REPORT2024.02.07

京都

【京都銭湯だよりby 湯道部】 古きを守り、新しきを入れる――鴨川湯

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  • 京都芸術大学 広報課

湯道部について

 いま、銭湯が減少傾向にあるのは、ご存知でしょうか。銭湯全盛期だった1968年(昭和43年)の17,999軒以来どんどんとその数を減らし、2023年(令和5年)時点では1,755軒とおよそ10分の1まで減っています。その要因は、利用者の減少や後継者がおらず廃業を決意するケースなどさまざまです。2018年(平成30年)にはサウナブームが起こり、銭湯にも注目が集まっていますが、その数は増えることなく今も減り続けています。
 わたしたち湯道(ゆどう)部は、日本の入浴文化を新しい「道」とする部活動です。京都の銭湯をめぐりSNSでレポートすることで、銭湯の魅力を伝える活動などを行っています。瓜生通信では、銭湯を経営されている方の想いやこだわりなどを知ってもらうことで、銭湯を訪れるきっかけになればと願っています。

ようこそ鴨川湯へ

 京都府京都市左京区、賀茂川の近く、植物園前のバス停を降りてすぐの裏路地に入ると「鴨川湯」の看板が見えてくる。1926年(大正15年)創業の歴史ある銭湯だったが、2022年(令和4年)9月に設備の老朽化と物価上昇により一度閉鎖された。しかし、常連客と地元住民の声援を受け、2023年(令和5年)の7月に再オープン。前のオーナーから遠藤さくらさん、丹羽悠貴さんの2人が経営を引き継ぎ、店長となった。今回は遠藤さんにお話を伺った。

 遠藤さんと丹羽さんは『銭湯を日本から消さない』をモットーに、銭湯の事業継承に取り組む「ゆとなみ社」の社員。ゆとなみ社はこれまで「サウナの梅湯」や「源湯」など廃業寸前の銭湯の経営を引き継ぎ、復活させてきた。2人が店長になった想いを伺った。「たまたまこの鴨川湯が廃業するのを知り、ここが好きだったので2人で手を挙げました。」

左が丹羽悠貴さん、右が遠藤さくらさん。この柱は改装前からあるもの。


昔から続く景色
 

 内装は、靴箱や脱衣所のロッカー、浴槽など、当時の鴨川湯にあったものをそのままにしている部分が多く、古いからこその魅力がある。「この場所で新しく銭湯をやりたいわけじゃないし、お風呂にただ入れる場所を作りたいわけでもないんです。鴨川湯がもつ空気感をそのまま続けていきたいという想いが一番だったので、お風呂は変えなかったんです」
 

浴場のタイルや脱衣所のロッカーなども、改装前のものをそのまま使用。
古くからの常連さんが、変わらない空気感で銭湯を楽しめるように工夫がされている。

 そう言ったあと、遠藤さんは、少し悲しそうな顔をして番台や玄関がある方に目を向け「本当はここも変えたくなかった」とつぶやいた。
 もともとの鴨川湯の出入り口は男湯と女湯と2つに分けられていた。しかし、改修後は出入口を1つだけにし、扉も透明な大きなガラス窓に変え、その隣にカウンター式の番台を設置した。「番台形式のままの方が昔から続く景色で、馴染みのあるお客さんにとっては落ち着く空間だったとは思うんですけど。ロビーを窓際にすることで通りがかりの人に顔を合わせられる。おやすみなさいって言って帰る人を見送れる。番台に立ってる人が外から見えることで、銭湯に一歩入るハードルが下がるのではという狙いがあります」

 

外からでも中の雰囲気を見ることができ、はじめての人でも気軽に入れるような工夫がされている。
おしゃれな鴨川湯グッズも。

 このように、鴨川湯では比較的若い世代や銭湯を利用したことがない人たちのためにもさまざまな工夫を凝らしている。脱衣所とロビーを隔てる壁は天井まで伸ばす予定だったが、閉塞感を与えないように上部分をガラスに変えたり、初めて来るお客さんに楽しんでもらえるよう、おしゃれなグッズを入り口近くに置いたりしている。
 こだわりについて、「古いものをうまいこと、よく見せるかっていうのがめっちゃ難しいなと思います」と遠藤さんは話した。新しいお客さんにスポットを当てつつも、元々あったものを再利用したり、浴槽や脱衣所をそのままにしたりするのは「昔から来ている人も落ち着ける空間としてあり続けてほしい」という遠藤さんの想いがあるからなのだろう。

日常生活に銭湯を

 そんな鴨川湯が目指す将来像は何なのだろうか。「生活の一部に銭湯があるっていう暮らしをみんながしてくれたらとっても嬉しいし、楽しいなって思います。そういう場所になりたい」家風呂の普及により生活の一部であった銭湯は失われつつある。この現状を食い止めるため遠藤さんたちは、鴨川湯を再開させた。「カフェや喫茶店、夜なら飲み屋やクラブなど若い人の遊び場の1つに銭湯が入ってほしい。そんな感じで利用してほしいなって」
 昔から来ているお客さんも新しいお客さんも大切にする鴨川湯店長の遠藤さんは、湯のように熱い信念をもった、銭湯好きな女性だった。
 

最後に

 湯道部は湯道初代家元の小山薫堂副学長を顧問に2023年(令和5年)2月から活動を始め、20軒以上の銭湯に行きました。例えば、左京区にある雲母湯や上京区にある松葉湯、下京区にある五香湯など、さまざまな銭湯に行っているので気になる方は、ぜひこちらのQRコードを読み込んで湯道部の活動を覗いてみてください。

湯道部の活動記録

https://www.instagram.com/yudo_association/

湯道とはなにか?

https://yu-do.jp/

  

参考ページ

https://www.zenyoku.1010.or.jp/changes/

 

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