生きるということ、戦うということ −建築家・安藤忠雄講演会 「可能性は自分でつくれ」 が開催

SPECIAL TOPIC2018.01.12

建築

生きるということ、戦うということ −建築家・安藤忠雄講演会 「可能性は自分でつくれ」 が開催

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  • 山月智浩

 2017年11月7日火曜日、京都造形芸術大学春秋座にて、建築家安藤忠雄さんの講演会「可能性は自分でつくれ」が行われた。

 市民が開かれた場で広く著名なアーティストや作家について造詣を深められるように、と本学大学院学術研究センター主催の公開講座の一つとして開催されたこの講演会。会場である春秋座入り口前には、開場前から長蛇の列ができる盛況ぶりとなった。また、講演前には、東京での回顧展でのみ限定販売されている図録の特別販売や、図録購入者への安藤さん直筆サイン会なども行われ、訪れた建築ファンにとってはこの上ない至福のひとときとなった。

一人ひとりの名前を書き記していく安藤さん
用意していた限定図録250冊は完売となった

 「可能性は自分でつくれ」と題された今回の講演会は、15歳より独学で建築の世界を渡り歩いてきた安藤さんからの「表現者として生きていくということへの覚悟」の問いかけに満ちたものとなった。先にも述べた通り、安藤さんは独学で世界の建築家へと上り詰めた。中学二年の頃に工事現場で見た大工仕事の「必死さ」が、建築を志すそのきっかけとなったという。「人生何がきっかけになるかわからない。常にアンテナを張り、好奇心を保ち続けなければならない」と安藤さん。命を燃やし日々を生きるその大工の姿は、今も安藤さんの活力の原点となっている。またその上で、無気力に生きる同世代にも言及し、表現者として生きていく上で若いうちから知的体力を養い、好奇心旺盛に生き続けることの大切さを語ってくれた。

仕事は戦い

 個人住宅などの小規模建築から、公共建築、美術館建築といった大規模建築まで、数々の名建築を世に送り出してきた安藤さん。その現場にはいつも安藤さんの理念が満ち溢れていた。「仕事は戦い」。これまでの作品を紹介する中で、安藤さんは自身の仕事ぶりについて、そう形容した。「光の教会」や「住吉の長屋」「六甲の集合住宅」など、そんな誰もが知る有名建築の裏側には、いくつもの戦いがあったという。「相手との対話の中で、常に粘り、先手を仕掛けることを意識し続けることが大事」その相手は、時に依頼主、時にメディア、時に困難な施工現場と仕事のたびに姿を変える。しかし、そんな時いつも「格闘家安藤」の姿勢はぶれることなく、その目はしっかりと自分の表現を見据えていた。「表現者たるもの、自分の建築、デザイン、絵画、自分の家族、生活、人生を作っていかなければならない」
 強い意志に満ちたその仕事ぶりを、ジョークを交えながら話す安藤さん。しかし、その力強さは、これから表現者として芸術の道を歩んでいく学生にとって、心強い金言となったのではないだろうか。

相手の感性を勉強する

 また安藤さんは、人と人との巡り合わせについても語ってくれた。デザイナーの田中一光さんや倉俣史郎さん、演出家の蜷川幸雄さんなど、錚々たる面々と交流のあった安藤さん。「どんな人間とどう関わるかによって人生の質はいかようにもなる」と話す。また、業種の違う人との関わり合いの中で大切なのは「相手の感性を勉強する」ことであるとも安藤さん。自分の専門の分野ではなかったとしても、相手の生き方、哲学、表現する姿勢、リスペクトできる点を見つけ出し自分の中に取り込もうとすることで、自然と惹かれ合うものなのかもしれない。大学という場で、仲間と共に切磋琢磨し合える環境にある学生たちには、どこか胸に響く部分があったのではないだろうか。


 講演会タイトルの通り、これまで数多の可能性を自らの手でつかんできた安藤さん。その背景には、自分を信じ続けることができた安藤さんの才能があった。「自分の誇りだけがエネルギー」安藤さんは最後にそう力強く言い残し、会場を後にする。自分の「生」の追求、本当の意味での生きるということの難しさ、豊かさ。そんな安藤さんの生き様を、息遣いを確かに感じることのできる講演会だったように思う。
安藤さんと同じ時代を生きていること、生きてゆけること、そして彼の生の言葉を全身で感じられたことを、誇りに思う。

ギャルリ・オーブにて行われていた大学院修士1年生の作品展を岸和郎教授、浅田彰教授とともにご覧になる安藤さん

  • 山月智浩 Tomohiro Yamatsuki

    1998年大阪府生まれ。京都造形芸術大学 空間演出デザイン学科2017年度入学。いろんな世界に飛び込んでみたいとの思いから瓜生通信編集部に参加。企画の立て方や編集を学んでいる。
    スイートポテトをおいしく焼き上げることに定評がある。

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