REPORT2019.03.20

京都アート

アートを買う文化を日常に – アーティスト主体の“ARTISTS’ FAIR KYOTO 2019”開催

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  • 瓜生通信編集部

京都発のアートフェアとなる「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2019」(主催者:京都府)が3月2日と3日の2日間にわたり開催されました。舞台となったのは、京都文化博物館 別館と、京都新聞ビル 印刷工場跡。本学の美術工芸学科長の椿昇がディレクターを務め、本学の卒業生・大学院修了生も多数参加。また、国内外で活躍する旬なアーティストや、彼らが選ぶ若手アーティストたちが集まり200点以上に及ぶ出品作品が会場を彩りました。

インスタレーションをメインに展示された、京都新聞ビル工場跡

2018年に初開催をむかえ、今年で二回目となる「ARTISTS’FAIR KYOTO 2019」。いわゆるアートフェアと一線を画すのは、ギャラリー主体ではなくアーティスト自身が作品を展示し販売を行うというところ。

(Photo:前端 紗季)

このフェアがめざすのは、観客とアーティストの間に交流を生み出すことで、「アートを買う文化」を日常化させ、次世代のアーティストがサスティナブルに、文化創造を続けていける場を育むことです。

ディレクターを務めた美術工芸学科長 椿昇 (Photo:前端 紗季)

「畑に来て農家と直接つながり味わう野菜は、塩をかけるだけでおいしいですよね。ここはそういうアーティストの畑。直接アーティストと話を交わしながら、今まさに生まれた新鮮な作品を味わい、自分のものにしてほしい。難しいことは必要ありません、いい!と思ったものを手にする。それでいいんです」。オープニングトークで椿は、来場者にアーティストと関わり作品に興味を持ってほしいという想いを語りました。

品川 亮 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術表現専攻 修了
日本独特の文化、「間」や「型」をテーマに、伝統的な日本絵画の素材と近代的な要素を組み合わせ描いた現代の日本絵画を数点出品。フェア開始から観客の列が跡を絶たず、3時間ですべての作品が売約となった。
厚地 琴美 京都造形芸術大学 美術工芸学科 油画コース 卒業
車や飛行機、大陸など、動くものすべてが彼女のモチーフとなる。それらを年代別に縦や横に重ねたり、移動していく様を画面に落とし込み絵画にしていく。
西垣 肇也樹 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術表現専攻 修了
山水図の画法で戦後の日本を象徴する「ゴジラ」を描く。ゴジラの身体のいち部分をひとつひとつ文字で描いた作品も、会場で注目を集めていた。

 

アーティストフェア前夜には、副学長の小山薫堂が主人を務める「下鴨茶寮」にて、オープニングイベントが開催されました。ディレクターの椿昇もかけつけ、現代アートとの付き合い方についてトークが繰り広げられました。

下鴨茶寮は、安政3(1856)年に創業した料亭。京都独自の文化や「おもてなし」の美学を、料理と空間、サービスのすべてを通して世界に発信する。2012年、女将の意思を引き継ぎ小山薫堂が代表取締役に就任

 

アートを買うということはどういうこと?という小山の問いに、椿はこう答えます。「アートコレクションすることは『歴史の印刷工場』なんです。日本も、安土桃山の頃はお茶の席で世の動きが決められていましたよね。現代の世界では、ペインティングを買うことで歴史を作るプレーヤー側にまわることができます。なぜなら絵を買う場で、プレーヤーたちが世界を動かしていく話をするからです。そういった概念が日本にはまだまだ足りていません」。日本人には少し縁遠いとされてきた、アートとお金の話に切り込みながらトークは進んでいきます。

椿昇教授(左)と小山薫堂副学長(右)
本学の卒業生もトークセッションを賑わせた。

 

世界を舞台に活躍する卒業生(能條 雅由、香月 美菜、木村 舜、品川 亮)もトークセッションに参加しました。中にはすでに海外のギャラリーに所属しているアーティストも。

「とはいえ世界のコレクターたちは、世界中で開催されているアートフェアにすでに飽き飽きしている。お金があれば絵は買えるけれども、どこかで見たことのある作品ばかりが並んでいるからです。だからこそ今回のフェアは鮮度を大切にしたかった。彼らのような若手の作品はまさに新鮮で取り立て野菜そのもの」。アーティストから直接話を聞いて、彼らの生き様をダイレクト感じれば、作品を手にせざるを得ないはずだと椿は話します。

トーク後は、下鴨茶寮の料理が振る舞われた。
青色が印象的な作品は香月さんのもの。右手のシルバーのペインティングは能條さんの作品。

 

来場者からも「アートを買うことに馴染みはなかったけれど、作者の方と出会って話してみると、買ってみてもいいかもと感じました。面白いお話が聞けて新鮮でした」。とトークのあとの歓談も盛り上がった様子。下鴨茶寮で展示されている作品も次々と購入されていきました。

香月さんの作品をイメージした料理、『青は藍より出でて、藍より青し』(写真上)

品川さんの作品をイメージした手まり寿司『百椿』(写真右)

 

 

 

 

今後も継続的に行われていく予定の「ARTISTS’ FAIR KYOTO」。アーティスト主導でアーティストのためのプラットフォームを築いていく。今後の動きにも期待が高まるイベントとなりました。

 

ARTISTS' FAIR KYOTO 2019(主催者:京都府)

https://artists-fair.kyoto/

 

ARTISTS’ FAIR KYOTO 2019 出品者  本学卒業生・大学院修了生

油野愛子 京都造形芸術大学大学院 修士課程 美術専攻総合造形領域修了
柳瀬安里 京都造形芸術大学 美術工芸学科 写真コース 卒業 
西垣肇也樹 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術表現専攻修了
中村ヒカル 京都造形芸術大学 美術工芸学科 総合造形コース 卒業
高野浩揮 京都造形芸術大学 美術工芸学科 総合造形コース 卒業
新宅加奈子 京都造形芸術大学 美術工芸学科 総合造形コース 卒業
檜皮一彦 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術表現専攻修了
神馬啓佑 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術表現専攻修了
石黒健一  京都造形芸術大学 美術工芸学科 総合造形コース 卒業
顧剣亨  京都造形芸術大学 美術工芸学科 写真コース卒業
長尾鴻平 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術表現専攻修了
厚地琴美 京都造形芸術大学 美術工芸学科 油画コース 卒業
飯田美穂 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術専攻修了
家田実香 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術専攻修了
香月美菜 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術専攻修了
黒宮菜菜 京都造形芸術大学 美術工芸学科 総合造形コース 卒業
和田直祐 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術表現専攻修了
宮原野乃実 京都造形芸術大学 美術工芸学科 総合造形コース 卒業
品川亮  京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術表現専攻修了
今西真也 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術表現専攻修了
小宮太郎 京都造形芸術大学大学院 修士課程 芸術研究科芸術表現専攻修了
片山達貴 京都造形芸術大学 美術工芸学科 写真コース卒業
表良樹  京都造形芸術大学 美術工芸学科 総合造形コース 卒業

(文:藤田祥子、写真:新井 陶馬)

 

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  • 瓜生通信編集部URYUTSUSHIN Editorial Team

    京都造形芸術大学 広報誌『瓜生通信』編集部。学生編集部員24名、京都造形芸術大学教職員からなる。

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