REPORT2021.05.21

デザイン

展覧会という形式を借りた共創の実験。― クロステックデザインコース「なんか、おもしろそうな展覧会を作ってください。展」

edited by
  • 京都芸術大学 広報課

2021年1月、情報デザイン学科のクロステックデザインコース1年生(現2年生)による一風変わった展覧会が開催されていました。その名も「なんか、おもしろそうな展覧会を作ってください。展」。

とても不思議な名称ですが、本展は何かひとつのテーマに基づくキュレーションではなく、「展覧会そのもの」の開催を目的としており、自身が追求したいことを自由に制作して展示するというもの。一見すると「何でもあり」の無秩序なものに見えますが、他者に見てもらうためにどのようなことが求められるか、その情報を整理することに目的を定めたのだそう。

当たり前ですが、自分の頭の中身は他者にはわかりません。自身の考えを他者に披露するにはどのようなことをする必要があるかを精査し、例えば自分の考えと似た表現者の思考や表現をリサーチしたり、どのようにアウトプットし、他者に披露しているのかを調べてみる。そのようなプロセスを学ぶための課題になっているのです。また、「観ていただく」ためには、他者がどのように自分の作品を捉えるのかを先読みすることも必要でしょうし、そのような力を養う目的もあるのだと言います。

当初は「自分の追求を自由に制作」という設定で始まったのですが、会に向けて準備をする中で最終的には、事前に学生たちからお題を募り、シャッフルしたものを再分配し、制作する流れになったそうです。


鑑賞者は、制作されたモノそのものだけではなく、お題に対して制作者はどう答えたのか、なぜそのような答えを見出したのか、また自分ならどうやって答えるのかなど、回答者になったつもりで想像しながら展示をご覧いただくことができる会になっています。

 

2020年の4月、私たちは入学した。
世界中のあらゆる物事に影響を与えたウイルスは、当然私たちの生活にも影を落としていた。
オンライン授業で他者と共創することを学び、世界の狭さを思い知った。
そしてその分、世界に対して何かをしなくてはいけない、と常に投げかけられているような気がしていた。そんな漠然とした意識のまま、何をするにも手探りでいつの間にか一年経っていた。
そんな中クロステックデザインコースでは一年生の締めくくりとして展覧会を開催することになった。
一年の間に何を学んだのかの記録として。いつか振り返るための指標として。そして、漠然とした問いに対する答えとして。
クラス内の有志が数名集まり、キュレーターとして今するべき展覧会とは何か、企画から構想した。

なんか、おもしろそうな展覧会を作ってください展。
人種や国家を超えて連帯しなければいけない時代に、人々はより効率的な共創を求める。しかし芸術は無駄かもしれない共創のなかにあるのではないのか。そんな仮定を確かめるべく、展覧会という形式を借りて実験をした。
この展覧会では、全ての作品にお題が存在する。そのお題とは、ランダムなクラスメイトに与えられた、何でもないテーマだ。

その一行に作者は向き合い、応える。その当意即妙からにじみ出るぬぐい切れない自分らしさを見つけてほしい。

 

では、お題とその回答(タイトル)をご紹介します。
 

青山暖菜
お題:暮らしの形 タイトル:《望む暮らしの『形』》

 

赤星侑太
お題:自分の好きな曲を聴覚以外を使って表現してください タイトル:《beatmania EUROBEAT MIX》

 

荒木桃香
お題:青いキラキラってなんですか? タイトル:《言葉》

 

伊藤瑞
お題:綺麗なもの タイトル:《セルフ・ハンディキャッピング》

 

石田祥太郎
お題:自分が思っているタイ料理のイメージを表現してください タイトル《トムヤンクンヌードル》

 

今村萌香
お題:たまごかけごはん タイトル:《手紙》

 

大竹真心
お題:あなたは「区別」と聞いて何を考えますか? タイトル:《間引き》

 

角谷亜門
お題:クロステックデザインってなに? タイトル:《家族を迎えるあなたへ》

 

紀氏羽衣
お題:縄文時代に生まれちゃった〜〜 タイトル:《ゆりかごで眠らせる。》

 

岸田怜子
お題:無を表現してください タイトル:《有無 -alum-》

 

木下優希
お題:色を使った表現 タイトル:《音の色》

 

キム・イェジン
お題:あなたの帰り道 タイトル:《人生の帰り道》

 

小室勇人
お題:無関心を愛おしく思わせてください。 タイトル:《日常にある愛おしさ》

 

フィリップス才伊文
お題:自分を滅してください。 タイトル:《心の色》

 

佐藤真晴
お題:「顔のない印象的な女性を表現して」 タイトル:《印象的な女性は顔のある女性》

 

菅沼丈二
お題:瞼にあるのは? タイトル:《その鏡の中に瞼を見つけることはできない》

 

滝井智恵
お題:あなたにとっての幸せを形にすると? タイトル:《◯(2020.12)》

 

田中伊織
お題:おばあちゃんの背中 タイトル:《脆いの背中》

 

谷口あかり
お題:楽しいとは? タイトル:《服を脱ぐ》

 

中森美咲
お題:海が欲しいです タイトル:《私と海》

 

中山晴生
お題:自分の考える理想のペット タイトル:《金魚5匹》

 

濱口琴音
お題:海の生き物をテーマに自分なりに新しい生物を作ってください タイトル:《広い海には異種がいる》

 

原田哲成
お題:あなたが信じてるもの タイトル:《内奥箱》

 

宮本真衣
お題:声を表してください タイトル:《交ざる》

 

明神言純
お題:あなたにとって暗いもの タイトル:《“ 夢 ”》

 

村下未華
お題:孤独な青春 タイトル:《kodoku ∈ SEISYUN》

 

茂木雪江
お題:死ぬまでやってたい娯楽 タイトル:《妄想すること》

 

森一樹
お題:京都をはしりやすくしてくださーい タイトル:《深夜紀行》

 

山田桃愛
お題:地球には月が一つしかなくてさみしそうなので、なんとかしてあげてほしい タイトル:《ムスビ》

 

山本健太
お題:音楽の感情を表現して下さい タイトル:《反射する『感情』》

 

吉田崇治
お題:自分の好きな麻雀を自分なりに表現したい タイトル:《嶺上開花》

 

ラッチャタジャーローンタッド・ポンラウィット
お題:他人(特定の誰か)の中に居る自分の想像 タイトル:《TA!Z》

 

京都芸術大学 Newsletter

京都芸術大学の教員が執筆するコラムと、クリエイター・研究者が選ぶ、世界を学ぶ最新トピックスを無料でお届けします。ご希望の方は、メールアドレスをご入力するだけで、来週水曜日より配信を開始します。以下よりお申し込みください。

お申し込みはこちらから

  • 京都芸術大学 広報課Office of Public Relations, Kyoto University of the Arts

    所在地: 京都芸術大学 瓜生山キャンパス
    連絡先: 075-791-9112
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

お気に入り登録しました

既に登録済みです。

お気に入り記事を削除します。
よろしいですか?