REPORT2022.03.30

デザイン

家具が生み出すコミュニケーション ― こどもとおとなのための新しい家具プロジェクト

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  • 京都芸術大学 広報課

「これまでにない新しい家具を、一緒につくりませんか?」

そうお声かけいただいたのは、大阪で家具製作をされている創作工房一志家具製作所の市川一志さん。市川さんは、主に木製品の家具を企画・製作しながら、イベントやワークショップにも積極的に参加しておられる、まさに家具のプロです。今回、学生と一緒に、これまでの固定観念にとらわれない、新しい家具を生み出したい!というお気持ちで、本学にお声かけくださいました。

一志家具製作所 市川一志さん

今回、このプロジェクトに取り組んでくれたのは、京都芸術大学 プロダクトデザイン学科でインテリアプロダクトのデザインを指導している大江孝明先生を担当教員に、プロダクトデザイン学科4年生の東実祝さん、中西颯生さん、3年生の松尾美初さん、西川圭太さん、2年生の堀川大喜さん、合計5名の学生たち。

人と道具の関係性を研究分野としている大江先生から、「こどもとおとなのための家具」を全体テーマとして設定いただき、家具を通して親子のコミュニケーションが生まれるような、一工夫加えた遊び心ある提案を行うことになりました。

まずは、今の家族の在り方や日々の暮らしの中で、こどもとおとな(親)が抱えている課題をリサーチしていきます。家庭環境、家族構成、起こりうる課題、ターゲットとするこどもの年齢層など、学生ならではの視点から、自分たちがチャレンジしたい分野を洗い出していきます。

アイデアをみんなと共有
ブレストを繰り返し、ブラッシュアップ

今回は “こどもとおとなの両方にアプローチする” という点が大切なポイントとなります。家具を介して、双方に働きかける仕組みをつくることで、コミュニケーションを生み出すきっかけになるのですね。

そして、もうひとつの大切なポイントは、“家具である” ということです。
“家具である”ためには、何か機能を携えたものでなくては成立しません。単なるこどもの遊び道具としてではなく、日常生活に溶け込み、おとなにとっても必要となる家具として、存在を息づかせるアイデアも必要です。

リサーチ期間を経て、いよいよ市川さんにプレゼンテーションです。
学生たちも、自分が考えたコンセプトやアイデアを初めて市川さんにお伝えするとあって、家具のプロの目にどのように映るのか、その反応にドキドキです!

リサーチに基づいたコンセプトをプレゼン
市川さんからも具体的なアドバイスをいただきます

市川さんからいただいたアドバイスを元に、次はコンセプトを実現するための具体的なデザイン案を考えていきます。試作を繰り返すことで課題や問題を浮き彫りにし、ブラッシュアップを重ねます。検証のために、こども芸術大学のこどもたちに実際に使ってもらった学生も!


その後も、市川さんと製作所の職人の方々へのプレゼンを重ね、多くのご意見をいただきながら、作品の精度を高めていきます。

原寸大の試作を作る学生も
職人さんも交えて、白熱した意見交換

こうして意見交換を重ね、学生たちと大江先生が渾身の想いを込めて提案した作品をご紹介します。それぞれがコンセプトに込めた想いと共にご覧ください。

「思春期を迎えたこどもと親のふれあいを増やすためのスツール」

 デザイン:堀川大喜

思春期のこどもがいる家庭では、親とこどもがコミュニケーションをとる機会が少なくなります。このスツールは、人が座った重さで、もう一人がもたれることができ、2人で使うことが期待されるスツールです。こどもが幼い頃から購入しておくことで、ずっと家に存在するものという安心感を持たせ、思春期を迎えた後も習慣的に使いたくなるような気持ちに。背中合わせでお互いの姿は見えませんが、存在を感じ合うことで最適な距離感を提供するスツールに仕上げました。

「こどもとおとなが収納を通して自然に交わることができる、扉や窓がついた収納棚」

 デザイン:松尾美初

こどもは遊んだおもちゃを放ったらかしにしがちです。そして、それを怒る親もストレスが溜まります。遊びの延長で自然と片付けができる棚があればよいのではと考え、そこから着想しました。
見せる収納としての機能を持たせ、棚のどこに何を片付けるのか、こどもがワクワクする工夫を凝らしました。棚は自由に組み合わせができる仕様とし、組み合わせ次第で扉や窓が繋がり、面白味とバリエーションが広がる仕組みで幾通りにも楽しめる構造になっています。

「親子そろって綺麗に楽しく使える作業テーブル」

 デザイン:西川圭太

こどもが遊んだ後の机は、ものが散乱しがちです。親はそれを怒って片付けさせたり、しまいには親が片づけたり…とストレスを感じてしまうこともしばしば。こどもが片付けられない原因としては、収納場所が離れているので面倒くさい、片付けが楽しくない、そもそも片付ける習慣がついていないなどが考えられます。親も片付ける時間がなかったり、片付けが苦手な人もいるでしょう。そこで、片付けが億劫にならないように机の下にボックスを配置し、こどもも親も手軽に楽しく片付けられる机をデザインしました。

 

「こどもにとっては遊び道具、おとなにとっては道具になる机」

 デザイン:東実祝

机の裏側にロープが貼られている構造で、こどもがアスレチックのように遊べる机を提案しました。動的なあそびが家の中で増えることで、こどもとおとなのふれあいや時間の共有が生まれることを想定しています。机のロープからおとなの足に移ってしがみついたり、おもちゃをロープに隠して遊んだり、こどもの行動に対しておとなが「なにしているの?」「どこいったの?」など、会話のきっかけが生まれることを期待しています。

「ちゃんと会話するための家具」

 デザイン:中西颯生

家では家事で忙しく、お互いがさまざまな作業に追われている…共働きの家庭が多くなった現代では、よく見る光景かもしれません。こどもが「放っておかれている」と感じる一番の要因は、コミュニケーション不足です。同じ家の中にいるのに、かまってもらえない、寄り添ってもらえないことは、こどもにとってストレスなのです。

そこで、家事をしている時間でも、親のそばにこどもの居場所を作ることで、きちんと会話する時間をつくれる家具を提案しました。座面が3つある仕様で、座ったり、登ったり、こどもの自由な使い方を活かします。

「こどもの作品と共に過ごすためのイス」

 デザイン:大江孝明

こどもが作ったものを飾るスペースを持つ家は少ないのではないでしょうか。行き場のない作品たちは、床に置かれたり、飾られることなく片付けられるかもしれません。このイスは後ろが棚のように出っ張っており、そのスペースにものを置くことができます。こどもが作ったもの以外でも、外で見つけたものや友達にもらったものなど、時々で大切だと感じるものを飾ることで、こどもの自由な視点を暮らしに取り入れ、共に過ごす時間と空間が生まれます。少し長い座面は背もたれと同等なので、通路の邪魔にならない設計となっています。

「家族が座る場所 と 収納場所を紐づけるイス」

 デザイン:大江孝明

お母さんが座るイスには、お人形をしまう。お父さんが座るイスには、お絵かき道具をしまう。それぞれの収納場所を決めることで、片付けを習慣づけるイスに仕上げました。

「お人形はお母さんのイスだから、お母さんが手伝おうね。」
「お絵かき道具はお父さんのイスだから、お父さんが手伝おうね。」

片付けがあまり好きではないこどもにも、そんな会話で片付けの動機付けになることを期待しています。

この作品の中から、製品化を視野に入れて選ばれた4作品が、一志家具製作所の職人さん達の手により、実寸大で制作していただけることに!一志家具製作所のみなさんが考えに考え抜き、東さん、中西さん、大江先生の4作品が選ばれました。

 

そして、完成した家具をお披露目する場として、学内成果展を開催。
学内併設カフェ横のスペースを展示場所としたその雰囲気は、周りから少し一線を画すような静観な佇まいで、それぞれの家具が持つ面白さが際立ち、大きな存在感を放つ展示空間となりました。

人間館1階カフェ横スペースにて
こども芸術大学でも特別に展示を実施

今回プロジェクトの指導教員を務め、ご自身もデザインを提案された大江先生からは、「家具製作の工房との連携はとても貴重な機会でした。極めて職人的にものづくりをしていますが、製造される商品は我々の生活に密着しているものであり、そのようなものづくりをしている企業は、そう多くはないです。今回の連携を通して、彼らの作ることへの拘りが学生へ伝わり、また彼らが作るものをデザインする為には、同等の情熱や信念がデザインに必要とされるという心構えが、学生に伝わったと思います。作品も素晴らしいものができましたが、先方が設定しているコストや作り易さのハードルがあるため、それを超えて今後の製品化されることを期待しています。」と振り返りました。

このプロジェクトには、今年度卒業する学生が2名参加してくれていました。この春から就職し、デザイナーとして社会に羽ばたいていく子達が、このプロジェクトでの学びや経験を活かしながら、躓いたときにはふと思い出してくれるプロジェクトになっていることを願っています。

展示会場でホッと一息

今後は製品化を視野に入れて、デザインの検討が進められるとのこと!
次の展開が楽しみなプロジェクトとなりました。今後の展開に乞うご期待です!

 

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