REPORT2022.02.27

建築

未来への共感と、多様な地域性。台湾の建築ビエンナーレが京都に。「實構築 2022 in 京都」

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  • 京都芸術大学 広報課

台湾の建築家16組を紹介する展覧会「實構築 in 京都 2022」が、本学ギャルリ・オーブにて始まりました。「實構築」とは、台湾で2年に1度開催されている建築のビエンナーレ。日本の建築家も多く招待されてきましたが、日本において台湾の建築家をこれだけ大勢紹介するのは初めての機会となるそう。

黃聲遠や林友寒、廖偉立などといった日本でも有名な建築家から、伊東豊雄と中村拓志に師事した方新樵、台湾建築評論の第一人者・王俊雄が推薦する若手の建築家まで、台湾建築の現在を紹介しています。

ご挨拶

台湾の建築家16組を紹介する「實構築 2022 in 京都」を開催します。

タイトルにある「實構築」は、台湾で2年に1度開催されている建築展・シンポジウムで、毎回、日本の建築家も多く招待されて、現代建築を巡る様々な議論がなされてきました。私も2018年に「實構築」に参加し、また翌年には教員交換で本学の協定校である實践大學で4か月間スタジオを持ち、多くの建築家と日々話す機会がありました。また彼らの作品を実際に見てまわって、私たちの間にある多くの共通点と、小さいけれど重要な違いを感じるようになりました。

私の世代以降の台湾の建築家には、モダニズムの影響やアメリカでの大学院経験など日本の建築家と共通する要素が多く、若い世代には日本のアニメで日本語を学び日本への留学経験のある建築家が多くいます。台湾で日本の建築が積極的に受け入れられてきたように、日本でも台湾の建築は、その多くの共通点から理解しやすいと感じています。反面、気候や政治の違い、日本統治という避けられない歴史があります。環境やジェンダーへの取組みは台湾が日本よりずっと先を進んでいます。建築が向き合わざるを得ない地域性とも言うべき、小さな違いが建築の中では思いがけない差異を生み出します。この展示を通して私たちは、同時代の台湾の建築作品の中に、未来への共感と、地域性への多様な記述の方法を見出せるのだと思っています。

「實構築 2022 in 京都」では、黃聲遠(Fieldoffice)やマイケル・リン(林友寒)、廖偉立など日本でも有名な建築家から、伊東豊雄と中村拓志に師事した方新樵、重機から建築まで多彩なスチールワークを制作してきた林聖峰、私と入れ替わりに教員交換で本学に5か月間滞在した蕭有志、そして台湾建築評論の第一人者・王俊雄が推薦する若手の建築家まで、台湾建築の現在を紹介します。

会場構成は、本学卒業生のクリエーター集団 New Domain がデザインと施工を担当し、35ミリの角材をPPテープで結束する軽やかなフレームが展開されています。メイングラフィックは本学情報デザイン学科の丸井栄二教授のデザインです。

開催にあたっては、ユニオン造形文化財団の助成のもと、学内の様々な協力と、台湾の多くの友人たち、特に蔣美喬の通訳と翻訳に助けられました。パンデミックにより二年越しの開催となりましたが、台湾の現在を感じる一助となれば幸いです。


城戸崎和佐(建築家・京都芸術大学 環境デザイン学科 教授)


出展者
方新樵(方尹萍建築設計)、林友寒(behet bondzio lin architekten/清水建築工房)、林柏陽(境衍設計)、林佩蓉(大林工作室)、林聖峰(嶼山工房)、沈庭增(沈庭增建築製作)、李文勝(李文勝建築師事務所)、吳聲明(十禾設計)、邱文傑(大涵建築師事務所)、梁豫漳+蔡大仁+吳明杰(禾磊建築)、張清華+郭英釗 (九典聯合建築師事務所)、張瑪龍+陳玉霖(張瑪龍陳玉霖聯合建築師事務所)、黃惠美+郭旭原(大尺設計+郭旭原聯合建築師事務所)、黄聲遠(田中央聯合建築師事務所)、廖偉立(立聯合建築師事務所)、蕭有志(大合設計)

もともと京都での「實構築」開催は2020年に予定されていました。ところが新型コロナウイルス感染症拡大のため中止となり、この度ようやく2年ごしでの念願の開催となりました。予定では作品紹介やシンポジウムなどの各種イベントの開催も企画されていましたが、残念ながら断念。そして建築家の皆さんに来日いただくことも難しい状況のため、建築模型などではなく「写真やドローイング」での展示となりました。

ご挨拶文にあるとおり、会場の空間デザインを担当したのは本学卒業生たちが参画する「NEW DOMAIN(ニュードメイン)」。京都を拠点に活動するデザインファームで、既存の領域を超え、新しい領域でのデザインを提供しており、例えば2018年に拡充された共通工房ウルトラファクトリーのフロアレイアウトや設備拡張、什器制作などを担当しました。

http://newdomain.jp/
 

今回は、写真などの平面のグラフィック展示ではありますが、35ミリの角材をPPテープで結束することで軽やかにフレームが組まれ、立体的な空間が生み出されています。

 

さて、主催・キュレーションを担当した城戸崎和佐先生より16組のうち4名の建築家について解説いただきましたので、ご紹介いたします。建築家のWebサイトも合わせてご覧いただくとその取り組みがよくわかるかと思います。

 

 

黃聲遠(田中央聯合建築師事務所)


台北から車で東へ一時間ほど、宜蘭(イーラン)で活躍する建築家。城戸崎先生によると、氏はいつも短パンにビーチサンダル姿。事務所に来る前に川を堰き止めたプールでひと泳ぎするのだそう。
海と山と田圃のある宜蘭で、アジアの気候と地形にマッチにした建築を作り続け、優しい人柄も相まって、世界中が注目する建築家です。
http://www.fieldoffice-architects.com

 

 

蕭有志(大合設計)


本学の協定校の台北にある實践大學で教鞭をとる蕭有志氏。2019年9月から2020年1月まで、教員交換で本学環境デザイン学科にお越しいただいていました。動いて、組み立てて、また移動する小さな建築をテーマに、可愛らしい建築を数多く作り続けています。
http://yuchih-hsiao.net/filter/2005/BIO

 

 

林聖峰(嶼山工房)


城戸崎先生曰く「スチールワークの天才」。台湾で開催している「實構築」の会場構成をはじめ、ベネチア・ビエンナーレでも見たことのない展示什器を展開しています。「實構築 2022 in 京都」では、IT関連の企業が集中し「台湾のシリコンバレー」と呼ばれる新竹市のバスターミナルの回廊や昨年竣工した波打つコンクリート屋根の市場などを展示しています。
https://www.facebook.com/AtelierOr/

 

 

林佩蓉(大林工作室)


今回参加している16組のうち最も若手の建築家で、城戸崎先生曰く「彼女のドローイングはとても新鮮」。2018年に行われた台北市立美術館の中庭でのインスタレーションが話題を集めました。その架構は「實構築 2018」で新竹市の公園に再建され、公園内の樹木との親和性と架構内の空中歩廊から見る景色の素晴らしい体験ができる場所となりました。「實構築 2022 in 京都」では2軒の住宅設計を展示しています。
https://www.xinmedia.com/article/151498

 

實構築 2022 in 京都

期間 2022年2月19日(土)〜3月6日(日)※月曜日休廊
会場 京都芸術大学 ギャルリ・オーブ
キュレーション 城戸崎和佐
キュレーション協力 王俊雄、蕭有志
デザイン 丸井栄二
会場構成 東那摘、川島航平/NEW DOMAIN
主催 城戸崎和佐
協力 京都芸術大学、實構築學會、a+tec實構築季刊、
實踐大學建築設計學系
協賛 ユニオン造形文化財団、清水工房、璞園建築團隊、忠泰集團
出展者 方新樵(方尹萍建築設計)、林友寒(behet bondzio lin architekten/清水建築工房)、林柏陽(境衍設計)、林佩蓉(大林工作室)、林聖峰(嶼山工房)、沈庭增(沈庭增建築製作)、李文勝(李文勝建築師事務所)、吳聲明(十禾設計)、邱文傑(大涵建築師事務所)、梁豫漳+蔡大仁+吳明杰(禾磊建築)、張清華+郭英釗 (九典聯合建築師事務所)、張瑪龍+陳玉霖(張瑪龍陳玉霖聯合建築師事務所)、黃惠美+郭旭原(大尺設計+郭旭原聯合建築師事務所)、黄聲遠(田中央聯合建築師事務所)、廖偉立(立聯合建築師事務所)、蕭有志(大合設計)

※学外の方は必ず事前予約をお願いいたします。
https://forms.gle/5qCwBJkBNufg7rr7A

 

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    連絡先: 075-791-9112
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

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