先日の広報課の情報共有会議の時のこと。「そういえば京都芸術大学の学生が関わってる面白いイベントが西成区であるんだけど」と、とある課員から渡されたのは、こちらのチラシ。
開催時間はお昼ごろから日暮れまでとのこと。「今年も『ちょちょヴァナ』を開催します!」と、とても不思議な案内ですが、何やら面白そうです。
というわけで、実際に広報課が現地に行ってみました。
行ってみると、会場には、お茶を点てるブースやコーヒーをふるまうスペース、小学生たちの「妄想屋台」や音のブースなど、多彩なブースが並んでいました。そしてお茶席にいる人、木を削る人、ドラムを叩く子ども、火にあたっているお年寄り…と老若男女が楽しんでいました。
ところで「ちょちょヴァナ」とは、西成区のまちをフィールドとしたアートプロジェクト「ちょちょまうヴァナキュラー」の略称です。
西成区のまちをフィールドとして、「アート」を媒介に生まれる新たな出会いやできごと、関係性を通じて持続可能な地域共生社会を実現すること、またこれらの活動全体を通して、地域の未来を担っていく次世代の創造性人材育成を目的として実施しているプロジェクトだそうです。(大阪市西成区役所ホームページより)
今回は「ちょちょヴァナ2024・秋 〜野点+妄想屋台+作業場〜」と題し、旧今宮小学校で同時にさまざまなプログラムが展開されていました。
加子母木匠塾の移動式縁側づくり
広場の中央にいた、木材に黙々と穴を開けている学生たちの姿が目に留まりました。
彼らは加子母木匠塾(かしももくしょうじゅく)に参加する本学の学生たちでした。
加子母木匠塾は豊かな森林の歴史と文化を、木材を有する岐阜県中津川市の加子母地域で木材の加工や知識を学び、地域との交流を行う学生団体で、全国の8大学の建築関係の学生が参加し、今年度で活動30周年になります。
何を作っているのかを聞くと、「今回のイベントでは、移動式縁側の組み立てを見ていただく形で参加する予定でしたが、スケジュール的に間に合わず、制作段階を見ていただき、体験もしていただくという方向に変更しました」とのこと。
興味がわいたので実際に削り作業を体験させていただきました。
枠に沿って垂直にノミを立てて溝を掘り、今度は面を削るようにノミを進めると…ちょっとだけ削れました。厚さにして2~3mmでしょうか。
「これをこの木を貫通するまでやります」と言われた木の厚さは10cmはありそうです。手作業でこの厚みを削るのは想像以上に大変で、手間暇がかかることを実感しました。
イベントの最中には木工が趣味だという方やDIY好きな方等、さまざまな方が木を削る作業に参加され、学生と木との触れ合いを楽しまれていました。
ちなみに昨年度はこちらの3人掛けロッキングチェアを制作されたとのこと。今日もたくさんの方がこちらで休まれていました。
足湯でほっこり 京都芸術大学 湯道部
「足湯、始まりました~!」との掛け声に振り返ると、湯道部の部員たちが用意していた足湯の準備ができたようです。
湯道部とは、湯道の理念を基に、京都の銭湯に毎週通い、湯の道について考えるだけでなく、銭湯・温泉に行ったことがない人に興味をもってもらうキッカケをつくるためにさまざまな活動をする部活動です。
そもそも湯道とは、京都芸術大学 副学長の小山薫堂が2015年に提唱した日本の入浴文化を「道」とするための活動です。
今回は、昨年度大学で実施していた「足湯」イベントの際に制作した湯船を利用し、「足湯でほっこりしてもらう」ことになったようです。重量が300kgもあるヒノキの湯船はすべて学生たちの手彫りで、手間暇がかなりかかっています。このヒノキは加子母木匠塾が活動している加子母地域から仕入れたものとのこと。ここにもつながりがあるんですね。
あいにく日中は11月と思えないほどの暑さでしたが、日が傾くにつれて「足湯に入りたい」という方が増えてきました。
「あたたか~い」「気持ちいいね」と笑いあいながら、湯道部の部員とコミュニケーションを取る「入浴者」の方たち。心まで温まったのではないでしょうか。
地域貢献への思い
京都芸術大学の「加子母木匠塾」と「湯道部」が今回の西成のイベントに参加した背景には、地元出身の田城照兜さん(建築・インテリア・環境デザインコース/4年)の存在があります。
田城さんは、木匠塾の副総幹事と湯道部の部長を務める傍ら、地元である西成を拠点としたアートプロジェクト「ちょちょまうヴァナキュラー」の事務局でアルバイトをしています。西成への深い思いと大学での学びを地元に還元したいという思いから、今回の参加が実現しました。
また、「野点」のサポートスタッフとして参加していた是枝菜子さん(アートプロデュースコース/2年)は「こんなふうに色んな人が来て楽しめるイベントはなかなかない。じんじんさんの『境界を壊す』力が体現されているのでは」と語りました。
今回のイベントを通じて、学生たちの情熱と地域の温かさが会場を包み込み、新しいつながりが自然と生まれていました。次回もまた、このような素晴らしい出会いが広がりますように!
*妄想屋台:「魅力の予感」を路上に持ち出した時の「風景(そこでおこる・ある・もの・こと・すべて)」総体を想像し、それを風呂敷一枚、身一つででも具体化して現実に着地させてみること
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