京都府亀岡市を舞台に、「霧」をキーテーマに通年開催されてきた「かめおか霧の芸術祭」。京都造形芸術大学空間演出デザイン学科の松井利夫教授が監修し、芸術祭の拠点と位置付けた「KIRI CAFE」の運営に本学の学生が携わってきました。そして、芸術祭の集大成ともいえるイベント「素顔のかめおか」が2020年1月18、19日に開催され、本学の学生や卒業生が多数取り組みを披露し、地域芸術祭としての新たな形を示しました。
芸術祭に向けて動き出したのは2017年。芸術祭運営経験があり、亀岡市を拠点に作陶する松井教授が監修を務めることになり、晩秋に亀岡盆地を包み込む霧を象徴として捉え、農業をはじめ芸術と呼ばれていない地元のものに焦点を当てて芸術化し、人々が暮らしの中で培った知恵や地域課題と向き合い心豊かな暮らしを模索する取り組みを伝えようと計画していきました。
その拠点として亀岡市千歳町に整備されたのが「KIRI CAFE」です。2017年に本学の学生28人が古民家を改修し、イベントスペースやサテライト研究室などの交流スペースを整備。現在は金曜~日曜日の午前11時半~午後5時にカフェとして営業し、アーティストが講師を務めるワークショップなども行われています。空間演出デザイン学科卒の武田幸子さんとともに本学の学生が運営し、イベントや展覧会の企画には同学科卒の辰巳雄基さんが担っています。
KIRI CAFE
かめおか霧の芸術祭の拠点としてオープンした交流スペース。週末はカフェとしてオープンしながら、「KIRI WISDOM」や「KIRI EXHIBITION」「KIRI2 芸術大学」など、様々なイベントを定期的に開催。住所 | 亀岡市千歳町毘沙門向畑39番地 |
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営業日 | 金・土・日曜日 |
営業時間 | 11:30〜17:00(冬季営業時間) |
ドリンク | コーヒー450円、紅茶400円、自家製ジンジャーエールなど |
食事 | クレープ(チーズ野菜/ジャム)650円、季節のパスタ600円、トースト3種各550円 |
素顔のかめおか当日は主会場の「ガレリアかめおか」に出張し、ロビーに「KIRI CAFE小屋」が登場。普段からKIRI CAFEに携わる学生が接客、調理を担当し、地元のオーガニック野菜とチーズを使った人気の「KIRIクレープ」をはじめとしたフード、ひきたてコーヒーや自家製ジンジャー、レモンシロップなどのドリンクを提供しました。
かめおか霧の芸術祭では、とりわけ亀岡市で盛んな農業に着目し、オーガニックという意味を込めた「野良」の芸術を重視したことも特徴の一つです。オーガニック野菜の成り立ちなどをリサーチして芸術化する取り組みも進められ、「素顔のかめおか」の主要イベントであるマルシェ「かめおかアートマーケット」で陶芸やガラス作品などとともに多数のブースを構えました。
コンベンションホール内の「かめおかアートマーケット」でも多くの在学生、卒業生がブースを構えました。空間演出デザイン学科は2年生20人は「テーブルマナー」をテーマにジュエリーや雑貨を展示販売。各国の食事マナーをローマ字で記したナプキン、宝飾品として食卓に添えるマドラー、魚のムニエルをモチーフにした箸置きなどが並び、来場者からの質問にも丁寧に答えていました。大学がある瓜生山で活動する瓜生山養蜂部は、ニホンミツバチから採取した蜂蜜を販売。生産量が限られ、普段はKIRI CAFEでしか味わえないという貴重な逸品を紹介しました。
卒業生の作品も目白押しです。「球体アイ」のアーティスト名で活動する秋田(旧姓・武井)亜依さん(大学院卒)は、ごみをできるだけ出さない作品作りを意識した陶器、転写、金継ぎを出品。通信制大学院の卒業生らでつくるグループ「サイネンショー」は、既製品を焼き直して新たな表情を見せた皿や湯飲みなどを披露しました。空間演出デザイン学科卒の浦川篤子さんが手掛ける「aco wrap」は岐阜県で採取した蜜蝋などの天然素材で作られた再利用可能なラップを紹介し、人気を博していました。
18日午後、ロビーギャラリーに学生たちの声が響きました。芸術祭に関わる人々から話を聞き、それぞれの思いを芸術祭ホームページで発信し続けてきた京都造形芸術大学文芸表現学科7人の発表です。村松美賀子准教授のゼミに所属する1~3年生は、アーティストや農家の活動場所を訪れたりKIRI CAFEで働いたりして、「なぜこの活動を続けているのか」「芸術祭を通してどのような未来を描いているか」といった声の発信に努めてきました。この活動のまとめとして、KIRI CAFE運営の中心を担ってこられた武田さんと辰巳さんの活動信念や芸術祭に懸ける思いを来場者に披露しました。
紹介した以外にも、数々のアーティストの技術を生かしたイベントが繰り広げられていました。
『作品だけが芸術ではありません、生命や魂をより一層輝かす「技術」のことをそう呼びましょう。美味しい野菜を育てることができる人、渓流を綱渡りのように舟を操ることができる人、悲しい人に寄り添える人、鳥と話せる人、へそで茶を沸かせる人、そんな芸術家がいっぱい暮らす霧の盆地で「かめおか霧の芸術祭」が始まります。』
松井教授がこう呼びかけてきた芸術祭との出会いが、多くの方々や地域の活力となったことと思います。
京都造形芸術大学では今後も、活動の場をキャンパス内にとらわれず、各地域に眠る資源や魅力に光を当てて、アート、デザインの力で課題解決や地方活性化を図る取り組みを進めてまいります。
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