REPORT2020.10.01

京都

あなたのいる「場所」を、京都に。― 「京都職人 オンラインWORK SHOP」初開催!

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  • 京都芸術大学 広報課

自分の家が職人さんの工房になる!? オンラインで京都の職人さんと一緒に、伝統工芸を本格的に体験できる「京都職人オンラインWORK SHOP」の第一弾が、今年8月22日・23日の2日間にわたって開催されました。

京都の職人さんと出会うことができ、さらに自宅が職人の工房になるという、90分のオンラインワークショップ。まるで京都を訪れたかのような気持ちで手仕事の時間に没頭した体験をレポートします。
 

職人とともに「新しいおうち時間」をお届け

現在、新型コロナウイルス感染拡大による生活の急激な変化にともない、社会全体で「おうち時間」を充実させるコンテンツが求められています。その一方で、伝統工芸の世界では厳しい風が吹いており、年内に廃業を検討している職人が約4割にものぼるという現状があります。

このままでは伝統が途絶えてしまう可能性が懸念されている中、「京都芸術大学 京都伝統文化イノベーション研究センター(以下、KYOTO T5)* 1」によって企画されたこの「京都職人オンラインWORK SHOP」は、 “あなたのいる「場所」を、京都に。” がコンセプト。京都の職人さんによる、子どもから大人までが楽しめるオンラインワークショップを通して、新しい「おうち時間」の過ごし方を提案するだけでなく、オンラインで京都の手仕事に触れることで、伝統工芸の継続の手助けもできる存在になっていくことを目指しています。

8月下旬に初開催を迎えた第一回目のワークショップは、【創業200年】京提灯職人・小嶋商店さんによる「テーブルランプ・ミニ提灯をつくる。」と題した内容で、手のひらサイズの提灯づくりにチャレンジ! ここでは90分のオンラインワークショップの様子をレポートしていきます。

*注釈1
京都伝統文化イノベーション研究センター(KYOTO T5)
京都芸術大学内の研究機関。省略して「KYOTO T5」と呼んでおり、京都の伝統文化の継承と発展を目的として、その中でも特に職人の技と素材にフォーカスした記録(アーカイブ)を行い、公開することで新しい製品アイデアを誘発してイノベーティブな活動を展開している。
https://kyotot5.jp

第一回 京都職人オンラインWORK SHOP

【創業200年】京提灯職人・小嶋商店さんによる「テーブルランプ・ミニ提灯をつくる。」

開催日時 8月22日(土)・23日(日)
*いずれも13:30〜15:00
*90分のワークショップを2日間開催
参加費 7,040円(税込)+別途送料
主催 京都芸術大学 京都伝統文化イノベーション研究センター

https://wholelovekyoto.jp/

「京提灯キット」が家に届いた!

ワークショップのチケットをオンラインで購入した後、開催数日前になると、今回のオンラインワークショップを運営する「Whole Love Kyoto DOOR」から製作キットが宅配便で届きました。

「Whole Love Kyoto DOOR」は、京都の伝統工芸のリサーチを通して職人と共同で新しい製品を制作・販売しているブランド「Whole Love Kyoto(株式会社CHIMASKI)」と、KYOTO T5による取り組みで、学生メンバーが主体となって運営に変わっています。 “Whole Love Kyoto” のロゴ入りの箱から、ギフトボックスのような美しいデザインの製作キット用の箱を取り出し、開けていくだけで、ワクワクが止まりません。

今回の第一回ワークショップを担当する小嶋商店さんの紹介や、作り方の手順が製作キットとともに収められていて、ワークショップが始まる前から伝統職人の技への興味がどんどん高まっていきます。

オリジナルの製作キットは宅配便で開催数日前に到着。
製作キットの箱の中は道具がぎっしり!

今回のワークショップ用の「ちび丸提灯製作キット」は小嶋商店さんによるもの。竹でできた「ちび丸提灯」の型と、和紙、置き台部品、ろうそく型LED照明、水糊、綿棒、注意書が、化粧箱に入って届いた。
ワークショップのチケットと、小嶋商店さんの取り組みを紹介するカード。チケットに付いているピンブローチは、織物の職人さんの副産物だそうで、今回のワークショップ参加者全員に贈られた。このピンブローチを集めていくと何か良いことが起こるかも!?


自宅を「ワークショップ会場」に

ワークショップ当日は、13:30からの午後の部に参加しました。ワークショップはオンライン会議ツール「Zoom」を通して行われ、スマートフォンやパソコンからスタートの10分前には専用のURLに接続します。製作キットを机に並べ、霧吹きやハサミ、ドライヤーなど製作に必要な準備物も自宅にあるもので準備してスタンバイ。家から一歩も出なくても、パソコンを開くだけでワークショップに参加できる!というのが、もう既に新鮮な体験です。

ワークショップが始まると、まずは運営する「Whole Love Kyoto DOOR」のスタッフから進行のだんどりや注意点などが説明され、そのあと参加者による簡単な自己紹介。夏休み期間ということもあり、親子で参加される参加者もいて、Zoomの画面がにぎやかに盛り上がります。

続いて、今回のワークショップを担当いただく小嶋商店の職人、小嶋 俊さんが登場! 江戸・寛政年間(1789~1801年)に創業した歴史ある小嶋商店の取り組みについて、簡単にレクチャーいただきました。小嶋商店さんは日本でもめずらしい提灯製作工房で、提灯を骨から紙張り、絵付けまで一貫して作り上げています。その手順について、カメラを適宜切り替えて、工房で働く職人たちの手元をライブで撮影しながら解説してくださる様子に、伝統工芸にかける熱い思いが伝わってきます。

10代目の小嶋 俊さんによる、小嶋商店さんについてのレクチャー。
提灯ができるまでの工程を、ビデオカメラを切り替えてライブ中継。臨場感がすごい!
京提灯づくりの解説のあとは、製作キットの一つ「置き台」を組み立てていく。ダンボールのパーツに入ったスリットに各部品を順番に差し込んでいくだけで、職人さんが実際に使っているものと同じ構造の置き台が簡単にできあがる。差し込み方のコツなどは、Zoomのビデオを通して随時解説。


京提灯の型に和紙を貼ってみる

置き台が完成したら、準備OK。製作キットの型に和紙を貼っていく作業を一斉にスタートします。提灯づくりの工程は、大きく分けて3つあり、型に水糊をぬっていく「塗り」、和紙を型に貼っていく「貼り」、和紙を乾かして端の処理をする「仕上げ」の3ステップを経て、完成します。

Zoomの画面では、参加者それぞれのカメラで手元を映している様子が共有され、みんなで作っている一体感が生まれます。コツが必要なところはカメラを切り替えて、職人・小嶋 俊さんの手元を映しながら、わかりやすく解説してもらえるので、自分の作業中の様子と照らし合わせながら進めていきます。

綿棒で型に水糊をぬっていく「塗り」の作業。Zoomの画面では小嶋さんの手元を映して解説。
型を4面に分け、1面ずつ、竹の型に綿棒で水糊を塗っていく「地貼り」。京提灯の特徴の一つ。
和紙を型に貼る「貼り」の作業。霧吹きで和紙全体をしめらせてから、しわをのばして貼る。


おもしろいのは、職人の小嶋さんによる解説トーク。ワークショップで体験する作業は一見すると単純なものの、聞くと、小島商店では工房内で分業制をとり、それぞれの作業に専門の職人さんがいるそうで、職人技の奥深さが伝わるエピソードをたくさん披露してくださいます。
たとえば型を構成している「竹」の加工工程。冒頭の解説でも手順を簡単にライブ配信してくださいましたが、元々、小嶋 俊さんは、竹を薄く割る「平骨」づくりが専門の職人だったそう。

「僕は、祖父から竹割りを教えてもらい、この世界に入りました。骨組みの作り方も、螺旋状にする『巻骨式』とは違って、京提灯の場合は、平骨を1本ずつ輪にしたものを何本もの麻糸で結び、しっかりと固定するので、堂々とした風合いに仕上がるんです。京提灯の基本の構造は、今回のワークショップで作るミニ提灯とほぼ同じなんですが、みなさんにも作業しながら、表からは見えにくい骨組みの美しさ、“提灯の中”の美しさをぜひ感じてもらいたいですね」と小嶋さん。

「貼り」の作業を、手元をビデオで撮影しながら解説する小嶋さん。和紙を1枚貼った後は、型に合わせて余分な和紙を指先でやぶいて、次の和紙を貼る作業に移る。
2枚の和紙を貼り終えた段階。濡らした和紙を指先でやぶる瞬間は緊張する。
3枚目の和紙を貼るときは、先に貼った和紙との継ぎ目を目立たないようにするのがコツ。


職人の世界の奥深さについて、小嶋さんは、
「今回のワークショップでは、職人の技を体感してもらうために塗りから仕上げまで、一人完結で作業してもらっていますが、実は小嶋商店は、元々、竹の加工が専門だったんです。昔はもっとたくさんの職人がいて、それぞれの作業が分業制になっていたので、ほかの業者さんに貼りや絵付けの作業をお願いしていました。
祖父の代だった60年ほど前から、自分たちの工房で最初から仕上げまで一貫して行うことができるようになったんですが、そうすることで、トータルで美しい仕上げにつなげることができるし、新しい発想にもつなげることができるんですね。私の先代である父は、竹割りから仕上げの絵付けまで、一人ですべてこなせますが、やっぱりそうすると、美しいものができる。僕たちの代は分業して作業をリレーして、スピード感をもって製作していますが、仕上がりのトータルの美しさでは、父にはまだまだ敵いませんね(笑)
2018年には10代目の我々兄弟で、照明ブランドとして『小菱屋忠兵衛』を立ち上げました。小菱屋忠兵衛は実は初代の屋号なんですが、新しい分野のものづくりを始めるにあたって、“初心にかえって、モノづくりに励もう”と、この名前を名乗らせていただくことになりました。これまでの京提灯の枠にはまらず、あえて“竹の型を見せた提灯”を作ったりと、伝統技法を駆使しながら、新しいデザインと発想を取り入れて製品づくりをしています」。

貼りの作業で、4枚目の和紙を貼り終えた段階。和紙の端をちぎり、指で繊維をなじませて整える。和紙から薄く透けて見える骨組みが美しい。
乾燥の工程。通常は自然乾燥するが、今回はドライヤーで温風を当ててスピードアップ。
貼った和紙が乾燥して、全体的に和紙が白くなったら、乾燥完了。


作業開始から1時間ほどで、和紙を貼る作業が完了して、乾燥と仕上げの工程へ。「Whole Love Kyoto DOOR」の進行役スタッフと小嶋さんの掛け合いで、解説やリラックスしたおしゃべりを聞きながら、参加のみなさんは黙々と作業を進めていきます。不明点やうまくいかないところは、その都度、Zoomのチャットや、小嶋さんに直接質問して解決し、全員が時間内に仕上げまでたどり着くことができました。

「みなさん、ここまでできましたか〜?」小嶋さんの手元と見比べて、仕上がりをチェック。
乾燥が終わったら、型を固定していた枠を分解して、型を外す。破れないかドキドキ。
枠から外した型は、上下とも不要な和紙をハサミでカットして、端の処理をする。
端の和紙をハサミでカットした段階。内側に水糊を塗り、型に合わせて端を折り込んで仕上げる。


できた! 私だけのミニ提灯

端の処理を終えたら、ミニ提灯が完成! 手のひらサイズの京提灯は、コロンとしてかわいらしい姿ながら、手のひらに乗せると、しっかりとした骨組みを感じます。ワークショップでは和紙の色が選べて、私はシンプルな「白色」をチョイス。そのほか、波色・麻色・さくら色があり、できあがりを報告するZoom画面では、参加者のみなさんの色とりどりの京提灯を見ることができました。

最後は、皆さんで記念撮影をして、今回のワークショップは終了! 集中して作業する時間も多く、あっという間の90分でした。

完成! 普段は吊り下がっているのを見るだけの提灯に、自分の手でふれる体験が楽しい。
製作キットで届いた「ろうそく型LED照明」を中にセットして、ライトON!
「できました〜!」参加者それぞれの仕上がりをZoom画面で共有して、みんな笑顔に。


ワークショップができるまで

後日、ワークショップを運営した「Whole Love Kyoto DOOR」のメンバーに、Zoomで話を聞くことができました。Whole Love Kyotoのプロジェクトに昨年秋から参加している空間演出デザイン学科3年生の田中優衣さんは、このワークショップの企画を担当。

「Whole Love Kyotoの催事などにこれまで関わってきたんですが、今年からオンラインでしかできない“架空のショップ”として『Whole Love Kyoto DOOR』を立ち上げることになり、その一環で、オンラインワークショップもできたらいいな、とアイデアが出てきたのがきっかけですね。初回のワークショップで講師をお願いした小嶋商店さんは、Whole Love Kyotoで長く一緒に取り組みを続けていることもあり、ワークショップについて相談してみると、小嶋商店さんのほうでもミニ提灯キットの開発を進めていたそうで、タイミング良くワークショップをお願いすることができました。7月から急ピッチで実現に向けて動いて、8月頭には参加者募集をスタートできました」と言います。

『Whole Love Kyoto DOOR』のメンバーは、この3人。左から疋田さん、田中さん、吉川さん。


今年4月からWhole Love Kyotoのプロジェクトに参加している空間演出デザイン学科3年生の疋田奈々帆さんは、「私たちのミーティングも、基本すべてオンラインだけで行って、具体化していきました。『Whole Love Kyoto DOOR』でもオンライン接客などを行っているので、オンラインでできることっていろいろあるな、と日々感じています。オンラインの良さは、場所を選ばずにできることですよね。今回のワークショップでも、東京や茨城など関東方面から参加してくださった方がいたり、京都に行かなくても、気軽に“京都”を自宅で感じてもらえる取り組みができたと思います」。

同じく、4月から参加した空間演出デザイン学科2年生の吉川愛佑梨さんは、「参加者のみなさんに、ワークショップ後に記入いただいたアンケートを見ると、全体的に満足度が高く、京提灯のかわいらしさや、伝統工芸の良さに気づいてもらえたのがうれしかったですね。お子さんと参加してくださる方も多いのが印象的でしたし、京都の職人さんも一緒になって、みなさんの『おうち時間』を楽しんでいただけたことも達成感につながりました。今回は募集期間が短く、目標の定員20組には少し足らない17組のご参加でしたが、次回はその点をアップデートして、より満足度も高めていきたいです」と意気込みを語ります。

運営側から見たワークショップ中の様子。画面の向こうにいる参加者へ、試行錯誤しながら伝えようとする小嶋商店・小嶋 俊さん。このワークショップを通じて職人との新たな接点が生まれていきそう。


第二回は、今年10月に早くも開催が決定! 次回は水引職人・平井水引工芸さんによるワークショップだそうで、疋田さんは「企画をまとめるにあたり、平井水引工芸さんにインタビューさせていただいて、一番簡単な結び方を教えてもらったんですが、水引のひもに触れたのも初めての体験でした。難しいけどおもしろいモノづくり体験を通して、水引の魅力に改めて気づいてもらえたら良いなと思っています」と語ります。

田中さんは、「この企画は、新型コロナウイルスの影響があったからこそ生まれたものかもしれないと思います。自宅にいても、オンラインワークショップを通して、おうち時間を充実させることができる、よい時代なのかも。オンラインの強みを生かして、北海道から沖縄まで、そしていずれは海外に向けても展開していきたいですね。お届けする製作キットやワークショップで、京都の空気や、職人さんと伝統工芸のモノづくりを身近に感じてもらえたらうれしいです。これからも、家にいながらワクワクしてもらえるような取り組みを続けていきますので、ぜひお友達やご家族とご参加ください!」と笑顔でインタビューを締めくくりました。10月18日開催の「第二回 京都職人オンラインWORK SHOP」をお楽しみに!

(取材・文:杉谷紗香)

暗い場所でミニ提灯を点灯! 和紙に透けるほのかな灯りが、ゆらめいて美しい。ワークショップの後も、暮らしの中で体験したことを思い出すきっかけになりそう。


 

 

第二回 京都職人オンラインWORK SHOP

今回は、創業100年の水引職人・平井水引工芸さんによる、水引の基本の結び方である「あわじ結び」をつくるワークショップです。

開催日時 10月18日(日)午前の部 10:30〜12:00/午後の部 13:30〜15:00
定員 各回20名
*要予約(受付締切は10月9日。定員に達し次第、順次受付終了)
申込方法 Whole Love Kyotoホームページより

https://wholelovekyoto.jp/

 

  • 京都芸術大学 広報課Office of Public Relations, Kyoto University of the Arts

    所在地: 京都芸術大学 瓜生山キャンパス
    連絡先: 075-791-9112
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

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