REPORT2018.11.07

アートデザイン

子どもの成長を表現する― ULTRA SANDWICH PROJECT「ファミリア神戸本店」プロジェクト

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  • 京都芸術大学 広報課

京都造形芸術大学に2008年に生まれた学内の共通工房ウルトラファクトリーでは、第一線で活躍するクリエイターを迎え、彼らの制作の現場から発表に至るまで一部始終に関わる実践演習「ウルトラプロジェクト」を実施しています。


毎年さまざまなウルトラプロジェクトが進行する中、2008年より継続しているのが、彫刻家で大学院芸術研究科教授の名和晃平先生によるULTRA SANDWICH PROJECT(通称USAP)。学生たちは、活動期間中に名和先生が主宰するクリエイティブ・プラットフォーム「SANDWICH」における企画・制作・運営に参加し、アーティスト、建築家、デザイナーなど、国内外からさまざまなクリエイターが集い進行する複数のプロジェクトに関わります。

今年の9月8日に新規オープンしたベビー・子ども服ブランド「ファミリア」神戸本店の店舗内装工事もそのひとつ。工事前の店舗見学から始まり、リサーチやアイデア出し、模型制作や店舗での作品設営など、昨年9月から約1年にわたり学生たちが携わった「ファミリア」プロジェクトの様子をご紹介します。

USAPの活動期間は毎年5月~翌年3月まで。このプロジェクトには、2017年度と2018年度のUSAP参加学生が携わることになりました。

リニューアルオープンしたファミリア店舗のエントランス

まず、2017年度のUSAP参加メンバーは、ファミリアで掲げられている”for the first 1000 days”というコンセプトのもと、子どもの成長を表現するデザインということをテーマに、店舗デザインに関わることになりました。

学生達の最初の課題は、新店舗の「ハード面(建物の改装や店内の什器に関わる部分)」と「ソフト面(店内での催しなど、サービスやコンテンツの部分)」の両面に関するアイデア出しでした。
約300枚のアイデアカードを作成し名和教授とのミーティングを経て、その中で良かったアイデアをブラッシュアップ。その後ファミリア本社でプレゼンし、社員のみなさんや岡崎忠彦社長と新しい店舗についての意見交換をしました。そして荒削りなアイデアを、現実に落とし込む作業に移行していきます。

アイデアカードを並べて、学生からファミリア社員のみなさんにプレゼンテーション
良いアイデアカードには付箋をつけてもらう

 

次に、学生たちが精力的に取り組んだのは「マテリアルボード」の制作です。

色、触感、香りなどの要素をまとめた「マテリアルボード」の一例

学生たちはリサーチを重ねるうちに、ファミリアの店舗の内装をこれまで何度も手掛けてきたアートディレクターの八木保さんの「マテリアルボックス」と出会いました。デザインのイメージを、色や形だけでなく実物の素材の触感、香りまで含めて五感で膨らませるためのアイデアのパレットのようなものとして作成されるマテリアルボックスを参考に、USAPでも「マテリアルボード」をつくり、空間のカラー展開のアイデアに広がりを持たせるアイテムとして活用。店舗1階のホワイトベアーカフェや2階の販売フロアの空間デザインに活かされました。そしてマテリアルボードの制作は学生たちにとって思わぬ嬉しい展開を実現させることに……。

マテリアルボード制作の様子

2017年秋から始まった「ファミリア」プロジェクトは、今年5月以降は2018年度のUSAP参加学生にバトンタッチされました。

今年の9月8日のオープンを控えて2018年度生の店舗での設営作業が近づくある日、なんと店内エスカレーター横の壁面に設置するアートワークを、マテリアルボードのアイデアをくださった八木保さんと制作するワークショップが実現。

8月に行われた八木保さんとのワークショップの様子

2日間のワークショップの2日目には、昨年度実際にマテリアルボードの制作に取り組んでいた2017年度プロジェクトメンバーも合流することができ、2017年度生にとっては時間をかけて取り組んだマテリアルボード制作を八木さんご本人と実施できたこと、また店舗で実際に展示されるという点で非常に嬉しい結果となりました。

制作したアートワークは店舗内エスカレーター横で展示中

2017年度の活動では学生リーダーとして参加し、今年はプロジェクトのTA(Teachng Assistant)として後輩たちを育成する立場で活動するプロダクトデザイン学科2年生 葦原恵さんに、約1年間かけて取り組んだファミリアプロジェクトの感想を聞きました。


「SANDWICHで学生が関わるプロジェクトは短期集中で取り組むものが多いなか、ファミリアのプロジェクトには非常に長期にわたり携わることができました。
そしてSANDWICHの建築チームのスタッフと密なやりとりをして、内装に使用するタイル、壁紙、板材の選定など、より実践的な仕事を任せていただきました。制作したマテリアルボードのイメージを元に、それに見合う素材や製品を自らリサーチし、サンプルを取り寄せ、SANDWICHのスタッフに提案しました。また、アイデアカードを用いて発表した300ものアイデアは、描いた内容がそのまま実現に至ったわけではありませんでした。発想のおもしろさと実現可能性は必ずしも一致するわけではないことを知り、アイデアを形にする難しさを実感。しかし、私たちのアイデアから要素を抽出し、形を変えて採用されることがあったという点では、成果を感じることもできました。

私たち学生は、授業の無い土曜日と日曜日の週二日をUSAPの活動日としており、平日は作業に関わることができず悔しい思いもありました。しかし、一連の取り組みの中で、他のプロジェクトに比べてファミリアのプロジェクトでは、幅広くさまざまなことに関わることができ、思い入れも強く貴重な経験になりました。

2年目となる今年はTAとしてプロジェクトに携わり、今年の1年生をサポートしていると、昨年は自分もSANDWICHのスタッフのみなさんにたくさん迷惑をかけていたということを実感しました。今はスタッフさんと一緒に、学生たちの活動のための事前準備をしたり、学生の行動や参加姿勢にアドバイスをしたりなど、先輩として、またSANDWICHのスタッフとして自覚をもち、身を引き締めて取り組んでいます。」

今年9月のオープンから約二ヶ月。10月には2018年度参加学生たちがアイデア出しから関わり、バルーンアートユニットの「デイジーバルーン(Daisy Balloon)」と共に取り組んだハロウィーンの装飾が、エントランスでお客さんたちを出迎えました。今後もUSAPの学生たちはファミリアのイベントや季節の行事に携わっていく予定です。

「デイジーバルーン」と共同製作したハロウィーンの装飾

USAPメンバーの活動成果は「ファミリア 神戸本店」の販売フロアだけでなく、レストランやカフェで実際にご覧いただけます。今後学生たちが関わっていくイベントにも、ぜひご注目ください。


◎ファミリア神戸本店: https://www.familiar.co.jp/kobe/

 

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