INTERVIEW2025.01.28

アート

新春を招くは福笑いとおみくじなり-学生会企画「笑う角には福ぽかり」-

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  • 京都芸術大学 広報課

ますます厳しくなる寒さと共に、新年を迎えた京都芸術大学。学生や先生、職員の方々の服も厚みを増していきます。芸大生らしく制作の熱気で大学の冷気を吹き飛ばしてくれないかなと考えていると、なにやら巨大な鼻を抱えた学生が構内を闊歩していました。

何かの制作物かと思える鼻は模型や彫刻ではなく、どうやら印刷物のようです。好奇心から巨大な鼻もとい印刷物を抱えた学生さんを視線で追っていくと、一階のカフェスペースの奥に吸いこまれていきました。確認しようにも普段にはない仕切りが展開されています。

このままではあの鼻の正体がうやむやになってしまう。それはよくないぞと、スペースに足を運びます。結局あの鼻はなんなのか。

答えは……のっぺらぼうでした。

訂正します。

印刷された巨大なのっぺらぼうが、地面に敷かれていたのです。

そばに貼られていたポスターによると、ここは学生会が企画した巨大福笑いのイベントスペースのようです。

学生会とは、より良い学園生活の実現を目指して活動する、学生による、学生のための組織。1年生から4年生で成る代議員総会を3か月に1回程度で開き、学生の生の声を拾いながら、企画を実施・運営しています。

学生会が主催するイベントは、新入生歓迎会(3~4月の間開催)、大瓜生山祭(学園祭、11月開催)などがあげられ、福笑い企画もこの一環として行われるようです。
学生会イベントは、ハロウィン、クリスマスなど季節ごとの企画と、大瓜生山祭のような学校独自の企画に分かれますが、今回の福笑い企画は前者です。

身体も心もポカポカ 学生会新春企画「笑う角には福ぽかり」

巨大な鼻とのっぺらぼうの正体は、福笑いに使用されるパーツでした。

本記事では学生会のメンバーを通して、巨大福笑い企画の制作や開催の裏側を紹介していきます。


身体ぽかぽか、心もポカポカ。

『春という語は入っていても、まだまだ寒い「新春」。そんな寒さを取り除くにはやはり温かさ、つまりポカポカを「身体」と「心」に浸透させる必要がある。』
学生会はこのコンセプトを軸に、正月(新春)遊びの要素を加えることで巨大福笑いを誕生させました。

もうおわかりでしょう。「巨大」福笑いでなければならなかった理由は、ずばり体を動かす必要があったからです。
通常の福笑いとは卓上で行い、腕の届く範囲で遊ぶものなので動く範囲も大きくはありません。
でもそのサイズを巨大にすれば、動く範囲は広がり、腕だけではなく足も必要になります。

本福笑いのルールは基本、本家のものと変わりません。目をつぶった参加者にスタッフが顔のパーツを渡し、それを参加者が配置していきます。

足を動かし巨大なパーツを抱え、さらには目を隠す。
下半身と上半身に加え、視界以外の感覚を研ぎ澄ませる。
これは立派な全身運動といっても過言ではないでしょう!

この企画自体は、昨年開催されていたおみくじ配布企画からの発展である、と企画リーダーの國方一成さん(キャラクターデザインコース / 2年生)は言います。

國方さん「昨年は同じ時期に屋台をお借りしておみくじを配布していたんですが、それではさびしいという意見が出ました。その問題を解消する案として正月遊びをしよう、という流れになったんです。カルタやコマだったりいろんな意見が出ましたが、最終的に福笑いになりました。
巨大になったのは、体を動かすという点の他に、『どうせならでっかくやりたいよね』という学生会の意見が組み合わさったからです」

写真左 國方一成さん

体験した福笑い

福笑いは1月16日、17日の17時30分〜19時30分で実施され、参加者には記念のチェキとおみくじのプレゼントがありました。
来場者対応をしていたスタッフの藤田唯那さん(演技・演出コース / 2年生)に当日の様子を聞いてみると、カップルや友達同士で来られる方が多かったようです。

また、来場者が来ないのではないかという不安があったようですが、チェキへの好意的な反応や、来場者から楽しいという感想をいただけたことが嬉しかったとのこと。

藤田唯那さん

配布されたおみくじは、大吉や中吉というおみくじ要素を踏襲しつつ、文面・デザインともに学生会の方々で作り上げました。

文面は10種類あり、ポエムのような心温まる一言がつづられています。

藤田さんに一番好きなものを聞いてみると
「一目ぼれ募集中」
だそうです。引かれた方いらっしゃいますか?

ちなみに、筆者も実際におみくじを引かせてもらいましたが、結果は小吉の
「どっちのが 暖かいだろ カイロの微熱と君の手のひら」
というポエムに出会いました。
カイロの方が暖かいと思いますね。皆さんはどうですか?

学生会で制作したポエムを、國方さん一人でデザインに落とし込んだそうです。
デザインについて意見をうかがったところ、「神社のおみくじは基本的に白黒(色がついているものもありますが)で質素なイメージがあるので、ポエム以外は新春ならではの華やかさを表現するデザインにしました」とのこと。

大きさと三次元の乖離

この巨大福笑いの顔パネル(のっぺらぼう)は300×500cmのサイズです。これは一般的な福笑いのサイズを37×48.5cmと仮定した場合、約83.5倍のサイズ。市販で販売してるはずもなく、巨大福笑いもおみくじ同様、学生会によって制作されました。

福笑い制作を担当した平岡倫奈さん(映像クリエイションコース / 1年生)、山崎七海さん(イラストレーションコース / 1年生)は、想像よりも苦労したと語ります。
平岡さん「設置に苦労することはなかったのですが、印刷が大変でした。印刷はスムーズに一発で出力したかったんですが、最初に出力する顔パネルのデータを出力するにしても、印刷機の出力できるサイズと顔パネルの出力サイズが綺麗にあわない。大きい印刷には時間もかかるので、制作時間との折り合いをつける必要がありました。なので、顔パネルのサイズを確実に対応できる六分割にしました。一枚印刷できしだい設置作業と次の印刷を同時に進行できるようにしました。大きい印刷に対応できるULTRA FACTORYを使用できる時間と、設置に用意されていた時間が少なかったので、長い時間苦労したというより瞬間的にしんどかったです」
*ULTRA FACTORY(https://ultrafactory.jp/):京都芸術大学の全学生が利用できる造形技術支援工房

平岡倫奈さん
山崎七海さん

山崎さん「実は写真のデータにはもうちょっと苦労がありました。福笑いにキャラクターやお面のような二次元ではなく、本学の先生の写真を採用したんです。キャラクターだと顔をのっぺらぼうにしても違和感がないですけど、三次元の人の顔をのっぺらぼうにすると顔の特徴が浮き上がるので、のっぺらぼう状態でも違和感のない状態にするのは難しかったです。先生の顔(写真)をお借りしてる以上、先生の特徴は残したかったので、のっぺらぼうの状態が違和感なく見えるよう重点的に取り組みました」

芸術教養センター 中山博樹先生にご協力いただきました

新春企画「福笑い」。2024年度、学生会が初めて開催した企画ですが、狙い通り参加した方たちの身体も心もポカポカするような素晴らしい企画でした。

この先もワクワクする一年になるような企画を準備しているようです。
学生会のみなさん、楽しいイベントをありがとうございました!次のイベントも楽しみにしています!

(文=轟木天大)

 

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