2022年4月4日(月)、暖かな春の日差しの中、通学課程の入学式が、新型コロナウイルス感染症対策を講じつつ挙行されました。昨年は13学科を2部にわけての開催でしたが、今年は新入生が勢ぞろい。また例年、入学式や卒業式は教職員全員で新入生をお迎えしていますが、感染拡大防止のため、教職員の列席は式典やその後の新入生ガイダンス担当者のみとし、保護者の方は、YouTubeLIVE配信での視聴という形になりました。
『京都文藝復興』朗読。
開式の辞に続き、まずは本学の理念『京都文藝復興』を松平定知教授が朗読します。
吉川左紀子学長から、新入生の皆さんへ。
桜が咲く、瓜生山の麓にあるキャンパスで最も気持ちの良い季節に新入生をお迎えできたことを喜び「大学の中に流れる春の空気をいっぱいに吸い込んで新しい大学生活をスタートしてほしい」と話しつつ、混迷を深めるウクライナ情勢について、本学の理念『京都文藝復興』を交え、式辞を述べました。
「社会の情勢は刻々と変化しています。ユーラシア大陸の東の端に住む私たちから見ると、青天の霹靂、突如始まったかに見えるウクライナの戦禍を思うと、『京都文藝復興』にある次の文章、『いまや、世代や人種、国境を超えて、心あるすべての人々と共に、真実を求め、理想を語り合い、希望を育む土壌となるべき、新たな学園像をこそ、模索しなければならない』という文章は、祈りにも似たメッセージのように感じられます」。
『京都文藝復興』
https://www.kyoto-art.ac.jp/info/about/philosophy/pdf/hukkou.pdf
「空気感を五感で感じ取ることのできる身体感覚が、芸術表現にとってとても重要です。デジタル表現の分野でも、あるいは舞台や映画のような身体全体を使った表現の分野でも同じだと思います。芸術の表現は目と手だけの作業から生まれるのではなくて、作者自身の身体全体の感覚を使った創造なんですね。見る人の心を打つ作品は、それが絵筆で描いたものでも、デジタル機器を駆使したものでも、不思議にこうした作者の感じている空気感が、作品の持つ熱量として表現されているように思います。それが見る人の心を動かす芸術の本質なのではないでしょうか」。
東北芸術工科大学 学長 中山ダイスケ先生の祝辞
通学課程の入学式には例年、姉妹校である東北芸術工科大学の学長からも祝辞を頂いています。学長の中山ダイスケ先生は、ネットで何でも学べる時代、こうしてわざわざ大勢が集って学ぶとはどういうことか。「皆さんはもう、嘘がつけない。丸裸ということ。自分を丸裸にしてさらけだして、集まって学ぶという物語が始まる」と語りかけました。
「物語のルールは2つ。ちゃんと自分から動くこと。そして他者を認めること。いろんな人と触れ合い、いろんな場所に行って、自分と違う人に会いまくってください。恋をしたり、別れたり、喧嘩したり、本気で泣いたり、死ぬほど笑ったりしてください」。
「食わず嫌いというのは一番の壁。どんなものでもいいから食べて、口に合わなければたくさん吐いて、あなたが今、定義している自分というものの感情のゲージが想像を超えて広がっていくことを感じてほしい。自ずと貴方の輪郭というものが見えてきます」。
「クリエイティブに生きるということは、意外と汗臭くて、唾液と涙にまみれてべちゃべちゃになっていくこと。感じないふりをしてスカしていることではないんです。もしもそんなぐちゃぐちゃな、贅沢な芸術大学での生活が送れたならば、この場所から卒業していく皆さんは、きっと世界の嘘や悲しみや、遠くで起こっている戦争の痛さ、そういうものをちゃんと見抜ける、そんなクリエーターに、大人になっているはずです」。
和太鼓「悳」による祝奏。
一打一打に想いが込められ、講堂に広がるその勇壮な音色は、体の芯まで響きます。時折、目を合わせながら楽しそうに演奏する姿が印象的で、素晴らしい演奏でした。
歓迎の辞。
続いて、在学生を代表し、映画学科俳優コース3年生の齊藤朋沙奈さんより、「歓迎の辞」が読まれました。
コロナ禍の始まった年に大学に入学した齋藤さんが、2年間の大学生活で体感したことを踏まえ、人との「出会い」や、失敗を恐れず何事にも「挑戦すること」の大切さを伝えました。
「同じ学科や学年の人との関わりだけでなく、他学科や他学年の人とも関わるようになると思います。その繋がりは、自分が成長するための気づきを多く生み出します。
私は、これまでの二年間の中で、リアルワークプロジェクトやクリエイティブワークショップ、学生会といった活動や授業を通して、誰かと協力して目標を達成していくことの楽しさや、自分の長所や短所を見つけることが出来ました。ぜひ皆さんも多くの人との出会いを大切にし、自分の成長の糧にしてください」。
「大学は社会に出ていく前に私たちが失敗することができる最後のチャンスです。失敗した経験は、今後成功を収めていくための材料にすることができます。実際に私は、学科内の活動や代議員の活動を通して、多くの失敗をし、同じ失敗を繰り返さないために分析をし、新たな目標を立て、また新たな一歩を踏み出すということを繰り返すことが成功への近道なのだと学びました。
皆さんに与えられた大学で過ごす時間には限りがあります。その限られた時間でいかに多くの事に挑戦するかが、皆さんの人生を良いものとする鍵と言えるでしょう。ぜひ学科を超えて多くのことに挑戦してください」。
入学の辞。
続いて、新入生代表からの「入学の辞」が読まれました。代表は、こども芸術学科こども芸術コースの佐藤葵さん。
芸術を学ぼうと思ったきっかけは、2019年に開催された「瀬戸内国際芸術祭」だったという佐藤さん。「芸術の魅力を発信しアートの力で社会を活気づける役割を果たしたい」と強く感じたと言います。
「私は将来、人々に芸術の面白さを伝え、芸術を通してこれからの社会を明るく変えたいという思いから芸術への道を志しました。(中略)自らも自分らしい表現方法で芸術の魅力を発信しアートの力で社会を活気づける役割を果たしたいと強く思いました。特にコロナや戦争、災害で暗くなりがちな社会において未来を担うこどもたちへのアプローチを積極的に行いたいと思っています。
この夢の実現のため、ここ京都芸術大学では芸術の専門的知識や技術だけでなく芸術を人々に深く伝えるための企画力や行動力を身につけ、作品を生み出す自分自身の個性を磨いていけるように努力します」。
大学での4年間が、皆さんの人生にとって素晴らしい時間となることを願っています。この度はご入学、誠におめでとうございます。真実を求め、理想を語り合い、希望を育む新たな学園をともに作り上げていきましょう。
(撮影:高橋保世)
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高橋 保世Yasuyo Takahashi
1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。