10月22日、京都造形芸術大学望天館にて一般社団法人 Music Dialogueとの共催で室内楽イベント「大山シェフの秘密のレシピー音が音楽になる瞬間ー」が開催されました。世界的ヴィオラ奏者の大山平一郎さんらの演奏を通して、クラシック音楽を読み解こうと企画。多くの方が詰めかけ、ドイツの作曲家・ブラームスの職人芸とも言える音楽の奥深さに触れました。
少人数編成による室内楽の演奏を通じて音楽と他の芸術が「対話(Dialogue)」する機会を創出し、室内楽から得られる深い喜びを多くの方々に知ってもらうことをミッションとするMusic Dialogue。
冒頭ではクラシック音楽に精通する音楽家の小室敬幸さんが催しの趣旨を説明し、クラシック音楽における室内楽の位置付けや題材となる曲目、作曲家のブラームスなどについて解説されました。
-室内楽とブラームス
オペラや宗教音楽などが大きな劇場で鑑賞されることを前提として発展してきた一方、室内楽はプライベートな空間において少人数の音楽家によって演奏される音楽として生まれました。中でも今回演奏される弦楽四重奏はヴァイオリン2名、ヴィオラ1名、チェロ1名で編成される室内楽を代表する形式であり、歴史的にはハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンらの作曲家たちによって一つの音楽ジャンルとして確立されてきたといわれます。
小室さんの解説によると、交響曲の作曲に非常に慎重であったブラームスは室内楽の作曲を通じて自身の作曲家としての力を磨きました。今回演奏される「弦楽四重奏曲第3番変ロ長調」は、作曲に約20年もの歳月を費やした交響曲第1番の前年に作曲した名作で、そこにはブラームスによる緻密な職人芸が張り巡らされているといいます。
-シェフ大山の厨房へ潜入
この企画の特徴の一つは、室内楽のリハーサル風景を見られること。解説の後、4名の演奏者が登場し、いよいよリハーサルへと移っていきます。「4人での練習や打ち合わせは一切行っておらず、この場が初めてです」と大山さんより短い説明があり、7分間通しでの演奏が行われました。
-対話の時間
後半は、京都造形芸術大学大学院の上村博・芸術研究科長と空間演出デザイン学科の八木良太准教授も登壇し、今回のイベントのもう一つの醍醐味でもある演奏者と参加者との「対話の時間」が設けられました。
上村博教授は「作曲家であるブラームスと楽譜を通してどのように"対話"を行い、解釈をするのか」と早速質問。大山さんはそれに対して「この音がどのように書かれたのか、理解がある上で解釈をしていることが前提」と、作曲家が伝えたいことを演奏を通じていかに伝えられるかが根本的には重要であると強調されました。
また参加者からは「ボーイング(演奏時の弓使い)はどのように決まりますか?」「クラシック音楽と現代音楽を演奏する際の違いは?」といった専門的な質問から「最初の演奏の出来は何点ですか?」「ソロとアンサンブルはどちらが好きですか?」「なぜ音楽家は演奏中に体を揺らすのですか?」など素朴な疑問まで多くの質問が飛びました。
最後にはクラシック音楽をアート作品の題材とする学生から、音楽と土地の関係性について質問があがりました。かつてヨーロッパでは室内楽が演奏される空間に様々な人が集い、音楽にとどまらず、文芸や美術といった他分野の芸術にも影響が広がったといいます。今回の「対話」を通して学生達の芸術的な視野がより広がることを願っています。
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