REPORT2020.10.19

デザイン

食パンを包む既存のビニール袋を何とかしたい。― 高級食パン「俺のBakery」パッケージデザイン・プロジェクト

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  • 京都芸術大学 広報課

一大ブームを巻き起こした高級食パン。自分で買って食べるのはもちろん、お土産でいただき、食べたことがある人も多いのではないでしょうか。

京都芸術大学では、大阪の心斎橋に店舗を構える高級食パン専門店「俺のBakery心斎橋店」より依頼を頂き、このたび、高級食パンのパッケージデザインに取り組むこととなりました。

俺のBakery(ベーカリー)

「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」などを展開する「俺の〇〇」シリーズから、高級食パンの先駆けとして2016年に誕生した「俺のベーカリー」。こだわり抜いた絶品ベーカリーの味を圧倒的なコストパフォーマンスで提供しています。

https://www.oreno.co.jp/restaurants/bakery

「食パンを包む既存のビニール袋を何とかしたい」

プロジェクトのきっかけは、俺のBakery心斎橋店のスタッフより頂いた「食パンを包む既存のビニール袋を何とかしたい」とのご相談。職人の方々がプライドをもって作っている食パンに見合うパッケージにするために「学生ならではの今までにない新しいアイデアを期待したい」とのご希望でした。

現在のパッケージ。

お話をいただいたのは、この春のこと。新型コロナウイルス感染拡大の影響から、果たしてどのように推進することができるのか、プロジェクトの受託自体から検討する必要がありましたが、「デザインを考えるのに場所は関係ない…!」と、オンラインでもできる産学連携の方法を考え、オンラインでのリサーチや企画検討を進め、パッケージデザインのアイデアを提案することとなりました。

5月、オンライン産学連携プロジェクト「俺のBakeryパッケージデザイン・プロジェクト」が始動。プロジェクトの講師を務めるのは、パッケージデザイナーとして活躍する、プロダクトデザイン学科 非常勤講師の三原美奈子先生。プロダクトデザイン学科から2名、情報デザイン学科(ビジュアルコミュニケーションデザインコース)から2名の学生が参加し、合計4名の学科を横断した合同チームで取り組むこととなりました。

商品コンセプト「男性がお土産に持っても恥ずかしくない高級食パン」を元にリサーチを進め、約3ヶ月後の8月3日、「俺のBakery」へのプレゼンテーションを無事に終えることができました。

「俺のBakery」への最終プレゼンテーションの様子。
上段左から、プロダクトデザイン学科 非常勤講師の三原美奈子先生、プロダクトデザイン学科 3年生 角井祥吾さん、プロダクトデザイン学科 北條崇先生、プロダクトデザイン学科 3年生 齋藤ひなたさん、情報デザイン学科 3年生 一二三菜月さん、情報デザイン学科 3年生 早川恵美理さん、俺の株式会社のベーカリー事業部ご担当者さま、情報デザイン学科 中田泉先生。
ほか、「俺のBakery心斎橋店」パン職人の方にもご参加いただきました!


リサーチから企画立案、教員を交えたディスカッション、そして最後のプレゼンテーションまで、そのすべてをオンラインで行うことは困難を極めましたが、ユニークなキーワードや視点から生まれたアイデアが何案も発表されました。

学生によるアイデアの例。
・仕事のできる「俺」
・「俺」の遊び心
・あえて見せないパッケージ
・ターゲットを40代の男性に絞る


学生が実際に食パンを食べたことで感じたことが、アイデアにつながったものもあれば、「俺のBakery」のブランドイメージをひたむきに読み解くことから生まれたものもあります。

「俺のBakery」の食パンについてのリサーチ内容に、指導教員の三原美奈子先生がコメントしている様子。


今回のプロジェクトに取り組んだ学生たちは、以下のようにふりかえります。

「実際の商品のパッケージを考えることができたのは貴重な機会。また、自分の所属学科以外の先生で実際にパッケージデザイナーとして活躍されている先生に教えて貰えたのも貴重だった。」

「現場のリアルな意見を聞けて嬉しい。普段の授業では、架空のものを考えてデザインすることが多いけど、今回は実際のお店(ブランド)で、消費者のターゲットを意識して取り組めたことが勉強になった。」

「お客様の手に渡ることを想像したら、思い切ったデザインにすることにワクワクできた。」

 

また、オンラインでの実施についても、「リサーチはオンラインだったので、SNSで情報を集めたり、WEBマップで外装や立地環境からイメージを掴んでいった。実際にお店に行けなかったことは残念だったが、オンラインでのプロジェクトは授業でない緊張感があった。」との感想がありました。

コロナ禍の影響で学校へ来ることができない状況ではありましたが、学生たちがオンラインでの限られた中でもひたむきに課題と向き合い、デザインに取り組んだ結果に、先方からもご満足を頂けました。

指導教員と学生とのディスカッションの様子。


デザインアイデア自体が今回の産学連携プロジェクトの成果物であるため、残念ながらそのデザイン案をお見せすることはできませんが、ブランドの消費者ターゲットを「40代の紳士的な男性」と捉え、家族へのお土産としてデザインを企画する学生や、袋を留めるクロージャ―を含めてデザインする学生、あえて中味を見せないデザインなど、固定観念に捉われない多種多様なアイデアが提案されました。

プレゼンテーションを受け、「俺のBakery」担当者の方からも以下のような感想をいただくことができました。
「学生の熱量が各デザインから伝わってきました。コストだったり、作業のオペレーションを重視するあまり、商品を輝かせるということを、どうしても現場にいると忘れがちになります。学生の皆さんからの提案を見て、自分たちの食パンがまだまだ輝けるんだと実感しました。」


また、プロジェクトを担当したプロダクトデザイン学科 非常勤講師の三原美奈子先生は、以下のようにふりかえります。

「パッケージデザインを構築するには、デザインやアイデアを考えるのと同時に、さまざまな知識が必要になります。クライアントからの要望に叶った素晴らしいアイデアがあっても、商品化するには耐久性や安全性など構造上の問題、素材や印刷ロット等のコスト面、現場での作業性や視認性、あらゆる状況を想定し、さらには脱プラなど社会問題も意識しなければなりません。
今回の「俺のBakery」プロジェクトも例外ではなく、参加した学生は、のびのびとアイデアを広げたいのに多くの規制に阻まれるジレンマを体験したことでしょう。しかしこれこそが現実社会のパッケージデザインです。
それでも学生各々がアイデアのポイントを見極め、悩みながらもブラッシュアップを重ねて、実現可能なデザインに落とし込むことができました。採用/不採用は時の運、それはプロでも同じです。価値ある挑戦ができたことが財産になると思います。」

 

自宅で過ごす時間が多かった2020年上半期、食への向き合い方が変化した方もおられると思いますが、今回のプロジェクトで学生たちがどのように一大ブームとなった高級食パンのパッケージに挑み、どんなアイデアを出したのか。食パンやそのパッケージをふと目にした時、ぜひイメージしてみてください。

納品後のアイデアは、俺の株式会社で協議したのち、実際に「俺のBakery心斎橋店」で採用される可能性があります。学生たちの考えたアイデアで高級食パンが包まれる日を期待したいと思います。

 

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