INTERVIEW2016.10.19

京都

瓦の裏に生きた証を忍ばせて #2 ―浅田晶久(浅田製瓦工場 三代目)[伝統のその先へ #1]

edited by
  • 河野 彩子
  • 顧 剣亨
  • 小山田 晃

 

 

鬼瓦とはどのようなものなのでしょうか?

鬼瓦というのをみなさんどういう風に解釈しているのかが問題なんですね。鬼面という風な面構えのものを鬼瓦という場合が一般的ですが、私らの業界では棟の端にあるものを鬼瓦といいます。だから普通の家に鬼面なんか乗ってないでしょう。だけどあれを私たちは鬼瓦って表現します。鬼面で鬼瓦いうのは、だいたい鬼面鬼瓦とかそういう風な表現をします。だから普通の家でも鬼瓦というものはあります。鬼面ばっかりではないんです。

 

鬼瓦のデザインについて教えて下さい

鬼瓦と聞くとどういうイメージが浮かびます?だいたいツノが二本だと思うでしょう。古い時代の鬼瓦にツノはないんですよ。私の家にある奈良時代とか平安の初期あたりの鬼瓦にツノはないです。平安時代の中期・後期くらいから鎌倉時代くらいにかけては、ツノが1本、真ん中あたりに生えてて、それからあとの時代は2本になります。もちろん平安時代とか奈良時代には、現代のように立体的ではなくて、レリーフのような浮き彫りの鬼瓦が多いですね。 現代のようになったのは、江戸時代からですね。もちろん室町時代あたりからも出てきてますが、主に江戸時代のほうが立体的にはなってきていますね。

 

じゃあそんな中、平成の好みっていうのは何かあったりしますか?

現代はどうでしょうね。ですが、新たに独自で作ったということもないですね。やっぱり私たちとしては、復元というものが主な仕事になってくるので、相手側の思いに合わせて作ってというのがほとんどですね。やっぱり、新たにこうコロッと変わるようなことはしたくないでしょうし、伝統的なものを守ろうという意思もあるんやと思います。

 

これからの時代にとって瓦とはどんなものになると思いますか?

関東大震災に阪神大震災、そして東北の震災、おまけに最近の熊本での地震がありましたね。地震の度に、瓦が落ちてしまう。そしたら、みんな瓦が怖いということになってくるでしょう。なので、これからもうだんだん瓦の需要が減っていってしまいます。そういう意味で瓦を引き継ぐというのはかなり酷なことなんですよ。ですから、屋根の瓦としてだけでなくて、瓦そのものの素材を生かしたものを作れないかということは常に考えていました。瓦でランプシェードを作ったり、硯造ったり、それ以外のもの色々手がけたりもしましたね。 そして去年度、京都工芸繊維大学の学生が、私ところで夏の課題として瓦でシルクスクリーンをやられて、これはひょっとしたら使えるんじゃないかと思いました。

 

瓦でシルクスクリーンやるとは新しい試みですね

屋根材だけではなく、瓦づくりを床材や壁面材、あるいは天井材などに使うということにすれば、デザイン次第によってはいくらでも瓦の使える用途が広がるなと思ったんです。色々と研究して、なんとか使えるんじゃないかなというところまではいきました。それで北條先生(注釈)やあるいは工繊の先生などにデザインをお願いして、今それを商品化しようということをいくつかしているんですけどね。なかなかそれが公まで持っていけないもんですからね。去年の年末に、その成果発表という形で、大阪のナンコウの展示会やって、今年は今年でこの秋に、東京のビッグサイトにできたら出したいなと思ってますね。

 

 

今回、整形される瓦について教えてください。

今回整形するのは鬼瓦で、奈良時代の都府楼からしか出ていないものです。奈良時代でそれだけの憤怒の怒った顔が表現された鬼瓦はどこにもありません。昔からこの鬼瓦を作りたくて、いつか注文がこないだろうか思っていたらやっときたんです。

 

 

 

整形される際、造形図などは頭に入っているんですか?

一度作った造形は覚えてることもあって楽にできますが、何も資料がないものを作ったときは大変でしたね。現地に行って実物を見たり、写真をとって作業場で見ながら作業したりしますね。

 

 

ヘラで整形していますが、使い分けはどうやってしているんでしょうか。

ヘラによって溝のでき方とかが違うのでそこは意識していますが、あえて使い分けということはしてないですね。長年の感覚的なものもあるので。

  • 河野 彩子Ayako Kawano

    1996年宮崎県出身。京都造形芸術大学 アートプロデュース学科2015年度入学。人と人を繋げる力を体験を通して学び中。散歩するのが趣味。

  • 顧 剣亨Kenryou GU

    1994年京都生まれ、上海育ち。京都造形芸術大学現代美術・写真コース卒業。大学在学中フランスアルルの国立高等写真学校へ留学。都市空間における自身の身体感覚を基軸にしながら、そこで蓄積された情報を圧縮・変換する装置として写真を拡張的に用いている。

  • 小山田 晃Akira Koyamada

    1996年大阪府生まれ。京都造形芸術大学 情報デザイン学科2015年度入学。映像を中心にグラフィックデザイン全般を学ぶ。好きなことはゲーム。

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