その強さが、美を生み出す-村田諒太×福田直樹×香川照之トーク&インタビュー

SPECIAL TOPIC2018.08.10

京都

その強さが、美を生み出す-村田諒太×福田直樹×香川照之トーク&インタビュー

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  • 辻本 智哉
  • 高橋 保世

7月28日、京都芸術劇場 春秋座にて「福田直樹写真展 嘱目(しょくもく)」のオープニング記念トークイベントが行われました。同写真展では、世界一のボクシング・カメラマンとの呼び声も高い福田直樹さん撮影によるWBA世界ミドル級王者の村田諒太選手の写真を展示。お二人に加え、小学生の頃から福田さんと親交があり、一ファンの域を超えたボクシング愛で知られる俳優の香川照之さんもお招きしての記念イベントに多くのボクシングファンが訪れました。

福田さんと香川さんは小中高と同級生で、小学生時代から教室でボクシングトークを交わした仲とのことで、ボクシング愛に溢れる三人だからこそトークにも熱が入ります。スクリーンにそれぞれのゲストが選んだ福田さんの写真が映し出され、作品の魅力や思い出について語り合いました。

司会はお笑い芸人の和泉修さん。軽快な司会進行で場を和ませつつ「殴られてこんな風に顎がずれると、後で拳が当たってない側が痛むんですわ」と、元プロボクサーらしいコメントも。

ボクシングのパンチは非常に早く、あてずっぽうにカメラで連写しても撮影できません。ボクシング・カメラマンはボクサーのパンチの瞬間を見極めてシャッターを切らなければならないのです。福田さんは世界チャンピオンのパンチすら予測する写真家として、世界で高い評価を受けています。

質疑応答の後、来場者との記念撮影でトークイベントは幕を閉じました。

特別インタビュー『私がニ十歳の頃』

―まずはトークショーを終えての感想をお聞かせください。

福田 こんなに豪華な顔ぶれでイベントを開催できたのは奇跡的です。たくさんの方に来ていただいて、村田選手の言うことは全部説得力があるし、香川の話もわかるところのツボをついてどんどん言ってくれるのですごく楽しいイベントでした。

村田 来場者の方から「プロフェッショナルとは何か」という質問を受けたときは、正直いい答えが見つからなかったんです。でも香川さんと福田さんのお考えに刺激されて、自分の仕事を好きじゃないといけないけど好きだけじゃダメで、その世界を極めようという気持ちもあってはじめてプロになれるということを改めて実感しました。

香川 こういう組み合わせで、しかも父(三代目市川猿之助)が作った劇場でお話しさせていただくというのは面白い運命だと思います。これも福田がどんなに厳しい状況でも撮り続けてきたからで、人間のやり続ける意志の強さと尊さを45年来の親友として感じずにはいられないなと。

―お三方は二十歳の頃どんな若者でしたか?印象的なエピソードがあればお聞かせください

村田 アジア大会があって、一回戦でカザフスタンのアルタエルという選手に当たったんですが、彼は2004年のアテネオリンピックで金メダルをとった選手だったんです。本気で練習して心底本気でぶつかって、結果ボッコボコにやられて「世界のプロはこんな強いんだ」と思い知らされました。それで諦めの気持ちを持ったのが、ちょうど二十歳ですね。

香川 二十歳っていうと、福田と二人でボクシングの生中継を見るためにハワイなんかに行ってた頃ですね。二人でホテルの部屋にこもってテレビで。

福田 テレビガイド見て「この日ムガビがある」とか言って(笑)。とにかく見て、騒いで、遊びでボクシングを延々と見られた時代でした。

香川 KOパンチやKOシーン、レフェリーにリングアナウンサーといったボクシングに関わるヒト・モノすべてを頭に叩き込んで、それで二人でパズルでもするように言葉を交わし合う。二人とも同じくらい知識があったから何を言っても通じた。

村田 印象的だった試合とか覚えてます?

香川 ニ十歳っていうと85年だから、ハグラーvsハーンズだ。

福田 緊張とかで覚えてないくらい興奮してて。

香川 あんなにハーンズがへろへろになるなんて、思いもしなかった。

―なるほど、学生としてはどんなことを考えて暮らしていましたか?

香川 僕は村田さんみたいに一つの道を突き進むという感じではなく、まだ俳優になりたいとも思っていなくて、何になりたいとも思っていなかった。高校生の頃に三島由紀夫の遺作『豊饒の海』四部作を読んでから、四作とも主人公がニ十歳で死ぬんだけど、「俺はニ十歳で死が迎えに来ない、俺は凡庸だ」とずっともがき苦しんでいました。

福田 僕もニ十歳の頃は全然ダメで、学校が終わると飲みに行っての繰り返しでした。カメラマンやりたくて日芸(日本大学芸術学部)の写真学科を受けたけど落ちて、写真やりたいという思いもありながら別の大学に通ってボクシングを遊びとして見てたって時期です。

香川 もう後楽園ホールに住んでたね、ほとんど。

福田 そう、だから遊んでてだらしなかったけど、一番吸収できた頃だと思います。

 

現在はそれぞれの業界でスターとして活躍されるお三方が、ニ十歳の頃はまだ吸収の時代でそれぞれの課題と向き合いもがいていたという意外な共通点の見つかる、短いながらも濃密なインタビューでした。

『福田直樹写真展 嘱目』の開催期間は8月12日(日)まで。『パンチを予見する男』の切り取った瞬間の芸術をぜひ会場でご覧ください。

福田さんの写真によるモザイク・フォトはキャラクターデザイン学科とのコラボレーション作品

WBC(世界ボクシング評議会)の"フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー"にも選ばれた福田さんの作品が並ぶ

キャラクターデザイン学科の学生が描いた村田選手のイラストとともに記念撮影

 

『福田直樹写真展 嘱目』についてはこちら

  • 辻本 智哉Tomoya Tsujimoto

    京都造形芸術大学 文芸表現学科2016年度入学。京都生まれ京都育ち、友達はだいたい暗いやつ。造形大の学生短歌会「上終歌会(かみはてかかい)」の現部長。初対面の人によく「一句詠んで」と言われたじたじしています。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都造形芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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