REPORT2018.09.20

アート歴史プロデュースデザイン

“カセキ”味わう2日間ー空間演出デザイン学科「カセキパーラー」オープン

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  • 山月 智浩

8月23日(木)、24日(金)の2日間、島根県隠岐郡海士町にて空間演出デザイン学科3年生らによる「カセキパーラー」がオープンした。

空間演出デザイン学科3年生有志が、ゼミとして海士町を舞台に実践的なソーシャルデザインに取り組むこの活動。ボーリングやフライドポテトなど毎年の取り組みが島民からの好評を得てきたなかで、5年目となる今年のテーマは「カセキ」となった。

地球科学的な価値を持つ遺産の保全や観光産業への活用、持続可能な開発などを進めているとして、ユネスコ世界ジオパークに認定されている島根県隠岐郡。その流れを受け、海士町では2020年、島内のホテルに化石の博物館が設置されることが決定している。しかし収蔵品として購入した大量の化石は島民が観覧できる状態になく、また島民との心理的距離が生まれているのも現状だった。そこで、2年後の博物館オープンに向けたプレイベントとして、町の歴史民俗資料館(民具館)に一時保管されている状態の化石の展示と、それに伴う食のブースを学生たちがディレクションする運びとなった。

展示の舞台となる民具館 作業開始直後の館内。収蔵品はケースにしまわれ雑然と並べられている状態だった。

 

「この夏、

世界中からやってきたカセキにのぼる
ちいさな地層をひとくちでたべる
ちいさな山をけずり
島の下にねむるカセキを掘りおこす

カセキパーラーでしかできないカセキ体験
カセキが海士のものになるように

カセキパーラーはそんな体験をつくります」

(「カセキパーラー」コンセプト文より一部抜粋)

 

化石により親しみを持てるよう使用したのは、建築用の人形模型。島民が自由に色を塗り作り上げる「もう一人の自分」が、化石や鉱石に立ち並ぶ。図書館など町の主要な施設にあらかじめ人形を設置し、現地入りしたタイミングでそれらを回収しディスプレイ。展示を観に来た島民は、「もう一人の自分」を探して化石や鉱石の山々を眺めるというしかけだ。会期中には会場内でも色塗りができるワークショップスペースを用意。海士町で拾った石や漂流物なども合わせて展示し、遠い世界の化石や鉱石が身近に感じられる空間となった。

完成した展示空間。中央の色塗りスペースには化石にまつわる書籍なども用意

展示什器には、もともとは化石が収められていたケースを利用。現地のものを活かした空間づくりを心がけた

化石を傷つけないよう人形の接着には「練り消し」を使用

海士町の石の展示スペース。もともとあった船を什器として活用し、100%海士町のもので構成される空間となった

 

また、展示へと足を運んでもらうきっかけづくりが課題となった今回、並行して行ったのがフードの提供だ。民具館横の観光休憩所に屋台を建て込み、「カセキパーラー」の屋号を掲げた。世界各地の地層を具材で表現した「地層サンド」や、化石を発掘しながら食べるかき氷など、化石や地層にちなんだメニューを展開。展示へのきっかけとしてはもちろん、学生と島民の交流の場としても重要なコミュニティ空間として機能した。

島民の憩いの場としても愛される観光休憩所

台風の影響を受け、急きょ屋内に店舗を設置 漂流物など現地で調達したもので空間づくりを行った

イベント中、好評につき売り切れとなった地層サンド。

スコップで発掘しながら食べる発掘かき氷。色付けした琥珀糖を化石や鉱石に見立てた

ハーブティーの一種「バタフライピー」にアイスの島が浮かぶカセキフロート。底に沈むレモンを掘り起こすと化学反応で色が変わる

 

展示、フードとも2日間での集客は延べ150人を超える盛況ぶりで、来場した島民からは継続的に展示を望む声が多く上がった。イベント終了後、化石の管理を担当している教育委員会 藤井さんは「この2日間だけではなく、今後も折にふれて開放する機会を設けたい。常設は難しいかもしれないが、少しずつ町の方々と化石の距離を近づけていけたら」と語る。

島民と化石を繋げる一歩目として、その手応えを確かに感じられる2日間となった。

 


 

  • 山月 智浩 Tomohiro Yamatsuki

    1998年大阪府生まれ。京都造形芸術大学 空間演出デザイン学科2017年度入学。いろんな世界に飛び込んでみたいとの思いから瓜生通信編集部に参加。企画の立て方や編集を学んでいる。

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