◎上部の写真:松本芙有香<Lotus>。学生の説明を聞く名和教授(中央)とヤノベ教授
京都造形芸術大学美術工芸学科総合造形コースの学生16人と、若手アーティスト3人によるグループ展「朝は来るのか」が7月下旬から8月上旬にかけて、大津市山中町のシェアスタジオ「山中suplex」で開催されました。会場は屋外の展示スペースとあって、周囲の景観や歴史性を意識した個性的な作品が並び、来場者に驚きと刺激を与えていました。
手掛けたのは現代美術作家・ヤノベケンジ教授のゼミに所属する3、4年生とゲストの若手アーティスト。ヤノベ教授によると、瀬戸内国際芸術祭をはじめとした近年の地域芸術祭では、会場となる土地の地理や歴史、取り巻く社会問題を汲んだ作品制作が求められています。そのため、今後主流になるであろう創作手法を学ぶ意味合いを込めて、かつての白川砂の採取場であり、産業廃棄物が埋められた土地でもある「山中suplex」での野外展示を決めたそうです。展示会名の「朝は来るのか」には、若い世代が抱いている世の中への不安を作品にとって変えていきたいという思いが込められています。
下鴨大津線に面した会場入り口には、首より上が郵便ポストに仕立てたヤギがお出迎え。奥へ奥へと進むにつれて、風景に溶け込んだ形で展示された写真や彫刻、スクラップや磁器の破片を使った作品が次々と姿を現します。
小学生ときに東日本大震災を経験した学生が自身を素材として生まれ変わった自分を表現した巨大プリント、四条河原町の通行人から漏れ聞こえた会話を基にその人たちの属性を推察した”彫刻”、産業廃棄物のがれきを造形物に生まれ変わらせた作品…。学生1人1人が想像力と創造力をフル稼働させた跡が刻まれた力作ばかりです。
8月2日にはヤノベ教授と彫刻家の名和晃平・京都造形芸術大学大学院教授が会場を訪れ、公開合評会を実施。名和教授は、学生から作品のコンセプトや制作に込めた思いを聞き、鋭いまなざしで見入っていました。
学生のプレゼンが終わると、「展示方法が興味深かった」「鑑賞者と相互にコミュニケーションをとれる仕組みがあればいい」「好奇心や欲求がもっと表れてもいい」などと、感想とともに創作活動の糧となるアドバイスをたくさんいただきました。
展示期間の7月20、21、27、28日、8月2~4日、ヤノベゼミ初の屋外でのグループ展には、山中町の住民の方々もお越しになったそうです。宮城県石巻市を中心に開催される『Reborn-Art Festival 2019』にも出品する世界的アーティストから地域住民までの生の声を聴いた学生たち。この経験が今後の作品制作にどのように生かされるのか、楽しみです。
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