高校演劇コンクール近畿大会で最優秀校、優秀校に選ばれた2校が京都造形芸術大学の京都芸術劇場春秋座で上演する春秋座招待公演「演じる高校生」が2月2日に開催されました。最優秀賞の洛星高校(京都)と優秀賞の大谷高校(大阪)が全国トップレベルの演劇で多くのファンを魅了。公演の前後には演劇の基礎を学べるワークショップなども開催され、高校生たちのはつらつとしたみずみずしい演劇表現が満載の一日となりました。
午前中に実施されたのは、「高校生のための演技ワークショップ」です。舞台芸術における発声法や演技を京都造形芸術大学の教員から学べるとあって、毎年人気を集めている企画です。今回も演劇に励む全国の高校生約50人が、舞台芸術学科学科長の平井愛子教授、同学科非常勤講師で俳優の堀田貴裕先生から指導を受けました。
平井教授はまず「ストレッチをしていないと正しい発声ができない」とウオーミングアップの重要性を説明。舞台上でのせりふに適した声の高さにするための体の使い方などを伝えました。そして、舞台芸術学科で実際に行われているというウオーミングアップとトレーニングの実践に移りました。
最初のプログラムは、自由に歩いている最中に手の合図に合わせて静止し、同時に指示された仕草をとるというアドリブ力が問われる内容です。「舞台の上手を意識した仕草」「足の裏を意識した仕草」「希望×客席を意識した仕草」などと次々と出される指示に対し、高校生たちは即座に表情や手足の動きを変え、お題に沿った表現を披露していました。
次は、2人組となり「いい加減なことを言うのやめてよ」「だって事実だから一緒に行こうよ」のせりふだけで、さまざまな場面や感情を表現するトレーニングです。このせりふを繰り返しながら、2人の間の距離を変えたり、回り込んだり、背を向けたり…。これを反復することで、「相手を感じ取る」という演技をする上での重要な要素を磨くことができるそうです。トレーニングの合間には「照れが出ると演技が台無しになる」「やりたい動きが自然とできた瞬間が演技をしていて一番楽しい瞬間」などと平井教授からアドバイスが飛びました。
午後になると、ワークショップに参加した高校生をはじめ、多くの演劇ファンが楽しみにしていた洛星高校と大谷高校の公演の幕開けです。客席は2階席までいっぱいです。
最初に上演した大谷高校は、公園で繰り広げられる老若男女の人間模様を描いた『じみふる』です。おばあさんや小学生、高校生といった幅広い年齢層を女子生徒が演じ、表現の幅広さ、照明の使い方などで観客を魅了しました。
洛星高校の公演は高校を舞台にしたシチュエーションコメディー『とりでのむこう』。男子高校生がLINE上で夢中になってやり取りする女子高校生は実在するのか。予想を大きく上回る展開を目の当たりにした客席からは笑いがあふれ、最後にミュージカル『レ・ミゼラブル』の劇中歌『民衆の歌』とともに幕が下りると、盛大な拍手が送られていました。
「舞台を見て感動したけど、その思いを打ち明けるときがない」。そんな感情を抱いたことがある人も多いと思います。そういった気持ちに応えるため、公演終了後に「感想シェア会」が企画されました。観客と出演した高校生が同じグループに入り、観客としてどう感じたか▽観客同士の話を聞いて出演者はどう感じたか▽観客と出演者が一緒に意見交換する、という内容。アートプロデュース学科の学生が進行を務め、それぞれの立場で感じたことや疑問などをぶつけ合いました。
公演の裏話にとどまらず、「高校生がおばあさんを演じていたからこそ面白い」「直接話してみると、舞台上の印象と全然違う」などと忌憚のない意見が交わされ、中には「おばあちゃん同士の会話のテンポが高校生のように早かった」などとシニア世代の観客からは率直な意見も。腰の曲がり方を伝授される場面もあり、演じた側も観た側も疑問や意見を交わすことができたからか、シェア会が終わるころには一様に満足感に満ちた表情をしていました。
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