(文:アートプロデュース学科3年生 山本睦月)
11月26日(火)から12月8日(日)まで、京都市中京区のMEDIA SHOPにて、プロダクトデザイン学科1~4年生と教員による展覧会「壁と人との新しい関係展」展が開催中。
昨年まで同学科・大江孝明准教授の研究内容共有のために集まった学生らと共に、夏休みの期間を活用し開催していた勉強会が、今年からは学生らの熱い要望により授業となった。本展では、その授業で制作された成果作品を展示する。
授業のコンセプトは「あたかも当然のように存在しているモノに改めて向き合い、その道具の価値や人との関係性を再構築する」というもの。学年も経験値も異なるメンバーが、対等な立場で意見を出し合い議論を進めることの出来る場として、「正解探しではなく、多様な答えを許容できるテーマに取り組むこと」を大切にしていると大江准教授は話す。
本展の重要な鍵を握るのが18のポイントだ。全授業時間のおよそ三分の一を使い、壁に関する歴史・機能・言葉を徹底的にリサーチ。その上で導き出され再構築した「壁と人との新たな関係を考えるポイント」が、イラストとテキストとを用いて同展会場の入り口に掲示されている。
2年生 井口 陽渚さんは、壁が情報を視覚遮断する要素を持つことを応用し、一風変わった調味料入れをデザインした。姿形が全く同じ白い調味料入れ。その中に何が入っているかを探るには、聴覚と嗅覚に頼るより他はない。一つの「壁」を通し、人々のコミュニケーションが生み出されるデザインだ。
学生だけでなく大江准教授自身も作品を制作。「壁」に窓や窓枠のようなものがあることによって、その奥に空間が広がっているのでは?と錯覚する人間の感覚を応用したものだ。本作は大江先生と学生との丁寧なやり取りから生み出されたもの。少人数制で個別にやり取りを行う時間を大切にするという勉強会として実施されていた頃から続くスタンスから生み出された作品だ。
学生たち自身の想像力と、丁寧な議論の積み重ねによって生み出されていった18の作品。
それらは鑑賞者たちの持つ固定概念の壁を覆し、新たな関係性を築いていく。
いつも変わらずそこにある「壁」。ぜひこの機会に本展の会場へ足を運んでもらい、「当たり前」を考え直すきっかけにして欲しいと思う。
切断されたものを均一に並べることで感じる「壁」が、展覧会の最初にお出迎え。
「壁と人との新しい関係展」
京都造形芸術大学 プロダクトデザイン学科の展覧会が開催。
会期 | 11月26日(火)〜 12月08日(日)12:00 〜 20:00 ※最終日のみ17:00まで。 |
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会場 | MEDIA SHOP(京都市中京区河原町大黒町44 VOXビル1F) |
費用 | 無料 |
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山本 睦月Mutsuki Yamamoto
1999年東京生まれ神奈川育ち。京都造形芸術大学 アートプロデュース学科2017年度入学。より多くの人と関わりたいと思い、様々な学内プロジェクトの経験を経て、瓜生通信編集部に参加。そのため周囲には、忙しくすることが趣味だと勘違いされている。
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神谷 拓範Kamiya Takunori
1999年大阪府生まれ。京都造形芸術大学 美術工芸学科 写真・映像コース 2018年度入学。写真を撮ることが多く、人間観察を趣味としている。