相撲は神意の占いにはじまり、のちに芸能化していく――では、江戸時代において娯楽化した相撲とは、いったいどのようなものだったのか? 4月24日(月)、伝統芸能と相撲の関わりを探るシリーズ講座である「日本芸能史」の第4回「相撲と芸能」が、京都造形芸術大学の学内劇場、「京都芸術劇場 春秋座」にて開催された。壇上から冒頭の問いを投げかけた田口章子教授(創造学習センター)は、冒頭の自らの問いにこんな答えを差し出す。「江戸時代の相撲取りは、一種のアイドルでした。いまで言う、AKB48のようなものだったのです。そして、江戸時代のもうひとつのアイドルといえば、誰でしょう? そう、歌舞伎役者ですね」
はるか昔のことのように感じる江戸時代でも、もちろんお金は大事なことだった。歌舞伎の興行主たちは客入りを増やすために、さまざまな策を講じた。その策のひとつとして編み出されたのが、力士を主人公に据えた演目を、人気の歌舞伎役者に演じさせるというもの。現代でいえば、アイドルが映画に出で、魅力的な役どころをこなすようなものだろう。
講義のメインテーマとなった『双蝶々曲輪日記』は、実在の力士をモチーフにした人物が登場する歌舞伎の演目だ。関取(当時の最高位)である濡髪長五郎と、素人相撲でめっぽう強いと評判の放駒長吉が、勧進相撲で対戦する。なんと、そこで素人の放駒が関取に勝ってしまう。
放駒はたいへん喜ぶが、後になってこの一番が「八百長」であったことが明らかになる。この二人にはそれぞれパトロンがいる。彼らはとある遊女を奪い合っているのだが、関取はパトロンの望みをかなえてやるために、わざと負けて相手に勝ちを譲ったのだ。そんな裏があったとは想像もしていなかった放駒は、関取に向かって怒りを露わにする。どうにか宥めようとした関取も、放駒のあまりの聞き分けのなさにつられて怒りだす。ふたりの役者が向かい合い、渾身の怒りの見得をするところは圧巻ながら、事情を知る観客にとっては笑いどころだ。
相撲と歌舞伎を組み合わせたこの演目は、むしろ現代だからこそ新しく感じられるエンターテイメントだろう。長く続く相撲の歴史をさまざまな角度から見つめ、楽しむ「相撲と芸能」。6月19日(月)には、昨年幕内全勝優勝を果たした豪栄道関が講演する予定。
2017年度 公開連続講座 日本芸能史 開学40周年記念
2017年度テーマ「相撲と芸能」「神仏と芸能・芸道」
芸能・芸道は、超越存在、広義の神霊と人とが、一体となって、新しく生命を更新する場である。多様な生命更新の方法の一つに超越存在の意志を問う占いがある。超越存在の種類と変化につれて、占いの方法は多様となったが、人、動物などの勝負による占いは世界各地にみることができる。相撲は、その勝負占いに起源がある。
相撲に代表される日本の芸能・芸道が対象とする超越存在は、日本人が信仰する神と仏である。日本の神仏は、広義の大地の神々である。固有の神道はもとより、外来の仏教も日本人に浸透してくるにつれて大地の神々の性格を強めた。前期講座の相撲を通して、後期講座の神と仏の芸能・芸道の特質もあざやかに浮かびあがってくる。
[企画・コーディネーター 京都造形芸術大学 教授 田口章子]
日程 | 前期(全14回)4月10日(月)~7月17日(月) 後期(全14回)9月25日(月)~2018年1月22日(月) 毎回:月曜日 16:30~17:50 |
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受講料 | 各期 1万5千円 |
会場 | 京都芸術劇場春秋座(京都造形芸術大学内) 10月2日の回のみ学内他会場で行います |
受講資格 | 学習意欲のある方なら、どなたでも受講いただけます。 |
お問い合わせ・資料請求先 | 京都造形芸術大学 京都藝術学舎 〒606-8271京都市左京区北白川瓜生山2-116人間館中2階 TEL.075-791-9124 FAX.075-791-9021 受付:月~土曜日/午前10時~午後4時 休日:日曜日・祝日・入学試験実施日・年末・年始 |
申込方法 | まずは京都藝術学舎へお電話、または窓口にて受講予約をお願いします。受講料の納入は「窓口」、「郵便振替」がご利用いただけます。「郵便振替」をご利用の方は、郵便局に備付の郵便振替用紙にて、下記振込先に、受講料をお振込みください。(手数料は各自ご負担頂きます)
【口座番号】01060-8-60610 |
受講に際してのお願い
一旦納入いただいた受講料は返還いたしかねますので、予めご了承ください。台風や交通機関の不備等によりやむを得ず休講になった場合、補講ができない場合があります。またその際の休講分の受講料は返還いたしかねますので、予めご了承ください。天候による休講や、講師の変更が生じる際は、春秋座ホームページまたは、京都藝術学舎ホームページのニュース欄でお知らせいたします。
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藤田 祥平Shohei Fujita
1991年大阪府生まれ。京都造形芸術大学文芸表現学科卒。http://shoheifujita.smvi.co/