COLUMN2024.07.29

京都教育

ミクロの世界の芸術

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  • 京都芸術大学 広報課

みなさんは顕微鏡を覗いたことがどれくらいありますか。また、その体験はどのようなものだったでしょうか。多くは小学校や中学校で簡単に使い方を習って使ってみたは良いもののなんだかよくわからないままに曖昧に過ぎていったのではないでしょうか。私の場合はまさにそんな感じでした。それがいつのまにか趣味で顕微鏡写真を撮るようになっているので人生は予想できないものです。世界はそのままでも十分に広いのですが、小さなものを拡大して見ることができるようになるとさらに広大に感じられるようになります。望遠鏡で宇宙を身近に感じるのもまた世界の拡張ですが、ミクロの世界は実際に手に取れるところに存在しているところが身近に感じさせてくれるので私は気に入っています。
写真は私が撮影したゾウムシという昆虫一種の体の表面に貼りついている鱗片です。この写真の長辺がだいたい0.5mm程度です。顕微鏡で観察できる限界近くまで拡大して撮影していますが、1枚の鱗片の中にも細かく異なった色の領域があることがわかります。この色の違う領域はもはや顕微鏡でもしっかりとは観察できないさらに小さな構造に違いがあるために、領域ごとの色の違いが出ています。このように1mmにも満たない世界にさらに小さな世界が詰まっており、もっと小さな世界がさらにその中にあり、我々はその一部を顕微鏡で見ることができています。
自然の中には我々が美しいと感じることのできるものがたくさんあります。それらの中から何かに着目して選んで切り取ってきて、美しさを誰かと共有することを目指せば芸術になり、その仕組みについて知ることを目指せば自然科学になるのだと思っています。普段意識している身の回りのものから少し意識を外に移して、少し遠くに景色として見えるもの、小さくて普段はあまりしっかり見ていないものなどに注目してみるだけで、いつもと同じ世界も新鮮な発見をもたらしてくれるかもしれません。

 

リベラルアーツセンター 中瀬悠太

出典:『雲母』芸術時間 2024年夏号

 

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