SPECIAL TOPIC2020.10.28

京都

世界の平和と安寧を願い、祈りを。― 建学30周年・祈念献茶式

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  • 京都芸術大学 広報課

2020年10月27日(月)、秋晴れの空の下、30周年を迎える建学記念日に世界の平和を願う祈念献茶式が瓜生山キャンパスの講堂にて執り行われました。

テーマは「祈り」。

世界中の新型コロナウイルスの犠牲者等の鎮魂と祈りをささげるとともに、混沌を深める社会状況の一日も早い回復と平和を祈願し、「祈り」をテーマにした、千玄室大宗匠による祈念献茶式を「直心塔」の御前において執り行うこととなったのです。

直心塔(撮影:高橋保世)

京都の街並みを望む瓜生山キャンパスの中腹にある直心塔は、大学校舎の建設地から多くの石碑や無縁仏が発掘されたことを踏まえ、講堂の正面に建てられた十三重の供養塔。

徳山詳直前理事長が「この山は、京都の争乱の歴史が刻まれた地であり、多くの無縁仏の霊にずっと守り続けられてきた場所である」「この霊を慰めることが、未来に語り継がれる立派な学校になってゆく」と考え、出土した石碑や無縁仏を祀り、「直の心」から「直心塔」と命名されました。

今日まで30年の間、毎年学園関係者が「直心塔」の前に集い、瓜生山の諸霊と本学関係の物故者はもとより、世界各地の紛争や災害の犠牲者の鎮魂を祈り、藝術立国の実現と平和への誓いを新たにしています。


祈念献茶式の次第は、以下の通り。

― 次第 ―
声明:天台声明魚山塾
横笛:藤舎名生 氏
祈りの言葉:山折哲雄 作、朗読 松平定知 教授
立花:池坊専好 氏
献茶:千玄室 氏
挨拶:徳山豊 学校法人瓜生山学園 理事長


式の様子を順を追ってご報告いたします。


総合プロデュースと空間デザインを担当したのは、本学教員の大野木啓人教授です。会場となった瓜生山キャンパスの講堂は、まるで竹藪の中にいるかのような静謐な空間に。


魚山塾による「天台声明」から式が始まりました。

声明とは、法要儀式に際し、経文や真言に旋律抑揚を付けて唱える仏教声楽曲のこと。厳かな声明が響き渡ると、会場の空気が一気に変わり、深い祈りに包まれていきます。

天台声明魚山塾
伝教大師最澄が天台の教えを伝えたおり、声明も伝えられ、体系的に伝えたのは慈覚大師円仁(794~864)と云われる。良忍(1073~1132)により京都大原に声明の道場(魚山 ぎょざん)が開かれ、ここを中心に天台声明は伝承されてきた。平安時代には声明と雅楽・舞楽との合奏曲も作られ浄土信仰とも重なり盛んに奏され、現在でも天台宗ではほとんどの法要に声明が用いられ、舞楽法要などは伝統音楽として公演されている。


続いて、人間国宝・藤舎名生氏による横笛。

藤舎名生
1941年東京生まれ。父は、藤舎流笛家元の藤舎秀蓬、1957年東京NHK邦楽技能者育成会に入学(第6期)。同年に、伯父・四世藤舎流家元・藤舎呂船の内弟子となる。1989年二代目藤舎名生を襲名。現在弟子育成や京都の花街の芸妓の笛指導に携わる一方、日野皓正、山下洋輔、服部克久氏らと競演、歌舞伎、舞踊、ジャズ、クラシックなど幅広い分野で活躍。2019年重要無形文化財各個指定「長唄鳴物」保持者(人間国宝)。


宗教学者、評論家である山折哲雄氏による「祈りの言葉」を、本学教授の松平定知先生が読み上げます。


再び、藤舎名生氏の横笛の調べに乗せ、池坊専好氏による「立花」。

立花とは、室町時代後半から江戸時代初めにかけて完成した、最も伝統あるいけばなのスタイルだそう。木を山、草を水の象徴として一瓶の中に自然の景観美、さらにはこの世の森羅万象を表すと言います ※。

池坊専好
華道家元池坊 次期家元。紫雲山頂法寺の副住職。いのちをいかすという精神に基づき、西国三十三所の各寺院やニューヨーク国連本部で世界平和を祈念し献花を行なう。音楽やテクノロジーなど他分野とのコラボレーションにも取り組んでいる。アイスランド共和国名誉領事として、両国の友好親善の促進に尽くす。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会文化・教育委員会委員、2025年日本国際博覧会協会 理事・シニアアドバイザーを務める。

※参考:いけばなの根源 華道家元池坊 Webサイト
https://www.ikenobo.jp/(検索日:2020年10月27日)


そして、千玄室大宗匠による献茶。

千玄室
1923年生まれ。茶道裏千家15代・前家元。父は14代碩叟宗室(通称・淡々斎宗室として知られる)。国際的な視野で茶道文化の浸透と世界平和を願い、各国を歴訪。京都大学大学院特任教授・大阪大学大学院客員教授として、伝統芸術研究領域における指導に当たるほか、外務省参与、ユネスコ親善大使、日本・国連親善大使など公職・役職を持つ。紫綬褒章、藍綬褒章、文化功労者国家顕彰、勲二等旭日重光章、文化勲章、レジオン・ドヌール勲章オフィシエ(フランス)他多数受章、京都市名誉市民、ホノルル名誉市民他国内外の多くの名誉市民を受ける。


こうして、世界の平和と安寧を願う深い祈りを込めた式が滞りなく挙行されました。

本学は4年制大学としてスタートして以来、来年(2021年)には建学30周年という記念すべき時を迎えます。こうした節目を機会に、建学の理念である芸術と文化により、世界の平和を希求するとともに、世界に誇る京都の伝統文化の連携と発信に努めて参ります。

 

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