろぎの椅子、無駄な椅子。 ― 環境デザイン学科「私の小さな椅子」

edited by
  • 京都芸術大学 広報課

美しい椅子はもちろん、
ほっこりした、
ぼーっとできる、
くつろげる、
無駄な、
不安定な、
おかえりと迎えてくれる、
どこでも馴染む、
小指で持てる、

など、さまざまな「椅子」が完成しました。


環境デザイン学科1年生の名物授業のひとつといえば、木材で「椅子」を制作する授業です。自分のサイズに合わせたひとりがけの椅子を実寸サイズで作ることで、人間のスケール感を知り、椅子に必要な強度や構造を理解したり、初歩的な空間構想力を養成することを目的としています。

ところが今年度は、前期授業がすべてオンラインとなり、なかなかそのような実作業を伴う制作はできません。そこでオンライン向けの課題に変え、入学したばかりの初学者の一年生に果たしてどのようなオンライン教育をすべきか、試行錯誤がなされ、「模型」を制作する授業に切り替えたそう。結果、担当教員曰く「その成果には目をみはるものがあった」とのこと。その作品模型展の様子は、瓜生通信にてご報告させていただきました。


学びを止めないために ― 環境デザイン学科 学生作品模型展 2020
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/728


後期になり対面の授業が再開され、椅子を制作する授業が無事に開講。つい先日、作品講評会が行われていましたが、担当教員は「18mm角の角材のみという限られた材料で、成果物にここまでのバリエーションがでるとは驚いた」と話します。

付箋は、学生による人気投票のもの。

 

テーマ
身体スケールの環境デザイン

目的と概要
与えられた材料を用いて、自分自身のための椅子を実作する。家具の実作に不可欠の三面図や原寸図の描き方を習得する。

課題名称
私の小さな椅子

課題主旨
・人体寸法はあらゆる環境デザインの基本である。その人体寸法と人間的なスケール感を理解する。
・素材と造形の関係を探る。与えられた素材の特性を理解し、その素材にふさわしい造形の可能性を追求する。
・設計から制作までのプロセスを学ぶ。着想やイメージをいかに具体化するか、そのプロセス(過程)のなかで、イメージスケッチ・模型・三面図・原寸図など、考えを発展させ具体化するための手法を修得する。
・構造について学ぶ。椅子には人体を支えることのできる強度の確保が必要であり、そのデザインには構造力学的思考が組み込まれていなくてはならない。その意味で椅子は建築の縮図であり、この課題を素材や構造によって造形を考えていく契機としたい。
・場所の空間イメージから造形を導き出す。椅子とそれを取り巻く身近な空間を一体的にデザインすることを通じて、初歩的な空間構想力を養う。
・限定されたコンパクトなサイズの中でいかに自身の思考実験を盛り込んだオリジナルなイスを実現できるか。

 


授業はまず、梱包用の箱づくりや人体寸法の計測から始まります。例年は「私の椅子」ということですが、必ずしも一人がけの椅子に留まらず、様々なサイズの椅子を制作していました。今年は「私の “小さな” 椅子」と改め、最初に「430mm x 430mm  x 700mm」の箱を作り、それに入る大きさという規定を設け、材料も「18mm x 18mm x 1,800mm」の角材18本に限定したそう。一人で持ち運びができるほどのサイズ感です。


その後、人体模型制作、椅子三面図のトレースへと進み「アイデアスケッチ」を10案ほど考えます(A3ケント紙1枚にまとめる)。


そして、スタディ模型で再考し、教員によるアドバイスを受けながら木材加工へと進みます。
完成後、大教室にて皆さんの作品を一つひとつ講評。その後、瓜生山キャンパス人間館1階のエントランス付近に展示をしました。


バラエティに富む椅子の数々。甲乙つけがたく、すべてご紹介したいところですが、優秀作に選ばれた18名の作品をご紹介します(五十音順)。

 

 

赤松穂乃佳

 

綾井華

 

井上宝

 

井場晋吾

 

小和田悠

 

加村仁奈

 

柴崎仁美

 

清水琳

 

髙木柚葉

 

田村優衣

 

日浦大翔

※撮影時欠席のため、作品写真なし。

 

平本航介

 

湊真友子

 

宮崎雄太

 

盛みくる

 

安田都和子

 

安松鈴葉

 

渡部日菜

 

いかがでしたか?バリエーション豊かな「私の小さな椅子」の数々。
いつ、どこで、誰が、なぜ、どのように使用するための椅子なのか、そのコンセプトを拝見すると、まだ入学間もない一年生ですが、深い考察がなされていることに驚きます。急遽、前期と後期の課題が入れ替わり、学生の皆さんや教職員は戸惑い、困難もあっただろうと思いますが、その達成にはすばらしいものがありました。

 

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