7月3日(火)、在京都フランス総領事館「アンスティチュ・フランセ関西-京都 稲畑ホール」にて、京都造形芸術大学 美術工芸学科教授で現代美術作家のヤノベケンジ先生と、和紙作家の堀木エリ子氏が共作した作品群を展示する「SHIP'S CAT」展の記者発表会が行われました。
この展覧会は、日仏友好160周年を記念し開催される日本政府主催の”ジャポニスム2018”参加企画事業であり、パリ友情盟約締結60周年の記念の年にあたる京都市の後援により開催されるもので、展示会場は、フランス・パリ市の「カルーゼル・デュ・ルーヴル」。多くの方にご注目いただき、記者発表会に足をお運びいただきました。
パリで行われる「SHIP'S CAT」展では、先述のヤノベ教授と堀木氏共作の巨大障子絵巻「Picture scroll of SHIP'S CAT」や、約3mの巨大彫刻「SHIP'S CAT Totem」をはじめとする、共作4作品、両名の代表作5作品の計9点が展示されます。両名共作の作品や、ヤノベ教授の作品には、京都造形芸術大学の学内工房ウルトラファクトリーに集った多数の学生が制作に参加。展示作品の完成に向けて、大きな原動力となりました。京都造形芸術大学で誕生した「SHIP'S CAT」のフランス・パリへの旅が始まります!
◎「SHIP'S CAT」展の詳細(京都造形芸術大学 公式ホームページ・イベント情報)
https://www.kyoto-art.ac.jp/events/1863
- 「記者発表会」でのコメント
◎ 京都造形芸術大学 美術工芸学科 ヤノベケンジ教授
今回の「SHIP'S CAT」展をパリのルーヴルで開催できることに対し関係者のみなさまに感謝をしております。
さまざまな偶然が重なり、この度の制作や展示が行われるように感じます。「船で旅をする猫」をコンセプトに制作した作品が、実際に船で旅をしながら現在パリ・ルーヴルへ向かっています。ルーヴル美術館ではエジプトにまつわる作品が多数コレクションされていたり、作品のモチーフとなる「猫」はエジプトが発祥であったり。堀木先生の作品の和紙も、古代エジプトの紙の「パピルス」ともつながりもあります。また今回の制作には、学内工房ウルトラファクトリーに集う学生が多数参加し、若い感性も含まれています。混迷する現代社会において人生という「旅」を続ける人々を守ってほしいという願いが込められた「SHIP’S CAT」とのつながりも感じます。このように様々な運命の糸がつながっていくことに感動を覚えました。
また、制作に携わった学生には、日ごろより師弟関係をつくるように、厳しく指導をしていますが、堀木先生の工房に学生とともに伺った際も丁寧なご指導をいただき、学生もひとまわり成長することができました。本学が力をいれる実践型教育「産学公連携プロジェクト」としても、非常にクリエイティブな環境を学生に提供することができたと思います。また、京都の地からこのプロジェクトを発信できたという喜びもあります。この「SHIP'S CAT」プロジェクトを、多くの方に知ってもらいたいと思います。
◎和紙作家 堀木エリ子氏
今回、学生のみなさんと共に制作をおこなうことで、若い世代の方に「和紙」という世界に触れていただく機会となったことに感謝をしております。
建築に向けて和紙造形をつくる仕事に携わり、7月で31年を迎えました。私は大きく分けて2つの方向性の和紙制作の仕事をしています。1つ目は「伝統的な手法をつかい、伝統的な技を未来につないでいくという仕事」。2つ目は、私の持つ京都の工房で「革新的な技術をつかい、新しい技術をみつけ、その技術革新を50年後・100年後の伝統へ育て上げるという仕事」です。その2つが揃わなければ、日本のモノづくりや伝統は未来へつながらないのではないかと考えています。また、「和紙」の固定概念を払拭し、「燃えない」「汚れない」などの機能を持たせるための二次加工にも取り組んでいます。和紙作家と呼ばれることも多いですが、私自身は、職人・技術開発者の役割を担っていると考えています。
今回のヤノベ先生のプロジェクトには、「和紙をどのように作品に具現化していくのか」という職人の立場で携わりました。普段は抽象的な造形を行うことが多く、「猫」という具体的な作品に取り組む点では、大きなチャレンジとなりました。
制作にあたる際は、「和紙をつくる」のではなく「和紙のこちら側の空気感をどのようにつくるのか」、あるいは「和紙の向こう側の気配をどのようにつくるのか」ということに重きをおきます。和紙というモノではなく「和紙という環境」を作り出していきたいと考えています。今回、パリにヤノベ先生とのコラボレーション作品を展示することで、パリのみなさんに、日本独自の情緒や情感など、空気感や気配を感じ取っていただけたら嬉しいなと思います。作品をパリに展示することでどのような影響を与えるのか、あるいは、私たち自身がどのように影響されて、今後の新たな表現につなげることができるのかという点を、私自身とても楽しみにしています。日本の伝統産業やモノづくりの世界に励みになるような展示会になるよう、頑張りたいと考えています。
-展示作品イメージ画像
◎ヤノベケンジ教授・堀木エリ子氏共作
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◎ヤノベケンジ教授作品
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◎堀木エリ子氏作品


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