REPORT2021.08.23

アート

この夏「へんちくりん」祭りに迷い込む ―亀岡市役所「開かれたアトリエ」で夏のイベントを開催!

edited by
  • 京都芸術大学 広報課

空間演出デザイン学科の3年生19名が、亀岡市役所の地下1階にある「開かれたアトリエ」というスペースで、8月3日(火)に「竹」をテーマとして夏のイベントを開催しました。

「開かれたアトリエ」は、カフェやレストランのほか、市民を交えたワークショップや作品展示、各種イベントなどにも使えるスペースとして昨年4月にオープン。多様な使われ方をする中で、多くの人々が出会い、イノベーションを創出することが狙いです。

亀岡市役所地下1階「開かれたアトリエ」

京都芸術大学と亀岡市は協定を締結し、内閣府選定「自治体SDGsモデル事業」を共同で推進。その一つの形として、2021年4月14日(水)亀岡市役所内に「開かれたアトリエ」をオープンしました。

※(参考)遊び、食べ、学び、仕事もできる市役所カフェ。― 亀岡市役所「開かれたアトリエ」空間プロデュース
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/827

3年生の選択ゼミである「亀岡ゼミ」では、亀岡市でのフィールドワーク、インタビューなどのリサーチをもとに、亀岡市内の公共の場でイベント企画・開催し、アートやデザインの視点から暮らしを見つめ直し、生き方のヒントとなる知恵や物語をみつける試みを行います。

昨年は新型コロナウイルス感染症の影響でオンラインイベントを行いましたが、今年は亀岡市役所のご協力もあり、なんとか実空間でのイベント開催が実現。その名も「へんちくりん」。なんとも気になるネーミングです。

 

“亀岡で味わう、ちょっぴり「ヘン」なお祭り

気がついたら、ヘンな竹林に迷い込んだ。
竹から霧が噴き出て、どこからかカラコロと音が鳴っている。
勉強を頑張る学生、働き詰めの会社員やご近所さんもここではみんな日常を忘れて竹を楽しんでいるみたい。竹のドームでくつろいだり水に浸ってすずんだり。射的であそぶ子供たちの声もする。

ちょうど退屈してたし、ちょっと覗いてみようかな。”

 

「へんちくりん」は竹をふんだんに使ったお祭りです。和モダンなイメージの空間づくりを行い、来場者が楽しく遊んだり、くつろぎながら会場の雰囲気を楽しめるように設計。イベントへの参加費は無料で、子どもから大人まで老若男女問わず楽しんでもらえるよう企画しました。

 

材料の調達から始まったイベント準備

会場で使われている竹はすべて亀岡市で採れたもの。なんと学生が早朝から亀岡の山に登り、伐採してきたとか。会場では30~40本もの竹が使われています。

やすりで表面を滑らかに。
ベンチとなる竹。肌に当たっても痛くないように、節を落としています。


ゼミが始まったのは4月からですが、企画が煮詰まってきたのは開催1か月前くらいのことでした。感染症対策のため、ゼミ生全員で亀岡市役所に下見に行けたのは一度のみなど、さまざまな制約がある中、短い期間で仕上げました。授業がない日も足を運んで、暑い中作業を続けました。

一本一本丁寧に加工していきます。
ちょっと一休み。竹くずで「へんちくりん」。


搬入作業ができるのは、イベント開催日の前日のみ。また、会場装飾など大きな作業は利用時間後となるので、限られた時間で完成させる必要がありました。時間をかけずに搬入できるよう、事前に竹の組み立てなど当日の動きを想定し、ゼミメンバーが一丸となって協力しながら作業を行いました。

現地で竹を組み立てます。
設計図と照らし合わせながら。


やさしく来場者を迎える竹のドーム

では、イベント会場の空間デザインをご紹介します。
会場に入るとまず目を引くのは、中央のフローリングスペースに設置された、大きな竹のドームです。テーマの一つである“くつろぎ”を実現させるために、人が入れる大きさのドームを設置し、ドームに入って休憩できるスペースをつくりました。竹というと、強靱で固いイメージがありますが、実は優れた柔軟性を持つ材料です。竹がしなやかにカーブして空間を覆い、その材質のやさしさを身体で感じることができます。

ドーム内には作業や学習ができる机や憩いのスペースも。


この竹のドーム、実は緻密な計算の上に成り立っています。伐採後の竹のサイズはまばらですが、長さを揃えて、一本の竹を八等分の状態に。準備段階ではなかなか思い通りの形になってくれなかった竹ですが、作業をするうちに材質の特徴を感覚でつかむことができ、計算を重ねながら完成形に近づけました。

みんなで力を合わせて組み立てます。
あれ、ちょっと曲がりぎみ?


大学で何度か試作はしたものの、実寸サイズでの組み立てはなんとぶっつけ本番だったとか。そんなことを感じさせない、この会場のイメージを象徴する立派なモニュメントになっています。

 

非日常へといざなう会場装飾

会場内には、竹を使った装飾やアイテムが散りばめられています。
こちらは竹から霧を噴き出したモニュメント。淡い色に染められた綿でできた霧が、非日常の異空間に誘ってくれます。感染症対策として、次亜塩素酸水の入った噴霧器を竹の中に入れて霧が吹きだしているように演出しました。感染症対策さえも一つの演出に変えてしまうそのアイデア、さすがです。

ふわっと淡いピンクの霧が吹きだしています。
感染症対策の噴霧器も負けずに霧を噴き出します。


会場入り口付近に設置された展示ブースには、竹でつくられたアクセサリーやカトラリー、灯篭が並びます。竹を滑らかな形に加工するのは、細かくて集中力のいる作業だったようですが、2年生の時にカトラリー制作を経験した空間デザインコースの皆さんが活躍。それぞれが習得した加工のコツを教え合いながら、楽しんで制作することができたと学生は言います。

さまざまな竹グッズが並びます。
竹のネックレス。
こちらはカトラリー。

リーフレットの文字をコピーして竹で作った看板。


会場ではどこからか竹の音が聞こえてきます。こちらは竹の楽器たちです。竹と竹がぶつかり合って、カラカラとやさしい竹の音色が響きます。太さも長さも一本一本違う竹。つくりだす音もそれぞれです。普段はあまり聞かない竹の響きに、子どもたちも没頭して遊んでいます。

竹の棒を差し込んで音を出します。
ウインドベルのような竹の楽器。

大人気の水鉄砲ワークショップ

子どもたちを夢中にさせたのは、竹でつくった水鉄砲で遊ぶワークショップ。想像以上の盛り上がりに学生もびっくりしたようです。

勢いよく水鉄砲発射!
お母さんと一緒に。


この水鉄砲はポンプ式。竹の筒に水を入れ、竹の棒でその水を勢いよく押し出す仕組みになっています。試作を重ね、竹の棒にはスポンジをつけ、その上から布をかぶせてすべりを良くしました。

スポンジと布を加工中。
竹の水鉄砲ができました。


もちろん的も竹で作られています。竹の筒を半分に割った的に装飾を施し、興味をひくデザインに。中には時間を忘れて1時間も遊んでいる子どももいたりと、大人気のワークショップとなりました。

色とりどりの的。


最後にゼミリーダーの矢谷未来さんから感想を伺いました。
「以前から“かめおか霧の芸術祭”などで亀岡市に関わることが多かったので、地域創生を深く学びたい思いでこのゼミを選択しました。当初は開かれたアトリエ内にあるカフェと連携して茶話会ができないか考えていましたが、情勢を考えると難しいな、と。そんな状況だからこそ、“亀岡の竹でなにができるだろう”と考えたときに、みんなが楽しくゆっくり時間を過ごせるイベントを開催できればと思いました。実際に来場者がイベントを楽しんでいる様子を見て、感動するとともに大きな達成感を得られました。」

1日限定イベントでしたが、来場者のみなさんが「へんちくりん」祭りに迷い込み、非日常的な夏を体験する楽しそうな様子が印象的でした。亀岡ゼミのみなさん、お疲れさまでした!

 

京都芸術大学 Newsletter

京都芸術大学の教員が執筆するコラムと、クリエイター・研究者が選ぶ、世界を学ぶ最新トピックスを無料でお届けします。ご希望の方は、メールアドレスをご入力するだけで、来週水曜日より配信を開始します。以下よりお申し込みください。

お申し込みはこちらから

  • 京都芸術大学 広報課Office of Public Relations, Kyoto University of the Arts

    所在地: 京都芸術大学 瓜生山キャンパス
    連絡先: 075-791-9112
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

お気に入り登録しました

既に登録済みです。

お気に入り記事を削除します。
よろしいですか?