REPORT2016.08.01

デザイン

盲導犬をデザインでサポートする -プロダクトデザインプロジェクト

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  • 瓜生通信編集部

7月29日(金)は、京都造形芸術大学 プロダクトデザイン学科の2、3年生たちが授業の中で取り組んだ、盲導犬のハーネスデザインのプレゼンテーションが、同大学の学内ギャラリー「ギャルリ・オーブ」で行われた。

「プロダクトデザインプロジェクトII 」と呼ばれるこの授業は、「デザインの目的を明確にし、その目的を具現化するためにアイデアを展開、検証するプロセスを学ぶ」ことに主眼を置いたもので、公益財団法人関西盲導犬協会の協力により、学生がチャレンジする実践的な取り組みだ。

授業に参加した学生は、訓練施設を訪問し、盲導犬について学び、実際に盲導犬との歩行も体験。目の不自由なユーザーや盲導犬指導員とのコミュニケーションの中から、盲導犬とユーザー、そして周囲との間で発生する問題を抽出し、2度の試作と、盲導犬協会での検証により、ハーネスを中心とした製品のデザイン・制作を行ってきた。

そして今回は、同協会の古橋博昭所長他2名の指導員を迎えてのプレゼンテーション。盲導犬のPRを担当するラブラドールレトリーバーのヘーゼルが、モデルとしてハーネスを着用した。

最初のグループは、盲導犬が勝手に写真を撮られたり、触られるなどでユーザーよりも盲導犬に意識が集中することで起こる問題を解消するため、ハーネスのデザインに丸みを持たせてやわらかくし、また、毛色に合わせて首元の革の色を選べるものにし、ユーザーと盲導犬の印象にバランスがとれるように提案。

続いてのグループは、盲導犬が「働かされている」というイメージを持たれてしまうため、バッグを犬自らが背負ってハイキングに出かけているような印象を与える、バッグ一体型のハーネスをデザインした。素材はナイロン素材で、全体的に体に沿うスムーズな形状とし、救助犬のようなアクティブさを狙ったデザインだ。

最後のグループは、盲導犬のタクシー乗車拒否の多さを解消するために、犬の毛や臭いが座席につかないようにするマナーコートを新しくデザイン。これまでのマナーコートはカラフルなものが多かったが、「エスコート」をテーマに、洗練されたフォーマルスーツのようなデザインを提案し、素材の軽量化も図った。また、そのマナーコートに合わせて装着できるハーネスもデザインし、トータルコーディネートを提案した。

試作品も学生自身で
バックパックを背負って軽快なイメージ

 

プレゼンテーションの後、関西盲導犬協会の担当者が、実際にハーネスを装着したヘーゼルと歩行し、実用性や機能性、耐久性を検証。現場視点の評価を受けた。

京都造形芸術大学 大野木 啓人副学長は、今回の取り組みについて「これまでの概念を脱却したデザインを提案できる、本学らしいプロジェクトである」とコメント。古橋所長は、「これまで協会の中でもハンドルを中心にさまざまなデザインが提案されてきたが、今回のハーネス全体での提案によって、新しいハーネスの在り方に気づくことができた」と感想を述べた。

学生は「たいへんなテーマであったが、この授業を受けることができて本当によかった」と振り返ったほか、担当教員のプロダクトデザイン学科 大江 孝明 専任講師は「これからも社会と繋がり、実践的で学生が大きく成長できる授業を作っていきたい」と意気込みを語った。

 

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  • 瓜生通信編集部URYUTSUSHIN Editorial Team

    京都造形芸術大学 広報誌『瓜生通信』編集部。学生編集部員24名、京都造形芸術大学教職員からなる。

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