アート分野に関する案件を多く手掛けられている水野祐弁護士(シティライツ法律事務所・東京)をお招きした知的財産セミナー「創造性を加速させる法の使い方」が7月9日(火)、京都造形芸術大学で開かれました。アーティストやクリエーターの表現の自由を確保しつつ、表現をより発展させて社会に広げていく視点についてお話されました。
「いかに契約というツールを使って、企業とアーティストのコミュニケーションを円滑にするか」「法を駆使して創造性、イノベーションを最大化させる」
法律家としての信念をこう表現された水野弁護士は、アート分野のほか、企業のスタートアップ支援や新技術を使った経営戦略・新規事業に携わられています。前例が多くない事案の実務に取り組むうちに、法律や契約は単に物事を規制するだけではなく、良いものを伸ばしていくツールにもなり得ると徐々に感じるようになったそうです。行政やまちづくり企業とともに、法律の解釈を利用、仕組みを柔軟にして、河川や公園の利活用の推進に取り組まれています。
「ゼロか100という概念だけで語られてきた」著作権に関連して、著作物の作者や権利者と利用者が契約によって、法律の枠組みを超えたルールを作る「クリエイティブ・コモンズ」という米国発の考え方を紹介。たくさんの権利の束である著作権の一部を開放することを可能にするこの仕組みには、作者や権利者と利用者との間で法律とは別のルールを作っていこう、という考え方が背景にあり、著作権に限らずさまざまな分野で役立つ考え方だと強調されました。
クリエイティブ・コモンズはコンテンツのオープン化(自由に著作物を利用できること)に影響を与えているといい、その代表例として、本学の小山薫堂副学長がプロデュースした熊本県マスコットキャラクターのくまモンを挙げられました。「無償で利用できるなど利用条件のハードルを低くすることで、知名度が高まっただけでなく、コンテンツとしての魅力も増した」。国内外で爆発的な人気を博している人気キャラクターから垣間見える知的財産面の戦略を説明されました。
このように、法はクリエイティブ分野においても創造的に活用することができる例が増えているにもかかわらず、法律や契約を邪魔な存在、遠ざけたいものとして捉えるクリエイターがまだまだ多いとされるアート分野。水野弁護士は、社会の変化が激しく法制度と実態が乖離する「法の遅れ」が指摘される現代では、時代とともにルールは変化するということを前提として、クリエイターを含む、多くの当事者が自分たちに影響があるルールづくりに積極的に参加していかなければならないと唱え、そのための「ボトムアップ型のルール形成」を提案されています。
「古びたルールを新しくしたり、新しいルールを作ることを循環させたりしていくことで、規範を醸成させていくことが重要。法律はあくまで目的を実現するためのツールであり、その視点や姿勢を大事にして、その中で新しいものを作り出す必要がある」
最後に、アート分野で作家自身や作品の価値を最大限に高めるためのマインドについてお伝えいただきました。
セミナーは、京都造形芸術大学知的財産センターが芸術分野での知的財産権の活用法を考えるために企画しました。
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