REPORT2022.04.21

アート

小田急線新宿駅6番ホームに卒業生の巨大作品が。― 新宿駅アートプロジェクト

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  • 京都芸術大学 広報課

一日あたり約350万人が利用するという、世界一の乗降客数を誇る新宿駅。その小田急線新宿駅6番ホームの壁面電飾看板に卒業生2名の作品が登場しました。一面 1,450mm×2,500mm もの巨大な看板は迫力満点。線路を挟んだ反対側の5番ホームからじっくりと見ることができます。

こちらは「感性の開放と、鑑賞の自由を。」をミッションに据えた「PARK」というプロジェクト。「創ると観るの間に生まれる何か」をコンセプトに、駅や施設の空間を活用し、若いアーティストが想いのこもった作品を自由に表現・発信するアクションだそう。日々何気なく通り過ぎる場所・空間がアートを身近に楽しんでいただくことができるリアルなスペースとなることを目指しているのだと言います。「PARK(公園)」には、さまざまな遊具があり、多様な過ごし方ができ、訪れるシチュエーションなどによって見える景色は無数にあります。そんな意味が「PARK」に込められているのだそう。ロゴをよく見ると「ART」の文字が見えてきます。

 

プロジェクトの第一弾として始まったのが、小田急線新宿駅6番ホームでの展示。計8名のアーティストの作品を5月6日(金)まで展示しています。選出された本学の卒業生は、川口春瑠さんと平等菜々理さんの2名です。

 

川口春瑠さん
カテゴライズへの違和感 ー「らしさ」の基準について考察する

情報デザイン学科の卒業生 川口春瑠さんの作品は、卒業展でコース特別賞を受賞した作品で、人間館入り口に展示されていましたので、覚えている方もいらっしゃるはず。背が高く体格もしっかりしていることなどの身体的特徴に対して、少しネガティブに感じていた川口さん。女性「らしさ」というカテゴライズから抜け出すために、21人の女性が抱える身体的なコンプレックスについて調べ、撮影した作品です。
身体的に表面化している「らしさ」というカテゴライズを全面的に否定して「らしさってこうあるべきだよね」と安易に帰結せず、あくまで考察に留め、「グラデーションの中に自分がいる」と話します。

卒業展での展示風景。

 

21人の「女性」に対し、彼女たちが抱えているコンプレックスとそれが生まれた経緯についてヒアリングを行った。そして、私の視点から彼女たちの美しいと感じる身体に焦点を当てて撮影を行っている。この作品は、生まれ持って与えられた女性の身体と、それに伴う社会的に構築された「らしさ」へと拘束されている自分自身を解放するためのプロセスである。

 

 

平等菜々理さん
Time and , Flowers and people

美術工芸学科 写真・映像コース卒業生の平等菜々理さんは、枯れゆく花の写真作品で、卒業展では奨励賞を受賞されました。写真自体を劣化させることで「目に映ることのない時間の経過と物質の瞬間の状態」を表現しています。

学科長の竹内万里子先生は、こう評します。「花ほど人間によって都合よく利用されてきたモチーフもない。それゆえの表象の困難を承知しつつも、花を美の象徴としての安易な消費から救い出し、時間の経過による変化とともに肯定しようとしたこの作品は、その果敢さだけではなく繊細さにおいて際立っている。そこから投げかけられる問いは、花という領域を超え、美の表象をめぐるより普遍的な響きを帯びている」。

卒業展での展示風景。

 

花は身近な存在であるがゆえに、人々は一般的な関心しかもたず、「綺麗」「力強い」「儚い」といった一般的な感想として消化される。私はそこに疑問を持っていた。実際には瞬間の状態ではなく、時間の経過と物質がもたらす変化の過程こそが重要であると考えるからだ。この作品では、写真を劣化させ、目に映ることのない時間の経過と物質の瞬間の状態、異なる二つの時間を共存させ、花の本質を模索することを目的としている。

 

「PARK」プロジェクトは今回が第一弾。その場所は駅のプラットホームでしたが、今後もさまざまな「何気なく通り過ぎる場所・空間」にアート作品が展開されていくことでしょう。若いアーティストたちの発表の場の創出に本学も積極的に支援して参りたいと思います。

 

『PARK』~創ると観るの間に生まれる何か~

期間 2022年3月31日(木)~5月6日(金)
場所 小田急線新宿駅 6番ホーム壁面
主催 株式会社小田急エージェンシー、小田急電鉄株式会社
制作協力 富士フイルムイメージングシステムズ株式会社

https://note.com/park_art

 

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