REPORT2023.12.06

新たな10年へ向けて - 芸術教養学科10周年イベントレポート

edited by
  • 上村 裕香

冬の訪れを感じるこの頃、2023年11月18日(土)、京都・瓜生山キャンパスのギャルリ・オーブにて、通信教育部 芸術教養学科10周年記念イベントが開催されました。
通信教育部 芸術教養学科は完全オンラインでどこでも学べるのが特徴。当日は全国各地から150人以上の在学生・卒業生が集い、旧交を温めました。

同じ問いをもつ仲間と学びつづける楽しさ

 

はじめに、吉川左紀子学長が登壇し開会の挨拶を述べました。「通信教育部 芸術教養学科10周年を迎える本年は、通信教育部が開設されて25周年の年でもあります」と通信教育部の歴史を振り返り、「わたしは、通信教育部の学びのコアにあるのは、学び続ける楽しさだと思っています。芸術教養学科では『ひとりで問題を考え、同じ問いを考えている仲間とディスカッションをして、それからもう一度ひとりで問いに向き合う』という協働学習のあり方を、みなさんも実践されてきたことと思います。今日は、いまみなさんが学びたいと思っていることや今後の学びの計画を、互いにお話しする時間にしていただければと思います」と話しました。

 

 

次に登壇した通信教育部 石神裕之学部長は、「わたしは2014年に着任しまして、その発展の様子を目の当たりにして参りました。芸術教養学科の素晴らしいところは、教職員と学生、そして学生同士においても、そのつながりが密であるところだと思っています」と所感を述べ、2013年度の入学生から2023年度の入学生まで参加している10周年イベントについて「通信教育部の10年がこの場を通じて大きくつながったように思います。『手のひら芸大』のウェブ上だけで学ぶ仕組みは、これまで通信教育部をつくってこられた多くの先生方が立ち上げたものです。今後も、新しいテキストや教材の動画を作成し、次の10年も新たな学びを作り上げていきたいと思います」と今後の展望を語りました。

自由芸術を広げるという旅

 

その後、プログラムは芸術教養学科 チーフラーニングオフィサーの早川克美教授による「芸術教養学科10年の軌跡」についての基調講演に移ります。

早川教授は学生たちとの再会をよろこび、「10年前、わたしたちはこの芸術教養学科という新たな旅をはじめました。上村博教授がおっしゃっていた、自由芸術を広げるという旅です。教員はもちろん、学生のみなさんにとっても、eラーニングで大学芸術を学ぶコースというのは前例がなく、大きな挑戦だったと思います。2012年、新学科設立準備室に集められた4名の教員と学科のカリキュラムをつくっていくときには、芸術教養講義の10科目を単にデザインと伝統文化の2分野にわけるのではなく、有機的につなげる軸を設定したいと考えました。それが、思考、時間、空間、編集、協働の5つのテーマです。伝統を再考し、あたりまえを疑い、無意識を意識化する。これを起点にカリキュラムを考えていきました」と芸術教養学科設立時の思いを語りました。

「学科設立当初から、芸術教養学科ではairUコミュニティという学科専用SNSで交流を育んできました。完全オンラインの学科で学生のみなさんとどうコミュニケーションをとるのかという課題に、わたしたちは学習環境デザインの分野からアプローチしました」

学生と教員をつないだairUコミュニティ(芸術教養学科専用SNS)は、2022年度から運用が開始された通信教育部共通のairUコミュニティに完全移行する予定(2024年4月)
通信教育部共通のairUコミュニティ

「レイヴとウェンガーが唱えた『正統的周辺参加論』を基礎として、共同体こそが学びの場であると考えました。新しいことを学ぶときに最初から専門的な領域に飛びこむのではなく、経験豊富なメンターを見て真似して、徐々にコミュニティに溶けこんでいく。このコミュニティの中心を担うのが卒業生学習コーチの存在です。在学生と同じ経験を共有し、同じ挑戦をしてきた卒業生だからこそ、在学生に対してより的確なサポートができます」と、これまでの在学生・卒業生を含めた大きなコミュニティ設計について振り返り、話は「芸術教養学科の今後の10年」に移りました。

盛り上がる会場

これまでの芸術教養学科の10年

 

続いて、「これまでの10年、これからの10年」をテーマに、通信教育部 宮信明准教授がファシリテーターとなりパネルディスカッションが行われました。参加した講師陣は通信教育部 下村泰史学科長、早川克美教授、加藤志織准教授、岩元宏輔准教授、三木京志講師。

パネルディスカッションは「この10年で一番笑ったことは?」「この10年で一番悲しかったことは?」という芸術教養学科での思い出を振り返る質問から、「子どものころの将来の夢は?」など、講師陣からざっくばらんな話を引き出す質問まで、幅広い問いが投げかけられ、和気藹々とした雰囲気で進んでいきました。

 

宮准教授
下村学科長

宮准教授からの最初の質問は「この10年でこれ以上はなかったという失敗は?」。
この質問に、下村学科長は「失敗は多いんですが、忘れてる失敗と、失敗したと思ったけど失敗ではなくなってるものがあるじゃないですか。失敗したと思ったことでいえば、芸術教養学科に配属されて仕事に取り組みはじめたときは『なんでこんなところ来ちゃったんだろう』って思いました(笑) いままで専門分野を教えてきたのと感覚が大きくちがった。でも、芸術教養学科の軸が定まっていったとき、自分が取り組んできたアートプロジェクトやランドスケープの仕事を捉え直して、芸術教養学科の学びに落とし込むことができた。だから、これは失敗ではなくなったんですね」と話しました。

岩元准教授
三木講師

続いての「この10年で一番印象に残っている思い出は?」という質問には、かつて東京と関西で隔月開催していた学習相談会・フライングカフェや、フィールドワークや野外調査などを共同で行うエクスカーション、早川教授がYoutubeで配信するコミュニティ通信「芸術教養たいむ」など、様々な取り組みの名前が挙がりました。

これからの芸術教養学科の10年

加藤准教授

ディスカッションの最後の問いは「これからの10年、芸術教養学科の展望は?」。
加藤准教授は昨今AIが教育に影響を与えていることに触れ、「そうした先進的な教育の中でも、早川教授が中心となってつくってこられた芸術教養学科の形は変えてほしくないです。教員と学生が、学生と学生が、どんな形であれ直接コミュニケーションをとることは、教育の中に確保し、わたしも関わっていきたいと思っています」と語りました。

同様の質問に、下村学科長は「いま、どんどん新しい先生が学科に着任されて、これまでと変わってくる部分もあると思うんです。その中で変えちゃいけない部分と変わっていく部分とが必ずある。芸術教養学科の中にも、わたしも知らない良さがあると思うんです。それを学生のみなさんと一緒に探し出していきたいですね」と学生とともに歩んでいく今後の10年の展望を述べました。

卒業後も学んだことを活かして

 

イベントの後半は、卒業生の制作・研究等についての報告会と、下村学科長による芸教音頭の発表、盆踊り大会が開催されました。
卒業生報告会では、様々な年度に入学した卒業生たちが登壇し、いまの学びや近況について発表しました。「早川先生にめんどうくさいと言われた一期生です!」と会場の笑いを誘ったり、思い出話に花を咲かせたりする場面も。

それぞれの入学年度のメンバーと交流を継続している卒業生も多く、現在でも定期的に学習会を開いている卒業生もいるのだとか。2019年春に卒業した細谷リノさんは卒業後の現在も、パート勤務のかたわらアートボランティアの活動をしており、「作品鑑賞プログラムでボランティアガイドスタッフを務めるときには、芸術教養学科で学んだ美術史の基礎や、知識を得る方法が役に立っている」と、芸術教養学科で学んだ内容が現在の生活にも生かされていると語りました。

さて、イベントのラストを飾るのは下村学科長による「芸教音頭」の発表と盆踊り大会です。「芸教音頭」の歌詞は卒業生および在学生から募集し、下村学科長がまとめたもの。江州音頭のノウハウを活用しているといいます。

イベントの参加者全員が立ち上がり、中央に並べられた椅子をぐるりと囲むように円形に並びます。いつのまにか法被を着ている先生方も参加者の列に混ざり、会場の全員で、下村学科長の朗々と歌いあげる「芸教音頭」に合わせて盆踊りに興じました。

 

芸教音頭歌詞(一部)


なりたかった 夢かなえ
手のひら大学 入ったが
右を向いても 左を見ても
聞いたことない ことばかり
ズームだウエブだ 得手不得手
なれるしかない 入った限り
いつの間にやら ぼやける文字に
拡大鏡で 本読むと
がんばれの声 聞こえます
ソリャー、ヨイトヨイトマッカドッコイサノセ

 

イベント終了後は、卒業生と在学生入り乱れての懇親会が開催され、あちこちで記念撮影が行われていました。久々に会った同期と旧交を温めあう姿も。笑顔のあふれる、すばらしいイベントになりました。

また、当日は会場の壁面に約60枚にも及ぶ、これまでの芸術教養学科の卒業研究タイトルを一覧にしたポスターと、各入学年度の学生・教職員の写真が貼られていました。
「芸術教養学科の思い出」と題され、様々なイベントや授業の思い出がつづられたポスターには、当日イベントに参加した卒業生からコメントが書き込まれ、ここでも交流が生まれていました。

芸術教養学科のこれまでの10年を振り返り、これからの10年を考える、よい機会になったのではないでしょうか。また新たな10年へ向けて、進んでいきましょう。

 

(文:上村裕香)
(写真:塩見嘉宏)

 

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  • 上村 裕香Yuuka Kamimura

    2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学文芸表現学科2020年度入学。

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