REPORT2021.07.20

デザイン

かたちのない“感覚”を視覚化する。― 情報デザイン学科「VISUALIZE THE SENSES」展

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  • 京都芸術大学 広報課

瓜生山キャンパス人間館1階のラウンジにて、情報デザイン学科ビジュアルコミュニケーションデザインコースの2年生たちが、初めての展示に挑戦しています。

こちらは「グラフィックデザイン基礎ⅢA(グラフィックデザインの実験と応用)」という授業の課題成果展示。企画から編集、アウトプットまでのプロセスをグラフィックデザインと捉え、その基礎を学ぶ授業です。

展覧会のテーマは「VISUALIZE THE SENSES」。「聴覚・触覚・味覚・嗅覚」の視覚化(ビジュアライズ)を試みています。

視覚化と言っても、所謂ポスターなどの平面のグラフィックに留まらず、紙柱やアクリル製の立体物、インスタレーションなど、その形態はさまざま。人間館1階ラウンジの一区画に18グループもの展示がギュッと凝縮されています。リサーチやヒアリング、体験・体感などを経て、情報を整理し、思考した学生たち。立案したコンセプトをどのように視覚化するのか、その試行錯誤が大いに感じられる展覧会です。

また、かたちのない「感覚」という情報を、媒体を通して見る人が体感できるよう視覚化、実体化することで「記憶に残るような表現」を探求したと言います。

「聴覚・触覚・味覚・嗅覚」の視覚化

情報デザイン学科ビジュアルコミュニケーションデザインコース2年生は、グラフィックデザイン基礎ⅢA「グラフィックデザインの実験と応用」の課題成果展示を行います。

世界の情報量は、インターネットから派生したソーシャルメディアの技術革新によって誰もが日常的に情報をアップロードできるようになり、ここ10年で500倍以上にも増えたと言われています。
しかし、人が一度に見たり聞いたりして感じ取れる情報の許容量に変化はありません。

本授業は、ビジュアルコミュニケーション=情報伝達を学ぶ学生たちが、「聴覚・触覚・味覚・嗅覚」の伝達について探求するものです。単なる視覚的な情報伝達ではなく、身体的に、生理的感覚に訴えかけ、記憶に残るような表現を探求しました。

表現そのものの情報の質だけに着目するのではなく、その表現を見た人にどう作用するのか? どう影響するのか? といった情報の作用と変化の質に着目した作品が並びます。

リサーチと考察、企画と構想、表現と展開というグラフィックデザインの基本的なプロセスを学び、視覚伝達を基盤に、これからの情報伝達に挑戦する彼らの試行錯誤をご覧ください。


前半「聴覚・触覚」担当教員:丸井栄二、鈴木大義、榎木佳子
後半「味覚・嗅覚」担当教員:中田泉、中家寿之、仲村健太郎

 

文字情報を操作した体験


私たちは情報からある程度、味の想像を掻き立てています。そこから、情報を操作した体験を通して、新しい味覚の伝達を試みます。

 

 

未知の味


自分たちの班は「記憶の味覚・嗅覚」という点から「新たな食物を考えるカード」を制作しました。
新たな食物を作ることによって、記憶にはない新しい味や食感、香りなどを作った人に創造・想像してもらうことが目的です。

 

 

4人の○○体験


この立体物は○○に対する4人が体験し記憶した味覚・嗅覚を文字、柱の構成によって表したものである。文字や柱は○○の印象から受けたそれぞれの感覚で配置した。4人の視点から分解された○○が一体何であるか、あなたの体験と合わせて考えてみてほしい。

 

 

色と形の組み立て


私たち人間は様々な味を感じる。甘味、苦味、辛味、塩味、そして酸味。ただ不思議なことに、同じ食材を口にしても人それぞれに知覚する味覚には違いがある。その「味覚の違い」を平面と立体物の2つの手法を用い、目に見える形として表現した。

 

 

≒ 甘酸っぱい


誰もが感じたことのある「甘酸っぱい体験」を脳の働きに注目し、視覚的に表現する。

 

 

味の蕾


生き物の舌に存在し、花の蕾のような形で味覚をつかさどる味細胞「味蕾」に着目し、生き物によって異なる味蕾の数を表現した。
味蕾の数の多さは味覚の発達を意味しており、その違いを知ることで生き物の味覚に対しての様々な発見をしてもらいたい。

 

 

味の想像


嗅覚・味覚は必ずしも鼻と舌で感じているものではなく、視覚・聴覚・触覚など他の感覚からの影響も受けている。
抽象的な立体物を見て、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「旨味」の中からどの味を感じ取れたかを投票し、五感の関係を体験する。

 

 

空間色と味覚の関係


色とりどりの空間に配置された、みかんを見て「美味しそう、美味しくなさそう」と思った人は、視覚情報のみで食べ物の味を判断している。
周りの環境の色を変化させた時、人はどんな味覚を想像するのか。この作品を見ることで想像してほしい。

 

 

Alternative

檸檬を見た時に自然と涎が出る経験から、私たちは檸檬という物体のどの情報を感じ取っているのか、ということに疑問を持ち、この企画を考えました。
檸檬の情報を抽出し切り分け、それらを対照的に並べて、どの部分的な情報に反応しやすいのか、またそうでない情報は何なのかという実験的な展示です。

 

 

LIE

そこにはないはずなのに檸檬の見た目をしているもの。
もはや実在しないものにでも人間の五感は反応するのか、その究極のところを問うた作品。

 

COLOR

普段見慣れているものであれば、白黒はカラーに補完できるが、補完し脳内で想像したものに対しても反応は起こるか、その程度を変化させつつ示した作品。

 

IDENTITY

檸檬の代表的なアイデンティティである”黄色”・”丸い”だけを残してそのほかを抽象化し、その物体から得られる檸檬的な視覚情報を減らした作品。

 

 

Color Furu


私たちは味覚について調べていくうちに、視覚情報のなかでも特に色が味覚に大きく影響を与えるという結論に至りました。
そこで色と味覚をテーマに制作を進め、色が及ぼす味覚への影響を「色の調味料」として、プロダクトへと落とし込みました。

 

 

WITH BANS


ゲームを通すことで楽しく味覚と嗅覚に触れられるようにしました。また、プレイヤー側に味覚と嗅覚のイメージを求めることで、今まで自分が体験してきた「味」「香り」の記憶を回想させるようなゲームにしました。

 

 

私たちは情報を食べている


味覚は食べ物自体の見た目だけでなく、口コミなどの情報により操作されているように感じる。SNSが欠かせないこの時代において、人間の本能的な感覚でさえ、インターネットが関わってきているのではないだろうか。

 

 

嗅覚・味覚の記憶と周囲環境


嗅覚、味覚は記憶と密接な関係を持っている。同じ赤い球体でも、周りの環境や空間によって、全く別のものに見えてくる。これは、投影された映像によって、嗅覚や味覚の記憶を引き起こさせる実験的な作品である。

 

 

smell sampling 50


自分の匂い、わかりますか? 匂いってどんな色ですか?
同じ匂いでも、人によって感じ方も好みも違います。匂いのサンプル50個を用意し、一つの匂いに対して25人に感じた色でグラフに点で示してもらい、匂いの傾向を調査しました。

 

 

文字と嗅覚


匂いの成分が同じものを集め、文字情報を配置し、文字によって感じ方がどう変わるのか実験を通し制作を進めた。
これは制作の中で「文字という視覚情報は嗅覚を錯覚させる場合がある」という関係性に気付いたことを表した作品となっている。

 

 

嗅覚衰弱


匂いを感じる力は10歳でピークに達した後、衰えていく一方です。嗅覚が低下すると「食べ物が腐っているのに気づかない」「ガス漏れに気づかない」など命の危険を招きます。アルコールの比較を視覚化することで嗅覚を鍛えます。

 

 


入学式の日の匂いや季節の変わり目の匂いなど、その時にしか感じられない気持ちと合わさって感じられる再現不可能な匂いを閉じ込めたいと思いました。
記憶の中の匂いを色で可視化することによって、その匂いを追体験できるものになったと感じました。

 

 

香り薬


症状が緩和するその過程で治療薬の代わりに嗅覚を使用した香りのお薬(効果的な香り)を実際に体感している様子とその効能を得た結果を見せることで嗅覚の視覚化を行いました。
また、嗅覚と体調の緩和の関係についても知ることができる作品です。

 

VISUALIZE THE SENSES

視覚情報は、どのように伝わっているのだろうか?どこまで伝わっているのだろうか?

会期 2021年7月16日(金)~7月21日(水)
場所 人間館1Fラウンジ

※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、一般の方は瓜生山キャンパスに入構いただくことができません。何卒ご了承ください。

 

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