INTERVIEW2019.09.13

映像

短編映画『忘れてくけど』―カンヌ国際映画祭ショートフィルム部門上映作品

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  • 京都造形芸術大学 広報室

2019年5月14日~5月25日にフランスで開催された第72回カンヌ国際映画祭のショートフィルムコーナーで、京都造形芸術大学4年生 村瀬大智くん監督の短編映画『忘れてくけど(英題:Forget but…)』が上映されました。同作は、村瀬くんらの制作チームが2年生の時に映画学科の授業の一環として制作したもの。2019年9月16日(月)~20日(金)、大須シネマ(名古屋市中区)で開催される第1回「仙頭武則MONJIN映画祭」でも上映されます。一般の方にも見て頂ける機会となりますので、ぜひお越しください。

瓜生通信Webマガジンでは、学生でありながら村瀬くんらがカンヌ国際映画祭のショートフィルムコーナーへ応募するに至った経緯や、現地で見た映画界の現実に本間 正人副学長が迫ります。

村瀬大智(映画学科 映画製作コース4年生)

幼い頃から映画好きで、現在も1年間で約400本も映画を観る。本学のオープンキャンパスに参加で、映画をつくる側の存在を意識し始め、大学で映画を学ぶことに。

本間正人副学長(以下、本間) :村瀬くん、カンヌ国際映画祭の「ショートフィルムコーナー」での上映おめでとう!カンヌはどうでしたか?

村瀬大智(以下、村瀬) :ありがとうございます!最初は全く現実味がなかったです。メールで上映決定の知らせが届いたのですが、フランス語で書かれているし、現地に行くまで騙されているんじゃないかと疑っていました(笑)。僕は監督として関わっていましたが、この映画が完成してカンヌ国際映画祭で上映できたのは、制作チームみんなのおかげだと思っています。

 

本間:今回の上映作作品・映画『忘れてくけど』は村瀬くんが2年生のゼミの授業で制作した作品なんだよね。どんな作品ですか?

村瀬:この作品は、映画学科の鈴木卓爾准教授が演じる余命半年を宣告された主人公「おっちゃん」が、ひょんなことからロックバンドを組む若者に出会うという15分程の短編映画です。「おっちゃん」は家族から見放されていて余生を家族と過ごすことが出来ない状況にあり、そんな時に出会った若者と余生を過ごすというストーリ。

僕たちが2年生の頃に鈴木卓爾先生の授業で作成したもので、今だと考えられない型にはまらないやり方で撮影をしていました。

村瀬大智くん
本間正人副学長

本間:「型にはまらないやり方」とはどんな撮影方法だったの?

「ワンシーン・ワンカット」という手法で撮影しました。通常、映画撮影をするときは複数台のカメラを利用したり、複数カットで撮影したりします。授業で撮影する時でも、一つのカメラを使い、一つのシーンをを複数回撮影して制作することが多いんです。でも何回も同じシーンを見ると飽きてしまうから、僕はすべてワンシーン・ワンカットにしたんですよね。その当時はまだ、映画撮影が何たるかをわかっていない時期でもあったけど、僕自身が映画を撮影しながら作品を観ることも楽しんでいたんだと思います。今考えると絶対にあり得ない手法だと思うし、振り返ってみるとどうやってこの作品がうまれたのかもよくわかりません(笑)。

 

本間:知らないからこその撮影手法が、この映画の世界観を作り上げたんだね。何回も同じシーンを見るのは飽きてしまうというのは村瀬くんらしいな(笑)。

村瀬):そうかもしれません。それから、この映画の世界観を作り上げているもう一つの要素は、主人公「おっちゃん」の存在だと考えています。脚本ができる前の構想段階から、鈴木卓爾先生を主演にと考えていました。「たとえば鈴木先生がモヒカンで、何をいわれても『ロックだから』と言っていたら面白くない?」って制作チームのみんなで話をしながら脚本の構想を練っていきました(笑)。そんな風にして脚本ができた後、実際にキャスティングの時が来て鈴木先生にお願いをしてみると、先生は現在上映中の北白川派映画『嵐電』の脚本を執筆中だった。とてもお忙しい時期だったので始めは断られてしまって、他の俳優の方も検討したのですが、やっぱり鈴木先生しかいなかった。予算の関係もあったけど、僕たちのイメージする「ちょっとくたびれたおっちゃん像」を出せるのは鈴木先生しかいなくて、頼み込んでご承諾いただきました。ちなみに、鈴木先生は映画でモヒカンにはなっていませんが……(笑)

カンヌ国際映画祭の参加者に渡されるバッチ。部門や役職により様々な色のバッチがあるという。

本間:制作のエピソードの全てに村瀬くんらしさが出ているね(笑)。この作品をカンヌ映画祭で上映するまではどのような過程があったの?

村瀬:最初にこの映画をカンヌに出そうと言ったのは、一緒に制作をした安井希歩乃さん(映画学科 制作コース4年生)。制作チームみんなの後押しと、映画学科で教鞭を執られている国際映画祭に詳しい先生からアドバイスをもらってショートフィルム部門への応募を決意しました。

この部門への応募は全てインターネットを通して行います。2年生の時に作品は完成していましたが、応募用の英語字幕の準備が間に合わず、今年3月の応募になりました。上映決定の通知がメールできたのが今年4月頃。まさか審査を通るとは思っていなくて、メールの内容に気が付いた時は本当に驚きました。でも、エントリー期限までに時間がなく、喜びに浸る間もなく手続きを行いましたね。

 

本間:カンヌ国際映画祭はどのような様子だった?

村瀬:僕たちの制作チームは予算に余裕がなかったので、今回は監督の僕のみがフランスに渡航しました。そして僕たちの映画を以前から評価してくれて、英語が話せる大谷葉月さん(映画学科・俳優コース4年生)に通訳として同行してもらいました。

カンヌには世界各国から映画関係者が訪れます。特に僕が出品したショートフィルム部門は、若手が集まる映画界の登竜門のようなところ。たくさんの映画関係者に映画を観てもらい、どのように評価していただけるかが勝負です。日本からは映画の英語版フライヤーを持参し、上映時に観に来てもらうためのプロモーション活動を積極的に行いました。日本人で若い僕たちはきっと相手にしてもらえないと思っていたから、大谷さんに事前にお願いして現地では着物を着てプロモーション活動をしてもらいました。すると、着物姿の大谷さんと一緒に写真を撮りたいと多くの人が寄ってきて、その人たちに映画を観に来てほしいと伝えました。同じ部門の他の映画上映では誰もお客さんがいないということも目の当たりにして、とても厳しい世界だと思い知らされました。

現地の様子

本間:なるほど、映画業界の厳しさが良く伝わってくるお話ですね。村瀬くんのプロモーション活動の結果はどうだった?

村瀬:本当にありがたいことに、30名ほどの方が僕の映画上映に来てくださって、会場の半分くらいが埋まっていました。上映中、僕は外で待機していたので反応は見ていません。やっぱり自分の映画を何度も見たくなくて……。気が付いた時には上映も終了していて、大谷さんが観てくださった方に囲まれて質問攻めにあっていたので、慌てて会場にもどりました。

 

本間:せっかくの機会なのにカンヌでの上映も観なかったんだね(笑)。上映後のみなさんの反応はどうでしたか?

村瀬:大絶賛してもらえました。映画のフレーミングや構図など多くの質問を頂いたり、作品への評価や考察などのご意見も聞かせて頂きました。僕は英語が話せないけど、昔から映画をたくさん見てきたので、不思議と映画の話題だったら感覚で何を言われているのかわかるんですよね。いろんな国の人と映画の話ができたので本当に幸せな時間でした。

現地では沢山の知り合いができたという

本間:それはすごいな、とても良い経験をしたんだね。この映画祭を通して気づいたことや学んだことを教えてください。

村瀬:本当に多くのことを学びました。例えば、映画には流行のスタイルがあるということ。今年はクラッシック音楽が流行って、多くの映画で使われていました。僕の映画はロックの要素が入っていたから、今年の中では稀有な存在だったようです。それも他の映画と差別化できて良かったのかもしれません。そして、優れた映画は言語がわからなくても理解できることを改めて感じました。僕の作品でも若者たちが口々に会話する場面がありますが、今回あえて英訳を入れずにその場の空気感を感じ取ってもらうようにしました。今年のコンペティション部門の最高賞パルムドールを受賞した韓国の映画『パラサイト』は本当に素晴らしくて、言葉がなくとも伝わることを体現していました。感激しましたね。

 

本間:カンヌへの挑戦は、村瀬くんにとってかけがえのない経験になったのですね。

村瀬:勉強になったし、多くの良い出会いもありました。特に、現地で僕を気にかけて話しかけてくれた海外のプロデューサーとの出会いは嬉しかったです。声をかけられた時はすごく怪しい人に見えて警戒していました(笑)。でも話しをすると、彼が有名なプロデューサーだということが分かった。そして、僕が良かれと思って現地で行ったフライヤー配布のプロモーション活動は、作品が盗用される要因になることなど海外の映画祭事情を教えてくれました。他にも、映画を通じて世界各国の人とつながることができた。かけがえのない経験ですね。今、卒業制作をすすめていますが、この経験を生かしていきたいですね。

短編映画『忘れてくけど(英題:Forget but…))』

2019年9月16日(月)~20日(金)、大須シネマ(名古屋市中区)で開催される第1回「仙頭武則MONJIN映画祭」で上映。

 

【仙頭武則MONJIN映画祭】

会期 9月16日(月)~20日(金)
会場 大須シネマ(名古屋市中区大須三丁目27番12号)
公式Twitter https://twitter.com/monjineigasai

 

  • 京都造形芸術大学 広報室Office of Public Relations, Kyoto University of Art and Design

    所在地: 京都造形芸術大学 瓜生山キャンパス 人間館2階事務室
    連絡先: 075-791-9112 (内線 3030/3033)
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

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