京都造形芸術大学とユニバーサルミュージック合同会社の産学公連携の一環として取り組まれたオフィス・アート導入プロジェクト「Universal Music Art Project 17」の内覧会とレセプションパーティーが10月21日に開催され、同社・本学関係者および、メディア・音楽・ギャラリー関係の皆さまへお披露目されました。
同プロジェクトは、本学卒業生を含む若手アーティストのアート作品を同社のオフィス空間に展示することで、人々の五感を刺激する空間を提供するという新しい試みです。2018年秋の同社のオフィス移転をきっかけに発足。音楽とアートの垣根を超えるこの取り組みは、若手アーティストの支援とともに、同社社員や所属アーティストのクリエイティビティを刺激することを目指しています。
同プロジェクトのディレクションを務めたのは、本学美術工芸学科の教授で本学のコマーシャルギャラリー「アルトテック(ARTOTHÈQUE)」のディレクターである椿昇先生。アルトテック12名・Gallery PARC2名(内、卒業生13名)と、#BCTION4組が参加しています。
■アルトテック取り扱いアーティスト
品川 亮、香月 美菜、髙木智子、西垣肇也樹、品川美香、和田直祐、中村萌、大河原光、顧剣亨、能條雅由、松村咲希、前端紗季
■Gallery PARC 取り扱いアーティスト
山本聖子、大和美緒
■#BCTION
Mon Koutaro Ooyama、TOKIO AOYAMA、DOPPEL、GRAVITYFREE
新たな空間が与える、新しい着想
10月21日、アートが並ぶ新しいオフィス空間の完成を祝し開かれた内覧会では、オフィス内の作品が来場者に特別に公開され、多くのギャラリー関係者や来場者がオフィスをめぐり、作品と触れ合いました。作品の前で待つ各アーティストに、作品について質問する人の姿も多く見られました。
音楽とアートというテーマに対して、卒業生の品川美香さん(大学院修士課程2016年修了)は、「今回のお話をいただいた時からとてもワクワクしていました。個人的にミュージックビデオを見ることがよくあるのですが、映像の中のビジュアルが映し出すそれぞれの瞬間にいろいろな世界が閉じ込められている感じがして、絵画とも通じるものがあると思い、普段から影響を受けていると思います。今回は、その視覚的にワクワクする感じを、絵で表現できたらと意識しました」と話します。
また、同じく卒業生の品川亮さん(大学院修士課程2016年修了)は、「音楽とのつながりって何だろうと思った時に、僕は日本画を扱っていることもあり、音楽の原点とも言える『和歌』を思い付きました。それで今回は、和歌を自分の作品の中に落とし込むことができないかと考えていって『葦手絵(あしでえ)』に辿り着き、制作をはじめました」と説明。作家たちの着想も様々なようです。
平安時代から鎌倉時代にかけて流行した「葦手絵(あしでえ)」にヒントを得た品川亮さんは、絵画の中に「Universal Music」の文字をあしらい、伝統的で日本らしい遊び心を現代的な要素と組み合わせ、新しい日本画の表現を模索した作品を完成させています。
同じく卒業生の香月美菜さん(大学院修士課程2016年修了)は、「改めてこのようなオフィス空間に自分の作品が飾られているのを見て、とても新鮮な気持ちになりました。作家とお客さんを繋ぐ活動を様々な試みで行っているアルトテックから、今回は音楽とアートを繋げる場を提供していただいたと思っています。そういった新しい取り組みを続けるアルトテックの姿勢にとても関心を持っていますし、私もそれに関わる一員としてどんどん新しい活動に参加していきたいと思っています」と新しい挑戦への想いを話してくれました。
プロジェクトへの想い、垣根を越えた表現の未来へ
内覧会の後、ユニバーサルミュージックの藤倉尚社長や、椿先生、作家やご来場の方々が一同に会し、レセプションパーティーが行われました。
まず初めに登壇した藤倉社長からは、「なぜ音楽会社がアートなのか」についての想いが述べられました。「音楽や建築、美術といったカテゴリーが芸術のなかにいくつかありますが、あくまでも便宜上のものだと思っています。我々の会社は音楽を通じて感動を届けることを生業としていますが、その中で感動を届けるために、インスピレーションはとても必要で大事なものだと思っています。オフィスに飾っていただいた作品は、弊社所属のアーティストを含めた様々な人の目に触れることになります。創作活動にインスピレーションを与えるきっかけとなったり、新しい楽曲が生まれる場となったりすることを、今後も応援していければと思っています」。
続けて、椿先生からは、「そもそも自分自身が音楽抜きには作品を作れない人間で、音楽とともに生きてきました。今回のお話をユニバーサルミュージックさんからいただいた時に、絶対にやるぞと思いました」と語りました。プロジェクトを進めるにおいて、作品を設置しながらたくさん話を重ねたと言います。設置中には、卒業生の前端紗季さん(芸術学部美術工芸学科2016年卒業)の作品の前で、Steve Reichの『New York Counterpoint』をかけながら陽が傾いていくのを眺め、至福の時を過ごしたそうです。その話を受け、各作品のイメージに合わせたプレイリストが用意されており、各作家の作品をイメージした楽曲が流れるよう、粋な計らいがされていました。
椿先生は、「私たちはもともと音楽とアートと一緒に暮らしていたのに、それがだんだんと分断されてきてしまった。本プロジェクトを通じて、もう一度それを繋ぎ合わせて同じ場に出合わせてあげられた」と続けます。「もっと、作る人と求める人が直接つながっていけば、僕はものすごい文化が生まれると思っています。このプロジェクトもそういった想いの延長線上にありますし、このプロジェクトが次の世界をつくって、日本を変えていける力になると確信しています」と話し、同社の社員のみなさん全員の支援に対して御礼の言葉を述べられました。
続けて、アーティストのみなさんが紹介されました。#BCTIONのディレクターで壁画チームをプロデュースを担当したMonさん、GRAVITYFREEのお2人、そして卒業生の香月美菜さん、顧剣亨さん、品川美香さん、品川亮さん、西垣肇也樹さん、能條雅由さん、前端紗季さん、松村咲希さん、大和美緒さん、山本聖子さん、和田直祐さんが登壇。
「今回は様々な素晴らしい作家の方たちと素晴らしいスタッフの方たちとご一緒できて、それもまた音楽的なハーモニーだと思ってうれしく思っています」と松村咲希さん(大学院修士課程2017年修了)。
また、これまでのユニバーサルミュージックのオフィスの間取り図を組み込んだ作品を手掛けた山本聖子さん(大学院修士課程2006年修了)は、「ユニバーサルの社員の方々にもお話を聞きながら作品をつくり上げました。私以上に空間に思い入れのある方が多いかと思います。今回は、長く作品が残り続ける環境だと思いますので、作品を介してみなさんが言葉を紡ぐきっかけになればと思っております」とそれぞれに参加できたことの喜びを語りました。
フォトセッションを終え、藤倉社長、椿先生両名と親交のある、ボストンコンサルティンググループシニア・アドバイザーの御立尚資氏が乾杯の音頭を。
「いい音楽とか小説とか、いい芸術には垣根がないと思う。自分がその作品の世界に入っていってしまうから、境界がなくなるのだと思います。このレベルの作品がこれだけの数集まって、いい音楽が流れて、急ぎ足で眺めてもその世界の中に入り込んでしまうような作品がたくさんあったのがとてもうれしいですし、ますますクリエイティビティーが上がるようなオフィスが完成されたなと思います」と祝辞を述べられました。
ユニバーサルミュージック所属のアーティスト、水野蒼生さんのDJパフォーマンスを挟み、最後に、営業統括本部長でオフィス移転のプロジェクトリーダーを務められたユニバーサルミュージックの森淳一氏が登壇。
「プロジェクト名にも付けている『17』は、自分たちが『17歳のころに聞いていた音楽』という意味や、若い人たちを応援したいという想いが詰まっています。プロジェクトを通して、音楽だけやっていたら出会えない人にたくさん出会う機会にもなって、いろいろなことが広がっています。音楽会社として、アーティストの方々の創作活動を刺激できるような作品づくりに取組んでいきたいです」。と語り、会の最後を締めました。
アートと音楽の融合で、新たなオフィス空間が誕生しました。社員のみなさんや所属アーティストのみなさんがアートを囲むことで生まれる新たな作品を待ち遠しく思います。
(文:ヤマザキムツミ、撮影:奥田信也)
◎「Universal Music Art Project17」
https://www.universal-music.co.jp/artproject/
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