アート・デザインの力が躍動した101件―プロジェクトを一覧展示『KUAD PROJECT SHOWCASE』&アワード表彰式
- 京都芸術大学 広報課
京都造形芸術大学ではアート・デザインの力で企業や自治体などが抱える課題を解決する“産学公連携プロジェクト”に取り組んできました。本学は全13学科を有する総合芸術大学として毎年100以上ものプロジェクトに取り組み、伝統工芸からエンターテインメント、最先端テクノロジーまで、様々なジャンルで圧倒的な実績を残してきました。
今回、2018年度に行われた産学公連携プロジェクト101件を一覧で紹介する展示『KUAD PROJECT SHOWCASE』を初めて開催しています。会場の京都造形芸術大学瓜生山キャンパス望天館4階には、学生の想いと成果が集結し、そのスケール感に圧倒されます。これまでは個別で取り上げられることが多かった産学公連携プロジェクトを網羅的に「面」で展示することで、京都造形芸術大学が取り組むプロジェクトの量、ジャンルの幅広さを感じてもらう仕組みです。
KUAD PROJECT SHOWCASE
「芸術教育を社会実装する大学」京都造形芸術大学の挑戦!伝統工芸からエンターテインメント、最先端テクノロジーまで幅広いジャンルを横断した101件を一挙公開
開催期間 | 2019年9月14日(金)~10月10日(木) |
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会場 | 京都造形芸術大学瓜生山キャンパス望天館4階 |
営業時間 | 10:00〜17:00 |
休館日 | 土曜、日曜、祝日 |
そしてその中から、社会実装教育のモデルケースとなるプロジェクト5つが、学長・副学長の協議により選出され、アワードとして表彰される運びとなりました。
ノミネートされたのは、「北白川派製作 映画『嵐電』(鈴木卓爾組)」、「HAPii+2018- ホスピタルアート」、「ULTRA FACTORY × Nissha Communications,Inc.『newnaw(ニュウノウ)』」、「ULTRA × 劇団四季『キャッツ』プロジェクト」、「都をどり in 春秋座」。この中から入賞・優秀賞・学長賞が授与されます。一体最高賞の学長賞はどの手に!? 展示会場で行われたアワード表彰式の様子をレポートいたします。
“社会実装プロジェクト”101件、学長賞に選ばれたのは
お越しいただいたのは、今回展示されている産学公連携プロジェクトの委託企業のほか、以前プロジェクトに協働して取り組んだり、京都造形芸術大の学生たちと産学公連携プロジェクトを検討したいと考えてくださったりしている企業の方々。学生や教員ら学内関係者も詰めかけ、オープニングムービーと、本アワードの発起人・小山薫堂副学長からのビデオメッセージで幕が開けました。
まずは入賞の発表です。片上義則副学長より、入賞に選ばれた3つのプロジェクトが発表されました。
入賞 「北白川派製作 映画『嵐電』(鈴木卓爾組)」
1組目は、北白川派製作 映画『嵐電』(鈴木卓爾組)。
有限会社オムロが本学映画学科准教授・鈴木卓爾監督に制作を委託、京福電鉄(通称・嵐電)を舞台に繰り広げられる、男女や人の出会いと別れを描いた映画です。プロの映画スタッフ、俳優と学生が共同で製作し、上映劇場は全国に増え続けています。
「大学の同期、プロの方々、街の方々、映画館と力を合わせて一緒に映画を作れて本当に嬉しく思っております」
「嵐電を走らせている京福電鉄株式会社、撮影所をお貸しいただきました東映京都撮影所など、たくさんの企業や団体から協力いただいて完成できました。自分の故郷の嵐電を映画にしたい想いで、1番に鈴木卓爾監督に声をかけました。そこからこの場が生まれたと思います。本当にありがとうございました」
入賞 「ULTRA FACTORY × Nissha Communications,Inc.『newnaw(ニュウノウ)』」
2組目は、ULTRA FACTORY × Nissha Communications,Inc.「newnaw(ニュウノウ)」。
ニュウノウは、印刷業などを展開する日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社と、同社が保有する高精細な入・出力美術を布に展開した「Fabright」の新たな用途開発を行う共同研究型のプロジェクト。情報デザイン学科の服部滋樹教授とNOSIGNER中家寿之をディレクターに、学生メンバー11名がリサーチを重ねて生み出したアイデアをプロトタイプとして形にしました。
「実は本年度もまだプロジェクトは進行中でして、最初の作品が今年の秋に完成ということで動いています。それに伴って当社での展示企画も動いています。まだまだ学生の皆さんにも協力をしていただきたいところです。今後ともよろしくお願いします」
入賞「都をどり in 春秋座」
3組目は、「都をどり in 春秋座」。
2017年4月、祇園甲部歌舞伎場の耐震工事に伴い、はじめて祇園界隈を離れて「京都芸術劇場 春秋座」に移して開催された「都をどり」。2年連続の開催となり、学科の枠組みを超えた大きな取り組みとなりました。
「京都の学生として、京都の伝統的な都をどりに携われたことは本当に光栄です。その上でこんな素敵な賞までいただけて本当に嬉しいです」
当日残念ながらご欠席の祇園甲部歌舞会の皆さまからのコメントは、春秋座の職員が代読させていだきました。「2017年4月、春秋座にて初めて都をどりを開催し、ウェルカムアートの充実や、お客さんと教員が一体となったおもてなしなど、2018年の都をどりも大成功となりました。協力いただいた皆さんには、井上八千代一同、芸舞妓一同、大変感謝しております」と、大変嬉しくご丁寧なお言葉を頂戴しました。
優秀賞 「HAPii+2018 —ホスピタルアート−」
続いては丹羽貴大副学長から優秀賞が発表されました。
受賞したのは「HAPii+2018 —ホスピタルアート−」。
10年前から京都府立医科大学附属病院とともに、アートやデザインが病院でどのような役割を担えるかを模索。今回取り組んだのは、子ども達が治療に訪れるがん治療研究センターの治療室と、そこへ至る地下廊下の施工。学生には、子どもが前向きに治療に通えるようなアイデアが求められました。
賞状とトロフィーが贈られ、メンバーは一同に、喜びにあふれた表情を浮かべていました。
「自分たちの作ったアートデザインが、学外で人の役に立っていることを実感できて、すごく嬉しく思いました。ありがとうございます」
「今までは癒しの空間的なものが多かったが、毎日治療に子どもさんが通ってくる中で楽しい空間を、ということで思い切ったデザインをお願いしました。普通は治療や検査の機械を見ると皆さん怖がられるけれども、部屋に入った途端、子どもさんの目が輝いて、スタンプカードにあるキャラクターを見つけてはテンション高く、逆に検査がなかなか始められないくらい素晴らしいものができました。来年も期待しております」
学長賞 「ULTRA×劇団四季『キャッツ』プロジェクト」
いよいよラストは最高賞の学長賞。
選ばれたのは「ULTRA×劇団四季『キャッツ』プロジェクト」。
2018年8月に東京・大井町に新設された「キャッツ・シアター」内を装飾する舞台美術の一部を劇団四季スタッフと学生が共同制作するプロジェクト。学生たちは劇団四季スタッフからの直接指導のもと、実際に劇場内に飾られるごみのオブジェ約50点を制作しました。尾池和夫学長から賞状と大きめのトロフィーが贈られました。
「高校2年の時に舞台美術にはまったきっかけの『ライオンキング』に本当に感動しました。このプロジェクトを知った時、“今度は自分が感動を与える側の仕事が経験できるんだ!”って、迷いもなくポートフォリオを慌てて作って志望動機を書いて、今、こんなふうにここにいるのがすごく驚いています。関わってくださった劇団四季やウルトラファクトリーの方に本当に感謝しています」
「当初は果たしてどんな作品ができるか、うまくいくかなと思いながらでしたが、結果としましては我々の期待以上のものができました。正直申し上げて、プロも顔負けといったところだと思います。お客さまがそれを見て、毎日楽しんでくれている笑顔があることは、本当に素晴らしいと感じております」
芸術がつなぐ、学生と企業の化学反応
最後に尾池学長が総評として各プロジェクトへの感想を述べ、表彰式を締め括りました。
表彰式の後は懇親会へ。ドリンクと軽食を片手に乾杯、プロジェクト内で喜びを分かち合ったり、他のプロジェクトメンバーや委託企業様と談笑したり、名刺交換を行う場面も。短い時間でしたが、それぞれ有意義に過ごす様子がうかがえました。
お越しくださった企業様には、成果物を見ながら参加学生に質問される方も。学生も熱心に説明をしたり、積極的に自分が過去に関わったプロジェクトを紹介したりして、交流を深めていました。
今回受賞したプロジェクトは、ジャンルは様々ながらも社会貢献の結果が目に見えるものも多く、学生の表情からは達成感や充実感がにじんでいました。もちろん、時には挫折や失敗、意見の食い違いもあるでしょう。しかしその経験を通して、仲間との絆を深められるだけでなく、自分が何に向いているかなども知ることができます。また、実社会で仕事をする体験は、進路を考える上での大きな財産となります。ぜひアンテナを張って、チャンスに飛び込む勇気を持ってください。
本学は今後も企業や団体から課題をいただき、アートやデザインの力で課題を解決していく産学公連携を深めて参ります。今後もどんなプロジェクトが生まれるのか、とても楽しみです。
『KUAD PROJECT SHOWCASE』は、10月10日(木)まで望天館4階で開催されています。受賞した5つのプロジェクトに関しては、実際の成果物やプロセス、資料などもご覧いただけます。ぜひこの機会に足をお運びください。
文:久保田瑛理
撮影:大河原光(表彰式、レセプション)高橋 保世(展示風景)
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