誰がいつ、何のために描いたのか定まっていない高山寺所蔵の国宝「鳥獣人物戯画」。その絵巻物に登場する動物たちが現代の日常の中で生き生きと動く映像を、京都造形芸術大学情報デザイン学科の学生たちが制作しました。
題材としたのは、鳥獣人物戯画の甲乙丙丁の各巻のうち、馬、牛、ニワトリ、麒麟、トラ、ゾウなどの多彩な動物が登場する乙巻です。描かれている約15種類の鳥獣を切り抜き、アニメーションを作成。それをプロジェクションマッピングのように現代の風景に映し出し、約6分半の映像にまとめました。はるか昔に描かれた動物たちが巻物から飛び出し、カエルとウサギが橋げたの下を歩いたり2頭の牛が力比べしたりと、現代の日常空間で躍動するかのような感覚を味わえます。
情報デザイン学科の学生9人は川合匠教授、岡村寛生准教授の指導のもと、大学周辺の風景を生かした映像制作に挑戦。架空の動物の動作に想像力を膨らませながら、映像の撮影、編集作業を進めました。
映像化は凸版印刷株式会社との産学連携プロジェクトで行われ、京都国立博物館で9月2日~4日に開催されたICOM京都大会開催記念「京都の名宝×トッパンVR」のプログラムの一つとして、同博物館で放映されました。
会期中の3日間には毎日トークイベントを開催。初日の2日には川合先生、岡村先生、情報デザイン学科3年生の洲戸洸仁さんが登壇し、映像制作の裏話や制作過程での発見などをお話されました。
司会を務めた凸版印刷株式会社文化事業推進本部の木下悠さんが「鳥獣人物戯画をリメークしたたくさんのコンテンツがある中、文化財としての価値を再評価しつつ新たなコンテンツをつくりたかった」と話されたのに対して、川合先生は「素晴らしい素材があるのであえてゴールを設定せず、手触りを確かめながらピースを集めようと進めた」と明かされました。岡村先生も「アニメーション化する過程で、巻物上での視線誘導などへの工夫がとても感じられた。文脈を取り払って、表現されているものを現代の眼で表現した」と述べられました。
ミズサイやバク、獅子のアニメーションを担当した洲戸さんは「巻物ではミズサイは馬のように歩いていたが、実際はそうではないかもしれない。現存しなかったり空想上だったりする生き物の動きをどのように表現するのか、難しかった」と振り返りました。
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