REPORT2017.05.15

京都文芸

たまにはみんなで小説を読もう ―「Storyville」Vol.46『第七官界彷徨』

edited by
  • 藤田 祥平

4月30日(日)、京都岡崎ロームシアターにて、46回目となる「Storyville」読書会が開催された。仕掛け人は、京都造形芸術大学 文芸表現学科卒の鵜飼慶樹さん。卒業後に蔦谷書店のコンシェルジュとなった彼は、かつて学科主催で行われていた同名のイベントを引き継ぎ、今回の開催に結びつけた。

読書会の課題図書は、尾崎翠の『第七官界彷徨』。1931年に発表された作品で、いまなおその新鮮な感覚を呼び覚ましてくれる少女小説だ。書き出しはこんなふうに始まる。

よほど遠い過去のこと、秋から冬にかけての短い期間を、私は、変な家庭の一員としてすごした。
そしてそのあいだに私はひとつの恋をしたようである。

田舎から都会に出て来た主人公の町子が、ふたりの兄とひとりの従兄弟が暮らす家の炊事係として日々を暮らす。ひそかに「人間の第七官に訴えかけるような詩」を書きたいと考えている町子は、一癖も二癖もある男たちの世話をしながら、ひとつの淡い恋心を抱く。町子が発見するというよりも、彼女が感じる世界こそが「第七官界」なのではないかと思わせるような一人称の筆致が、いまなお人の心に響く作品だ。

「物語村へようこそ」――鵜飼さんのこの一言で読書会がスタート。この台詞は、同読書会をはじめた新元良一さん(元文芸表現学科教員)の決まり文句だった。会が進むにつれ、参加者からさまざまな意見が出た。「ふつうの物語の盛り上げ方を一切していない」、「“第七官”に響く詩が書けなかったことへのケリが、この小説なのかもしれない」、「恋がはじまってしまうとこの世界が終わってしまうから、小説の最後に恋がはじまるのかも」……。一時間半のあいだにさまざまな「読み方」が共有され、自分ひとりでは気がつかない視点や解釈に驚かされた。

次回開催は未定だが、「月に一度のペースで開催していきたい」とのこと。次回の課題図書は、コーマック・マッカーシーの『すべての美しい馬』。次回もまた、京都のどこかで「物語村」が開かれる。

【公式Twitter】https://twitter.com/storyvillekyoto
【ウェブサイト】
http://real.tsite.jp/kyoto-okazaki/event-news/2017/04/storyville-vol46.html

「Storyville」の仕掛け人、京都造形芸術大学 文芸表現学科卒の鵜飼慶樹さん

 

  • 藤田 祥平Shohei Fujita

    1991年大阪府生まれ。京都造形芸術大学文芸表現学科卒。http://shoheifujita.smvi.co/

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