REPORT2018.11.16

アートデザイン教育

32名の学生とともに「宇宙船地球号」が船出する―KUAD ANNUAL2019 宇宙船地球号 レポート#1

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  • 山月 智浩
  • 高橋 保世

来年3月に卒業を控えた学部4年生・修士課程2年生が、自身の制作・研究に打ち込むこの時期。学生たちが目指すのは毎年2月に瓜生山キャンパス内で開かれる「卒業展」だが、さらにもう一つの発表の場に向けて準備を進める32名の学生がいる。用意された舞台は東京・上野の東京都美術館、そして彼らを導くのは森美術館副館長兼チーフ・キュレーターで現在大学院芸術研究科で教鞭を執る片岡真実教授。学生がプロのキュレーターと対話を重ね、試行錯誤を繰り返しながら一つの企画展に仕上げるというこのプロジェクトは2017年度に始まり、本年度で2回目を迎える。

2019年2月23日から26日まで開催される、この展覧会のタイトルは「KUAD ANNUAL2019 宇宙船地球号」。片岡教授自身が選び抜いた学生たちが、どのような道のりを経て卒業展という「スタート地点」を目指すのか。そのプロセスを追う。[取材・文/山月智浩(空間演出デザイン学科2年)、撮影/高橋保世]

右から家成俊勝准教授(スペースデザイン)、ヤノベケンジ教授(テクニカルサポート)、片岡真実教授(総合ディレクション)、設営及び設営指導のHIGURE有元氏、須田氏

9月25日(火)、本年度で2回目となる東京での卒業展「KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号」のキックオフミーティングが行われた。集まったのは、片岡真実教授が作品の提案段階から選抜した25組のアーティストたち。学科推薦と自己推薦で応募し、片岡教授へのプレゼンテーションを経て選ばれたメンバーだ。

タイトルの「宇宙船地球号」は、1960年代にケネス・E・ボールディングやバックミンスター・フラーらが提唱した地球を宇宙に浮かぶ一つの宇宙船と捉える考え方のこと。環境問題や大量消費など当時の様々な近代社会の問題を地球規模に捉えることを世に促し、資源の有限性や他者との共存の必要性について問うた。個人的な関心事を発着とするのではなく、「いかに地球の未来に貢献できるか」「いかに物事を包括的に考えることができるのか」というより大きな視点で自らの作品を捉えてほしいという学生たちへの願いが、このテーマに貫かれている。

昨年度を超える展覧会へ

この日は片岡教授をはじめテクニカルサポートを担当するヤノベケンジ教授、スペースデザインを手がける家成俊勝准教授、設営とその指導を頂くHIGUREスタッフがそろい、展示プランに沿って個々の作品のサイズ感、素材感などを確認。片岡教授は「自壊と再生」「現代社会への批評性」「複製・反復のサイクル」といったキーワードを示し、空間の使い方からテーマの掘り下げ方まで具体的に提案しながら、学生とともに展示イメージの解像度を上げていく。

選考過程でも作品とテーマの関連性が重視され、個々の制作としては興味深いものでもその点が足りないことで選外となる作品もあったという。「宇宙船地球号」という、入口から出口までが一つの物語として成立するよう綿密に構成された一つの展覧会の中で、自分の作品がどのような役割を持つのか。キュレーターによって見出される作品の可能性や新たな知見に、学生たちは出展作家としての意識を再確認したことだろう。学生生活の集大成としてだけではなく、一作家として作品と向き合うことでそのクオリティを新たなフェーズへ押し上げることができるという点も、「KUAD ANNUAL」ならではの体験ではないだろうか。

「自分のことを知らない人にとって、作品がどのように映るのか。自分の中に『他者の視点』を持ち、いかに自分自身をプレゼンするかを考えながら作品を深めてほしい」。片岡教授の言葉で、ミーティングは締めくくられた。

ついに動き出した宇宙船地球号。
その行く先に32名の学生たちが見出すものとは。

 

 

 

KUAD ANNUAL 2019 宇宙船地球号

期間 2019年2月23日(土)~26日(火)

時間 9:30-17:30(最終入場時間 17:00)

場所 東京都美術館1階 第2展示室・第3展示室

出展作家

伊地知七絵/猪花茉衣/内田恵利/大田真由/岡田千裕/桑原ひな乃

髙坂彩乃/小谷くるみ/小西健太朗/近藤岳/斉藤七海/志村茉那美

下寺孝典/塚本淳/津和沙奈/中川明衣/中澤ふくみ/丹羽優太

延彩花/長谷川拓海/村片信亮/山本捷平/米村優人/涌田千尋

Hattori Studio(有松歩美、木下萌、渕田詩織、宮城巧、毛利優花、森井美衣、森田州一、吉田瑞紀)

 

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  • 山月 智浩 Tomohiro Yamatsuki

    1998年大阪府生まれ。京都造形芸術大学 空間演出デザイン学科2017年度入学。いろんな世界に飛び込んでみたいとの思いから瓜生通信編集部に参加。企画の立て方や編集を学んでいる。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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