REPORT2021.12.17

ファッション

洋服から着物、着物から洋服へ。―「和裁と洋裁の循環」をテーマにした「Kimono Kirumono CYCLE PROJECT」

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  • 京都芸術大学 広報課

空間演出デザイン学科ファッションデザインコースの伊藤正浩先生とファッションブランド「01u10」(ゼロイチユーイチゼロ)の伊藤広宣さんによる共同プロジェクト「Kimono Kirumono CYCLE PROJECT」の展示会が、河原町今出川の Time Machine Goes Big Time にて2021年12月14日(火)から19日(日)まで開催されています。

和裁士「株式会社後藤和裁」協力のもと、和裁の技術を用いた「和裁と洋裁の循環」をテーマにした展示会です。ここでいう「循環(サイクル)」とは、“洋服” から “着物” へ、あるいは “着物” から “洋服” へとサイクルしていく服の提案ということ。着物はほどいて仕立て直すことができますが、リメイクではなく、あくまで「循環(サイクル)」させるという面白い着眼点です。

服が着物にサイクル可能ということで、洋服にしか興味がなかった人でも日本の伝統文化である着物への興味関心につながるのではないかと考えるとともに、「和裁」への関心を広げ、減少しつつある和裁士などの仕事を創出。そして、衣類の短サイクルな廃棄問題の解決方法のひとつを提案する試みでもあります。

Kimono Kirumono CYCLE PROJECT

私たちが今回提案する服は “洋服” から “着物”、“着物” から “洋服” へとサイクルしていく服です。この服には日本の伝統服である着物が大きく関係しています。着物はほどいて仕立て直すことができること、それを可能にする手縫いで縫製するという和裁の技術があることが特徴です。この2つがこのプロジェクトの鍵です。

SDGs という概念が提唱されてからアパレル業界でも環境への配慮に対し様々な取り組みが行われています。無駄なものを作らない仕組み作りの重要性は増してきています。着物の「リメイク」もその一つですが、リメイクではカバーできない部分があります。それは着物を縫う和裁士の仕事にならないということです。現状のままだと和裁士という職人の技術継承が困難になって消え行く可能性があると言われています。

このプロジェクトは、環境へ配慮した服作りの中で日本の伝統技術を守るための新しい仕事を創出するという新しい試みです。また、洋服にしか興味がなかった人でも服が着物にサイクル可能ということで着物文化への興味関心につながるきっかけになり得るのではないかと考えています。

和裁(株式会社後藤和裁)

 

ファッション業界が抱える環境・社会問題

「Kimono Kirumono CYCLE PROJECT」は、環境へ配慮した服作りの中で日本の伝統技術を守るための新しい仕事を創出するという新しい試みです。また、洋服にしか興味がなかった人でも服が着物にサイクル可能ということで、着物文化への興味関心につながるきっかけになるのではないかと考えているそうです。

ファッション業界では、原材料の調達から生地・衣服の製造、輸送、消費そして廃棄に至るまでそれぞれの段階で、多くの環境問題・社会問題を抱えています。服の製造工程におけるCO2排出や原料となる植物の栽培、特に綿花栽培では多くの化学肥料が使用され、土壌汚染も深刻な問題となっていると言います。また、生産過程での余った生地や端材の廃棄、コスト削減のための大量生産による余剰在庫も問題となっています。

そして消費する側としても、服の短サイクル・低価格化から着用期間が短く流行の終わりと共に大量に廃棄されてしまう服が非常に多く、ほとんどがリサイクルされず焼却・埋め立てされています。

ファッション業界では環境に配慮した取り組みとして「3R(スリーアール)」つまり、リデュース、リユース、リサイクルを元に各方面で様々な取り組みが行われています。ただ、例えばリサイクルコットンを使っていると謳いながらも大量生産をして余剰在庫を増やしてしまうというような状況もあるのです。

「目先のトレンドだけを追いかけ、とりあえずサスティナブル風な商品を製作するようなことはあってはいけませんし、長期的な視座に立って現状を考えることが必要です。
一番大切なことはリデュースの心構えであり、一人ひとりがモノを大切に長く使うことでゴミとして廃棄されるまでの期間を長くすることが重要です」。

 

長く着用することを前提とした「着物」のメリット

そこでプロジェクトが注目したのは「着物」。日本の伝統ある衣服である着物は、身分を問わず着用されてきたもので、生地は着尺・幅は共通で製作されており、体型を気にせず着用できる衣服です。また、針を斜めに入れたり、縫い目に等しくゆるみを入れていくことで遊びを作り生地にかかる負荷を逃すような工夫がされているのだそう。また、ミシン縫いのように生地に穴を空けないため、着物として仕上がっているものも糸を解いて布に戻すことができ、別の着物として仕立て直すこともできるそうです。

このように「手縫いの着物には多くのメリットがあり、長い間使い続けることが前提となっている」のだそう。

「手縫いの着物はほどいて別の着物として縫い直せることを前提にしています。この縫い直せる仕組みに洋服づくりを組み込むことによって “着物” と “洋服” へのサイクルが生み出せます。
着物や洋服のどちらかに飽きてしまっても仕立て直すことで違う服として生まれ変わり、着られるということは『長く着られる服づくり』であり、良い製品を大切に長く使用するというリデュースの観点からも理にかなったアプローチではないかと考えています」。


プロジェクトで提案する着物と洋服は、同じ裁断パーツからまるでパズルのように組み合わせて制作されています(余るパターンも出ます)。そして、着物の仕立てに沿って、洋服のように曲線部分を切り落としていないのだそう。このような制約を設けることで “着物” から “洋服”、そして “洋服” から “着物” へと作り変えることを可能にしているのです。

着物のパターン。
ワンピースのパターン。

 

着物と洋服を循環する服を「和裁」の技術を用いてつくることの意義

このプロジェクトは、私たち消費者側が長期間着られることを前提とした商品企画であり、そのサイクルが環境への配慮につながっています。そして一方で重要なことは「和裁」の需要を創出することで、和裁という日本の伝統的な技術を守ることだと言います。

「日本人の着物離れによる業界の低迷などから和裁に対する認知度の低下、和裁士が働ける場の減少など、和裁を取り巻く環境は決して良い状況ではありません。腕の良い和裁士の高齢化も進んでおり、技術を受け継ぐ若い和裁士も減少傾向にあります。
ただの洋服を和裁の技術を用いて縫製してもコストのかかる服でしかありませんが、“洋服” と “着物” を行き来できる仕組みの中に和裁を用いることで、和裁の需要を創出できると考えています。また、洋服にしか興味がなかった人でも洋服と着物をサイクルするという特異性から着物への関心へと結びついていって欲しいです。そしてこのプロジェクトを通して消費者が着物・和裁に目を向け、一着の服と長く付き合っていきたいと思える思考の変化を促すきっかけの一助になれば嬉しく思います」。

 

着物に戻したり、洋服にしたり、生地に戻したりすることができる「Kimono Kirumono CYCLE PROJECT」は、問題提起のコンセプト案に留まらず、実際に購入することもできるのだそう。詳細は、伊藤広宣さんによるブランド「01u10」(ゼロイチユーイチゼロ)Webサイトをご覧ください。

Kimono Kirumono CYCLE PROJECT 展示会

会期 2021/12/14(火)〜19(日)
時間 12:00〜19:00
場所 Time Machine Goes Big Time
京都市上京区河原町通今出川下ル梶井町448 清和テナントハウス1F

「01u10」(ゼロイチユーイチゼロ)Webサイト
https://itoshouten.base.ec/

 

 

  • 京都芸術大学 広報課Office of Public Relations, Kyoto University of the Arts

    所在地: 京都芸術大学 瓜生山キャンパス
    連絡先: 075-791-9112
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

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