ステージと客席の垣根をなくし、一つの作品世界に演者と観客が同居する新しいパフォーマンス形態「イマーシブシアター」をご存じでしょうか。1996年に結成され、体験型公演を日本で牽引しているダンスカンパニー「DAZZLE」の飯塚浩一郎さんをお迎えした特別講義が2020年1月8日、京都造形芸術大学で開催されました。
大手広告代理店勤務の傍らダンスカンパニー「DAZZLE」に加入した飯塚さんは、クリエーティブディレクター・ダンサーとして活躍されるほか、現在は東京をはじめ世界数カ国に展開する広告会社「WHATEVER」のニューヨーク支社所属でコピーライター・クリエーティブディレクターとしての一面も持たれています。京都造形芸術大学通信教育部では非常勤講師としてマーケティングについて指導されています。
飯塚さんによると、イマーシブシアターは約20年前にロンドンで誕生し、その後ニューヨークで醸成されてきました。「没入」という意味のイマーシブが示す通り、従来の「作品を見る」公演とは違い「作品に入る」鑑賞スタイルが最大の特徴で、観客は演者と同じ空間にいるという一体感、特別感を楽しめるといいます。劇場に限らずホテルなども公演会場となり、演者を追いながら各所で繰り広げられるパフォーマンスを鑑賞するスタイルをとることが多いです。
飯塚さんは5年ほど前にニューヨークでイマーシブシアターを鑑賞した際に今までに味わったことがない感覚を覚え、「いち早く日本に広めたい」とこの演劇スタイルを取り入れることになったそうです。
「DAZZLE」は、ストリートダンスとコンテンポラリーダンスを織り交ぜたスタイルのダンスで、通常90~120分ほどの物語を展開するそうです。元々海外で活躍しており、イラン、ルーマニア、シンガポール、カザフスタンなど多数の国に招聘され公演を行なってきました。イマーシブシアターにおいてはこれまで、廃病院やビル一棟、そのほかにも東京タワーや平安神宮にて上演してきました。
イマーシブシアターの魅力として「五感、視点、参加、共有」を挙げた飯塚さん。
「視覚だけでなく、何かを触ったり飲み物をもらったり、香りを感じたり演者を追いかけたりと、普通の舞台にはない感覚を味わえる」
「正面という概念がないため、あらゆる角度からパフォーマンスが見られる」
「物語の展開が観客の自発性に委ねられ、演者と観客が関わりながらストーリーが展開する」
「演者と1対1で向き合った瞬間の特別感に中毒性を感じる」
「さまざまな場所で同時多発的にパフォーマンスが繰り広げられるので、絶対にすべてを見られない。体感後に、友人と話し合って見逃した部分を埋め合わせてストーリーが理解できる」
とその理由について説明されました。
そして、DAZZLEが脚本・演出・振付を手掛けるイマーシブシアター『サクラヒメ』が1月24日(金)~2月4日(火)、京都・南座で上演されます。1階エリアは客席を取り除いてフラット化し、観客は舞台の進行に応じて回遊しながら鑑賞することができます。2、3階エリアでは着席して鑑賞し、物語の結末の決定に参加できます。
飯塚さんは「日本最古の歴史を持つ劇場で行われる最新エンターテインメントです。元宝塚の女優をはじめ、各ジャンルのトップクラスのパフォーマーが同じ舞台に立ち、観客を交えながらストーリーが進むという体験は、演者にとっても新しい。一緒にストーリーに加わってほしい」と来場を呼び掛けました。
イマーシブシアター『サクラヒメ』〜『桜姫東文章』より〜
世界中の演劇シーンを席巻する新しい演劇体験“イマーシブシアター”が日本最古の歴史を持つ劇場・南座でついに公演!
製作:松竹株式会社
脚本・演出:DAZZLE
協力:キョードー
主催:TSプロモート株式会社
日程 | 2020年1月24日(金)~2月4日(火) |
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会場 | 京都・南座(京都市東山区四条大橋東詰) |
チケット価格 | 1階エリア7,700円、2階エリア5,500円、3階エリア3,300円 |
チケットホン松竹 | 0570-000-489 |
問い合わせ | 南座(075-561-1155) |
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