日本画とデジタルアート、その化学反応の先に-千住 博 & チームラボ コラボレーション展「水」

SPECIAL TOPIC2018.08.29

アート

日本画とデジタルアート、その化学反応の先に-千住 博 & チームラボ コラボレーション展「水」

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  • 京都造形芸術大学 広報室

7月14日(土)から9月9日(日)まで大阪の堂島リバーフォーラムで開催されている千住 博 & チームラボ コラボレーション展「水」。日本画家で京都造形芸術大学通信制大学院の千住博教授と、国内外で作品を発表し、常に話題を呼んでいるデジタルアート集団「チームラボ」、それぞれの作品がジャンルを超えて一つの空間をつくり上げています。作品の背景や「水」というテーマを通して伝えたかったことなど、チームラボ・野中千正さんと千住教授に聞きました。(聞き手・長谷川文香、川崎瑠可/ともに情報デザイン学科2年生、撮影・サカキバラカノ/美術工芸学科2年生)

テクノロジーが宿す「生命力」を感じて

チームラボ・野中千正さん

 今回の作品「Black Waves: Wander, Discover and Re-emerge」は、コンピュータ上で水の粒の動きをシミュレーションして計算し、波が作られる条件をインプットしたものをデジタルの線で表現しています。アニメーターが描いたのではなく、計算に基づいたシミュレーション結果を映像化したという、科学的なアプローチで作られている作品です。

今ではごく自然なことですが、雨や波というものを「線」で表現したのはおそらく日本人が初めてなんです。西洋では、たとえば雨のもやっとした雰囲気や石畳が光っている質感で表現していたのですが、葛飾北斎や歌川広重らによって水を線で描くという表現が生まれました。
今回の作品はそういった原点を参考にしながら、その時代の人たちがどのようにして雨や波を見ていたのかを想像し、そこに現代のテクノロジーや科学的観点などをいかに落とし込めるかというのを考えて、波の生命力を表しています。

 展示では作品と鑑賞者との境界線をなくし、「鑑賞者も作品の一部となる」ということを体験してもらいたいと考えました。より観客と作品との一体感を出すために展示方法にもこだわっています。チームラボの展示にはカラフルでわかりやすいものも多くありますが、今回の展示方法は今までより複雑です。鑑賞者の方々には、波の実像と虚像が入り乱れる中を歩き回りながら作品に身をゆだね、波の世界に溶け込むような感覚を味わって頂きたいですね。そこから見えてくるものを通じて、考えるよりも「感じる」という体験をして頂きたいです。

 千住さんは、チームラボの作品がベストな状態で見えるようにと常に敬意をもって向き合ってくださいました。お互いの作品が最も高め合えるような展示方法へと導いていただき、展覧会全体がとてもよいものなったと思っています。

 今回のテーマである「水」というのは、私たちにとって身近な存在です。会場である堂島リバーフォーラムも堂島川に面していますし、ここ大阪は「水の街」とも言われていますよね。この展示を観て頂く方には、水や人間、そしてそこに息づく生活というそれぞれの関係性について考え、見つめ直すきっかけにしてもらえたら嬉しいですね。

「違い」の尊重と対話が新たなクリエーションを生む

千住 博(京都造形芸術大学通信制大学院「千住博ラボ」教授)

 今回の展示は「迷路」のようなものです。チームラボの作品は、混沌としていて濁流のような光景の中に大自然ならではの美しさがあります。その中で僕の作品は、「ここにいたら生きていける」と思える安全地帯でありたいと考えています。人が緑の葉を美しいと思うのは、緑があるところでは生きのびられるからです。「美」という感覚は人間の本能として備わっていて、美しいとは「生きていける」ということを意味しています。外でどんなに辛いことがあったとしても、絵の中に入ってもらうことで「僕の絵があなたを守りますよ」と声をかけることができる。それが僕の考える芸術であり、美ということなんです。

 今回、チームラボはすべてデジタルによって波を表現し、一方僕は人の動きや空調によって作品がどう見えるかというアナログな要素をもとに考えています。完全なデジタルと完全なアナログを一つの空間でぶつけたときに生まれるエネルギーは、すべての壁を取り払った創造の原点だと思うのです。

 コラボレーションとは、互いにまったく違うものを尊重し合うことによって対話し、ぶつけることができる関係性です。どちらかが暗ければもう一方は明るく、どちらかが止まっていればもう一方は動いているというように両極にあるものを融合させながら創作できる仲間がいるというのは、新しいクリエーションのために最も大切なことだと思います。

 芸術家同士のリスペクトというのは、打ち負かしていくという戦いではありません。相手を生かし、いかにハーモニーを奏でるかということが芸術家にとってのコミュニケーションなんです。アートは平和創造のメッセージでなければならないと考えています。

 僕は日本画に限らず、様々な表現を用います。チームラボもまた、これまでの「アート」という枠組みを打ち砕いたアーティストだと言えると思います。
 本来、アーティストというのは自らの外側へと枠を広げていき、すべてのバウンダリーを超えるということが仕事です。この展示を通して、学生たちにはすべての壁を超えて新しい地平線を開き、「自分」というジャンルを確立してほしいと伝えたいですね。想像の宝庫である僕たちの作品を、ぜひ見に来てほしいと思います。

堂島リバーフォーラム開館10周年特別企画

千住 博 & チームラボ コラボレーション展「水」

期間 2018年7月14日(土)~9月9日(日)
時間 11:00 〜 19:00(入館は閉館30分前まで、8/30は17:00まで)
場所 堂島リバーフォーラム(大阪市福島区福島1-1-17)
料金 一般1000円/高校生以下500円

http://10th.dojimariver.com/

トップ動画: 千住 博 & チームラボ コラボレーション展「水」, 2018, 堂島, 大阪, 日本©️チームラボ

  • 京都造形芸術大学 広報室Office of Public Relations, Kyoto University of Art and Design

    所在地: 京都造形芸術大学 瓜生山キャンパス 人間館1階事務室
    連絡先: 075-791-9112 (内線 3030/3033)
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

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