INTERVIEW2024.07.08

教育

KUA認定ベンチャー第1号、誕生! — 美大生特化型スキルマッチングサービス『Portable』

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  • 上村 裕香

梅雨の晴れ間に青空が広がる6月25日(火)、本学望天館にて、『KUA認定ベンチャー』の認定証が授与されました。

KUA認定ベンチャー制度は、KUA認定審査会で事業内容及び認定基準を満たすと判断した企業を『KUA認定ベンチャー』として認め、協議のうえ、必要な支援を大学が行う制度です。
『KUA認定ベンチャー』になると、学内での正式な活動を行ったり、広報協力を受けたりすることができます。


今回は、認定証授与の様子や、学内での起業支援についてレポートします。また、KUA認定ベンチャー第1号である株式会社 Portableの代表取締役社長 CEO 小林真大さん(情報デザイン学科 クロステックデザインコース3年生)に、お話を伺いました。

認定証と激励を受け取る

6月25日(火)のKUA認定ベンチャーの認定証授与では、吉川左紀子学長から認定証が授与され、小林さんに激励の言葉が贈られました。

小林さんが「学生でチームを構成しているので、社会人の方と繋がってお仕事をするのが難しい」と悩みを吐露すると、吉川学長からは「自分のことを信頼してくださる企業の方に、知り合いを紹介していただくのもひとつの方法だと思います。初めて出会った方と一から関係を築いていくには、時間が必要ですから」とアドバイスが。

吉川学長は「これから、いろいろと失敗して落ち込むこともあると思うけれど、失敗のほうが情報量が多いんですよ。成功から新しいことを学ぶのは難しいけど、失敗すると『なにがダメだったんだろう』と考えて、『じゃあ次はこうしてみよう、こう変えてみよう』と次のステップが出てくる。だから、失敗したとしてもチームの中で嫌な空気を作らないというのは重要なことだと思います」と、組織を運営し育てていく上での心構えについてもエールを送りました。

起業をする前に

小林さんが株式会社 Portableを設立したのは2023年4月。そのきっかけになったのが、2022年4月より本学で行われている起業家教育プログラム「アート・アントレプレナーシップ」だといいます。
「アート・アントレプレナーシップ」は、起業や個人事業主、フリーランス(副業)などに関心のある学生を対象に、起業に向けた実践的な教育を行うプログラムです。

小林さんは、「これは課外のプログラムで、ぼくが参加した2022年のプログラムには、本学のクロステックデザインコースの学生を中心に、学科や大学の垣根を飛び越えて、様々な学生が参加していました。起業家育成のレクチャーを受けたり、学生側がプレゼンを行ったり。チームにひとり、起業についてアドバイスをくださるメンターがついて、起業内容について何度も相談させてもらったこともありました。実際にサービス提供をはじめる前に、プログラムで関わってくださった方のご紹介で実証実験のようなことができたのも大きかったです」と、起業する前の活動を振り返ります。

サービスを開始する前に担当したのは、ペットボトルのラベルをデザインする案件。クライアントである企業の方と、デザインを学ぶ学生をつないで、企画提案を行ったそうです。
そうした経験から、提案の仕方や、社会人の方との交渉の方法、デザインの作業において修正回数を明記しておくことなど、様々な気づきがあったといいます。

若いクリエイターのためのサービスを

小林さんの設立した株式会社 Portableでは、在学中の美大生・芸大生であるワーカーを、様々な企業とマッチングするプラットフォーム『Portable』を運営しています。
『Portable』は、「若い人材のアイデアを聞きたい」「産学連携のプロジェクトを行いたい」という企業と、「デザイナーやクリエイターとして、企業と仕事してみたい」「ポートフォリオに掲載できる実績を積みたい」という学生を繋ぐためのクラウドソーシングサービスです。

小林さんは、起業した理由について次のように話します。
「ぼくは幼いころからアニメやゲームといったコンテンツが好きで、クリエイターへのリスペクトが強かったんです。大学生になって、イラストやデザインを学んでいる学生に出会ってすごく影響を受けました。そうした中で、『クリエイター業界の歪さ』について考えるようになったんです。たとえば、就職先が少なかったり、SNSで有名にならないと依頼がなかなかこなかったり。そうした環境を変えるのが、自分の役目なんじゃないかと考えて、会社を設立することにしました」

これまでに60〜70社の企業から依頼があり、全国の美大・芸大から320人以上の学生がワーカーとして『Portable』に登録しています。

企業から寄せられる依頼はイラストレーションやデザインだけでなく、撮影、Webサイトの制作・デザイン、ハンドメイドの制作など多岐に渡ります。
学生が『Portable』内に自分のスキルを掲示し、企業側が掲示されているスキルを見て依頼を行うことも。キャラクターデザインや資料作成など多岐に渡って依頼が届き、学生は自分のスキルを活用することができます。

起業後の支援体制

「KUA認定ベンチャー」として認定されると、こうした起業後の活動について、大学から支援を受けることができます。

キャリア支援課の菅野智之さんは、「大学では自らキャリアを選択できる『サバイバル能力』を養成するキャリア教育の一環として『KUAアートインキュベーターズ』という枠組みの中で、正課授業の『ビジネス企画入門』やコミュニティイベント、起業支援など多面的な支援を行っています。しかし、そうした取り組みは、必ずしも起業をゴールにしたものではなく、起業家的なマインドや能力を手に入れることで、就職やフリーランスなど、学生が多様なキャリア選択ができるようになることを目標にしています」とこうした取り組みについて説明します。

『KUAアートインキュベーターズ』のイベントとして、7月6日(土)には起業・就職・副業・フリーランスなど、これからの多様なキャリアを大学の垣根を越えて考えるリアルイベント「SAINOME(さいのめ)」を開催しました。
今後も、様々な取り組みを行う予定です。起業や多様なキャリア形成に感心がある学生のみなさんは、ぜひご参加ください。

【『KUAアートインキュベーターズ』のサイトはこちら】
https://kua-art-incubators.com/

クリエイターの環境を整える

KUA認定ベンチャーの認定期限は3年間。小林さんは認定証を受け取りながら、「『KUA認定ベンチャー』として、いい報告ができるようにがんばります」と吉川学長に力強く宣言していました。
小林さんに今後の目標を尋ねてみると、「3年後には『Portable』に登録する学生数が1万人になっているようにがんばりたいですね。『Portable』のようなサービスが浸透すれば、クリエイター業界も変わっていくんじゃないかなと思っています。若いクリエイターが社会に出る環境を整備できるようにしたいですね」と、思いを語りました。

『Portable』は芸大生や美大生にとって、得しかないと自負する小林さん。学生が依頼に応えるだけでなく、これまでに学んできたことやスキルを掲示して依頼を待つこともできるため、「芸大生・美大生のできることやスキルを知りたい」と思っている企業の方にも自分のスキルを発信することができます。
産学連携プロジェクトやフリーランスでの仕事に興味をもっている学生のみなさん、一度サイトをのぞいてみては。

【『Portable』のサイトはこちら】
https://www.portable.biz/

 

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  • 上村 裕香Yuuka Kamimura

    2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。

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