REPORT2023.08.31

文芸

瓜生山オールスタッフで編集!―京都芸術大学前学長・尾池和夫先生著作『瓜生山歳時記』が刊行されました―

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  • 京都芸術大学 広報課

京都芸術大学 文芸表現学科 社会実装科目「文芸と社会Ⅴ」は、学生が視て経験した活動や作品をWEBマガジン「瓜生通信」に大学広報記事として執筆するエディター・ライターの授業です。

本授業を受講した学生による記事を「文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信」と題し、みなさまにお届けします。

(取材·文:文芸表現学科 3年 石田花梨)

 

本学広報課が運営するWEBマガジン「瓜生通信」にて、2016年9月から2021年3月まで連載されていた「瓜生山歳時記」が、2023年4月1日に刊行されました。出版元は、京都芸術大学出版局藝術学舎で、メタ・ブレーンにて発売されました。著者は、本学の前学長で、地球科学者・俳人の尾池和夫先生。写真は、本学の卒業生の写真家、高橋保世さん。デザインは同じく本学の卒業生のデザイナー、中島佳那子さん。編集者は、本学文芸表現学科の教員の中村純先生。中村純先生のゼミの学生も編集に携わりました。推薦文は、本学学長の吉川左紀子先生が執筆しました。
「歳時記」とは、俳句の季題を分類して、解説を加え、例句を載せた書物のことです。
『瓜生山歳時記』では、尾池先生の俳句とエッセイとともに瓜生山の春夏秋冬を感じることができます。

『瓜生山歳時記』のもくじ。(提供・中島佳那子さん)

瓜生山は京都府京都市左京区にある山で、本学は瓜生山の斜面に建てられています。
『瓜生山歳時記』では、春の梅や桜、夏の躑躅(ツツジ)や紅花、秋の甘藷(さつまいも)、冬の桜紅葉など、美しい写真と共に地球科学者である尾池先生の目を通した瓜生山の大自然が記録されています。他にも、本学のプロジェクトの一環である、瓜生山ねぶたなどの行事や、冬限定で学内で販売されるおでんのことなど、学内での日常も綴られています。
毎週瓜生山キャンパスに通っている私も知らない大自然が瓜生山には広がっています。
ぜひ、みなさんも『瓜生山歳時記』で、瓜生山の自然を味わってみてください。

『瓜生山歳時記』34、35ページ。春のはじまりを実感するヒガンザクラの木の芽がかわいらしい。(提供・中島佳那子さん)

人との繋がりでできた『瓜生山歳時記』

冒頭でも触れたように、『瓜生山歳時記』は本学の関係者が中心となってつくりあげられました。
『瓜生山歳時記』は、本学の学長であった尾池和夫先生が、2016年から2021年まで瓜生山学園の活動を紹介する記事として、本学のWEBマガジン「瓜生通信」にて連載していたものでした。写真家の高橋保世さんも学生時代から記事の写真の撮影に携わっていました。
そして、今回『瓜生山歳時記』を書籍化するにあたって、尾池和夫先生と中村純先生が本学の在学生、卒業生の力を信じてくださり、オール瓜生山スタッフでの制作という形になりました。
中村純先生に声をかけられ、編集に携わることになったのは、文芸表現学科4回生(当時3回生)の岡知里さん、平尾美優さん、松村昂樹さん。
三人が行った主な編集作業は、WEB記事の「瓜生山歳時記」を年代順に並べることや、記事の中からどの写真を書籍に載せるかなどの選定です。
今回は、『瓜生山歳時記』の編集に携わった学生三人にお話をうかがってきました。
『瓜生山歳時記』の編集の裏側の部分を少しみてみましょう。

右から岡知里さん、平尾美優さん、松村昂樹さん。背景には『瓜生山歳時記』にも紹介された躑躅が美しい

編集の難しさと楽しさ

『瓜生山歳時記』の編集に携わってみて、はじめに感じたのは編集のむずかしさだったといいます。
大変だった編集作業は、WEB記事の「瓜生山歳時記」の文章をチェックすること。例えば、WEB記事の方で「昨年」と記載されていても、それは記事が書かれた年の昨年なので、西暦に切り替えなければいけません。ほかにも、祭りなどの行事のことが記事に書かれていたら、ほんとうにその日に祭りがおこなわれていたのかなど、細かいところまで確認しなければなりません。見落としがないように常に気を張っていなければならないのが、編集作業の地道で難しいところでもあります。
しかし、大変なだけではなかったと三人は語ります。やっている作業自体は地道で大変ですが、やっている実感は楽しみながらやっていたそうです。気づけば作業にのめりこんでいて、その中でのやりがいは楽しさへとつながっていったといいます。

写真選びも編集

編集と聞くと、文字の構成や校閲の作業を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。じつは書籍に載せる写真のことも考えるのも、編集なのです。
学生たちはWEB記事の文章のチェックの他に、写真選びにも携わりました。
WEB記事のほうに写真が十枚載っていると、十枚全部を書籍に載せられるわけではないので、どの写真を載せるのか選定しなければいけません。どれも美しい写真ばかりで選ぶのが大変だったそうです。
どの写真が一番映えるのか、どの写真を大きく載せるのか、デザイナーの中島佳那子さんと話し合って決めます。

『瓜生山歳時記』90、91ページ。ねぶたの写真が2ページにわたって大きく載せられていて、迫力がある。(提供・中島佳那子さん)

編集者は、デザインのことも考えなければいけません。自分たちがデザインしたことがそのまま印刷されて本になるので、ミスできない責任の重みを感じたといいます。学生たちは今回デザインにも関わって、デザインという仕事の視野が広がったといいます。
今回学生たちが携わったのは構成の作業と、写真の選定でしたが、編集という仕事にはほかにも取材などさまざまな作業があります。この『瓜生山歳時記』での編集の作業に関わってみて、編集はとても根気の必要な仕事であることをじかに感じたといいます。

仕上がった本をみて

『瓜生山歳時記』の書籍(撮影・石田花梨)

学生たちが原稿を整理して入稿した後は、中村純先生が編集のアンカーを引き継ぎます。
自分たちの作業が終わったときは、あまり編集に携わったという実感はなかったといいます。しかし、実際にできあがった本をみて、自分たちが携わったという実物があることに感動したそうです。今でも本屋さんや通販サイトで販売されているのをみると、嬉しさがこみあげてくるのだとか。
『瓜生山歳時記』の編集後記では、学生たちが自身で考えた言葉で、編集に携わった感想や『瓜生山歳時記』の魅力が記載されています。書籍になったとき、自分たちの言葉が本に載っているのを見て、自分たちが携わったものが世に発信されている喜びを感じたといいます。
編集の作業をしているときは、この本を手にとった人が瓜生山の良さを感じてくれるように頑張って読者に届けたいという気持ちで取り組んでいたそうです。それが本という形になって実際に読者に届くという経験は今までにない感動でした。

チャンスに飛び込むということ

今回、『瓜生山歳時記』の編集に携わった岡さん、平尾さん、松村さんは、中村純先生から機会をいただいて、「やりたいです」と、チャンスに飛び込みました。このチャンスの中に飛び込んだからこそできた経験や、学びがありました。
最後に、三人から『瓜生山歳時記』の編集に携わった感想をお聞きしました。

(松村さん)編集作業を通して、そこで出会った人との繋がりは大事にしたいなと思いました。この編集作業を通して、一番思ったことですね。

(岡さん)編集は自分の知らないことを知ることができる機会で、『瓜生山歳時記』は俳句の本なんですけど、俳句に今まで触れて来ていないから、俳句の本をちょっと読んでみたり、尾池先生の本読んでみたりとか。あと『瓜生山歳時記』を読んで、季語がたくさんあることを知りました。ぜんぜん知らなかったことを知ることができるというのはすごいことだと思います。こういう機会がなかったら知らなかっただろうし、知ることができてよかったなって思っています。

(平尾さん)『瓜生山歳時記』の編集は、中村純先生から機会をいただいて、自分から「やります!」とその中に飛び込みました。その結果、たくさんの経験ができました。就職活動の中で、面接官の方と文字直しの話で盛り上がったり、そういったところで経験が活かされました。だから、どの学年でもこういった機会があって自ら飛び込んでいけたら、新しい経験ができるんじゃないかなと、感じました。

 

石田花梨


2002年生まれ。京都芸術大学文芸表現学科2021年度入学。大学では主に小説を書いている。妖怪について研究するのが好き。
妖怪について書いた記事はこちらから

今を生きる妖怪たち ―大将軍商店街から見る妖怪の可能性― 文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信 | 瓜生通信 (kyoto-art.ac.jp)

 

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