「『勝ちたい』『成功したい』と思うから怖い。勝負ごとや作品作りの過程は誰でも怖い。でも、怖いと思うことは成長している証拠。向上心があるから怖い。恐怖があるからいいものが作れる。チャレンジしないとゴールは見えない」
世界の頂点に登り詰めたチャンピオンの重みのある一言一言が、学生の心に響きました。
5月16日(木)、元WBC世界バンタム級王者で「浪速のジョー」と呼ばれる辰吉丈一郎さん(※「吉」は上が「土」、「丈」は右上に「、」があるのが正式な表記です)が京都造形芸術大学映画学科で特別講義をされました。辰吉さんに密着したドキュメンタリー映画『ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年』『BOXER JOE(ボクサー・ジョー)』をプロデュースした映画学科の椎井友紀子教授が、辰吉さんと25年来の仲という縁で来学が実現。ご自身のボクシング人生を振り返っていただき、極限の勝負ごとに立ち向かう心構えなどをお話いただきました。
講義は主に質疑応答形式で展開。学生から「リングの上では孤独ですか。相手に憎しみを抱いて対戦しますか」と問われ、「目の前にいる相手に勝ちたい、負けられないという思いが強い。憎むのはちょっと違う。相手を尊敬して、努力を認めた上で戦わないと勝ち目がない。憎しみでは強くなれない」と述べられました。
デビュー戦と初の世界戦で勝った際の喜びが一番大きかったとする一方、「試合の1、2カ月前から自分が負けるのではないかと思い、毎日が怖い。試合までの練習期間はずっと怖い。それでも死に物狂いで練習して、対戦相手や恐怖にぶつかってきた」と打ち明けた辰吉さん。「辰吉さんにとってボクシングとは」との質問には「自分が生かせる場所。自分にボクシングがあるから、今、ここに立てている。ボクシングがないと生きていけない。自分がしたいことをして、人が喜んでくれたら、それでいい」と答えられました。
椎井教授から「99%だめ?あと1%あるやん」という”辰吉語録”が紹介されると、「みんな99%だめって言われたら1%を見て見ぬふりをする。でも1%の可能性があるなら、それに賭けたい」と説明。学生へのメッセージとして「自分が人にこう見てもらいたい、こういう作品を見てもらいたいと意識することが大切。自分がしたいことをして、そこに向かってもがいてほしい」と呼び掛けました。
映画学科では、作品制作の過程で必要となるリサーチ力、取材力を身に付けてもらおうと、さまざまな職業の第一線で活躍される方々をお招きする特別講義を定期的に開催しています。
辰吉さんの話を聞き逃すまいと真剣な表情でメモを聞き入っていた学生たち。最後に、前日の5月15日が誕生日だったという辰吉さんをバースデーソングと盛大な拍手で祝福しました。
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