SPECIAL TOPIC2017.07.25

京都ファッションアート映像デザイン教育

のん、京都造形芸術大学「1日芸大生」になる。

edited by
  • 片山 達貴

 2017年7月14日(金)、京都造形芸術大学を女優で「創作あーちすと」の肩書きも持つのんさんが、京都造形芸術大学の『1日芸大生』として瓜生山キャンパスを訪れました。
 NHK連続テレビ小説の主演や、アニメーション映画「この世界の片隅で」の声優など、演技というジャンルでめざましい活躍をされるのんさんですが、実はその表現のフィールドはドラマや映画だけにとどまらず、「創作あーちすと」として脚本やイラストレーション、ファッションデザインも手がけるなど多方面に渡っています。今年公開されたLINEモバイルのコマーシャルで「キリンジ」の名曲「エイリアンズ」をアカペラで歌うのんさんの姿も記憶に新しいのでは。
 今回の「1日芸大生」は、そんなアートやデザインに関心を持つのんさんに、芸術大学での学びを存分に体験してもらおうという趣旨で企画されたもの。
 京都造形芸術大学に到着したのんさんは、まずは芸大生のユニフォームとも言えるツナギに着替えて、京都造形芸術大学の学生なら誰もが利用できる学内の共通工房「ウルトラファクトリー」を訪れました。
 ウルトラファクトリーのディレクター、ヤノベケンジ先生(美術工芸学科教授)からの「ここは人間が想像しうるものであればなんでも創造可能な夢の工房なんです」という説明に衝撃をうけるのんさん。

ウルトラファクトリーではこれまで「サンチャイルド」や「ジャイアント・トらやん」をはじめとした巨大なヤノベ作品が生み出されてきた
ファクトリー内には溶接や旋盤などさまざまな工作機械が並ぶ

 ウルトラファクトリーを案内された後は、学生たちとともにヤノベ教授の大型彫刻作品〈SHIP'S CAT〉の制作に取り掛かりました。ヤノベ先生から直々に「〈SHIP'S CAT〉にハート(魂)を込める」という大役に指名され、若干緊張気味ののんさんでしたが、初めてながらも危なげない手つきで金属板を切り抜き、鋲で〈SHIP'S CAT〉の胸にすいすいと打ち込んでいきました。ヤノベ先生から「初めてにしてはとても上手です」と太鼓判をもらってとてもうれしそう。

 

現代美術家であるヤノベ先生から直接制作技法をレクチャー
金属板の切り抜き作業。はじめてにもかかわらずヤノベ先生からは太鼓判が

自ら切り抜いた金属のハートマークを〈SHIP'S CAT〉の胸元に取り付けるのんさん
〈SHIP'S CAT〉の胸元に輝くのんさんのハートマーク
ヤノベ先生、学生たちと〈SHIP'S CAT〉の前で記念写真

 その後、同じくウルトラファクトリー内にある「3Dスキャナ」で自分の顔をスキャン。「フリーフォーム」という手ごたえを感じることのできる入力デバイスを使って最新の彫刻表現を体験。デジタル機器が実現する新しい表現の可能性に驚きの連続のようでした。

最新の3Dスキャナで自身の顔をスキャンしてデータ化

 

「本物の顔よりかっこいいかも?!」と驚くのんさん

 ウルトラファクトリーを後にしたのんさんは、ともに〈シップス・キャット〉の制作に取り組んだ学生たちと学生食堂で昼食を食べ、瓜生山の山頂にある「千秋堂」へ。ここでは見増勇介先生と岡田将充先生(ともに情報デザイン学科専任講師)の授業を、20名の情報デザイン学科生とともに「1日芸大生」として受講することになります。

学生たちと同年代ののんさん。自然と会話も弾む

 

のんさんが選んだのは学生にも人気の「唐マヨ丼」

 今回見増先生、岡田先生が考えた授業は「見えない森のカタチを捕まえる」というもの。千秋堂の周囲に広がる豊かな森を五感で感じ、ロゴマークへと昇華させていく試みです。
 情報デザイン学科の学生3名とチームを組んだのんさん。年齢が近い女の子たちということあり、すぐに仲良くなったようすで、まるで長年の友だちのように笑顔で話をしていました
 森に出てからは、木々や土、落ち葉や虫、風、光、あらゆるものを観察。千秋堂にたくさんの「気づき」を持ち帰った後は、その「気づき」をグラフィックスに展開していく作業に取り組みました。普段からクリエイティブに慣れ親しんでいるのんさんだけに、作業中の集中力はたいへんなもの。没頭している表情は真剣そのものでした。

先生の話を熱心に聞き入る
森のフィールドワークでは、発見や気づきを写真で記録する
「キノコがハートマークに見える!」とのんさん
初対面でもすぐに打ち解けて一緒にアイデアを生み出していく
見増先生からのアドバイスをもとに、アイデアを形にしていく

 授業の最後に見増先生から授業の感想を尋ねられたのんさんからは「グラフィックデザインは初めてだったのでとても難しいけど、おもしろい。京都造形芸術大学に入って学んでみたい!」との言葉が。
 丸1日、芸大での学びを体験したのんさんは、伊藤直樹先生(情報デザイン学科教授)とともに特別講師として300名を超える学生たちの前に登壇。これまでの仕事や自身のクリエイティブにかける思い、制作現場での裏話などを語りました。自分たちとは遠い芸能の世界に身を置きながら、自分たちと同じように真剣にクリエイティブに取り組むのんさんの姿に、学生たちは強い共感をいだいたようでした。特別講義の最後には、渡辺広之先生(情報デザイン学科教授・学科長)から、尾池和夫学長の署名が入った「京都造形芸術大学『1日芸大』修了証」を手渡されました。

1日の最後は特別講師として登壇

「京都造形芸術大学『1日芸大』修了証」を受け取るのんさん

 「京都造形芸術大学『1日芸大生』」として京都造形芸術大学の学びの一端を体験したのんさんに、1日の感想をお聞きしました。

のん:今回私が受けた授業のテーマは「見えない森のカタチを捕まえる」というもの。木々のざわめきや雨が降った後の水の痕跡など、普段注目しないものに気を配りながら森の中を散策しました。情報デザイン学科の学生さん3人とチームを組ませていただいたのですが、芸大生の発想に驚きの連続! 私は、絵を描くときはもちろん、創作では一人で作品と向き合うことが多いんです。だけど今回の授業では、周囲からの刺激を受けて、普段の自分とはまるでちがうアイデアが生まれてくる実感がありました。それがとても楽しかったです。 

「心に残る授業でした」と語るのんさん

 学生食堂でごはんも食べたんですよ。唐マヨ丼! おいしかったなあ。食堂ではかくれんぼをしている子どもたちの姿も印象的でした。無邪気に遊ぶ姿がとても可愛かったです。たしか、「こども芸術大学」という子どもたちとお母さんが通う芸術大学があるんですよね。一緒にごはんを食べた3年生の子たちに教えてもらって「そういうことか!」と納得しました。子どもが日常的にキャンパスにいる大学ってすごく素敵ですね。京都造形芸術大学は、「こども芸術大学」をはじめ他にない試みがたくさんあって、おもしろい大学だなあと思いました。
 京都造形芸術大学をモチーフに絵を描くなら……悩みますが、ウルトラファクトリーを描きたいです。機材がずらっと並んだ光景がカッコ良くて、ワクワクしました。それに作業をしている皆さんがとても力強い。ぜひ描いてみたいと思いました。きっとパワフルな絵になると思います! 私がウルトラファクトリーでものづくりに取り組むなら、歩かなくても進んでくれる「移動式道路」を作りたいですね。まずは自宅から仕事場までの移動式道路をつくって、自動で進めるようにしたいです!

1日の感想を書で表現する

 集大成として、その日1日の感想を習字でしたためてもらいました。のんさんが選んだ文字は、「刺激」。アートやデザインの可能性を切り開くべく日々取り組む京都造形芸術大学にとって、これ以上の褒め言葉はないかもしれません。

 

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  • 片山 達貴Tatsuki Katayama

    1991年徳島県生まれ。京都造形芸術大学 美術工芸学科2014年度入学。写真を学ぶ。カメを飼ってる。

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